子ども虐待に気づくためのソーシャルワークハンドブック
〜精神保健福祉士の強みを活かす〜

編集:公益社団法人日本精神保健福祉士協会 「子ども虐待対応マニュアル」検討プロジェクトチーム
発行:公益社団法人日本精神保健福祉士協会
2020年9月30日発行


本ハンドブックは社会福祉法人丸紅基金の助成を受けて作成しました(2019年度社会福祉助成事業

はじめに つまずきが虐待にならないために

 この冊子は、いわゆる虐待対応マニュアルではありません。私たち精神保健福祉士に、目の前の現象が虐待か虐待でないかを「判断すること」は求められていません。

 目の前の気になることが、子どもたちや家族にどんな影響を与えるのか。私たちが気がつかなかったことで、子どもたちがつらい思いや怖い思いをしていないだろうか。家族が抱える不安を見逃していないだろうか。お母さんを、お父さんをギリギリまで頑張らせたり、追い込んだりしていないだろうか。そんなことを、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。

 この冊子は、目の前の子どもが、親御さんが、家庭が、私たちに送るサインが何を意味するのかを知り、必要な声かけができるようになるための手引書です。子どもの虐待は特別な環境、特別な要素によって引き起こされることではありません。精神疾患があるから、メンタルヘルスの課題があるから子育てに課題が生じるわけではありません。生活をしていくうえでの様々なつまずきが、生きづらさや子育てのしづらさを引き起こすのです。その個々の課題を共有し解決に向けて力を注ごうとする人に伴走することがソーシャルワークだと思うのです。

 子どもの虐待は、私たちが目の前にいる対象者に適切に関わることができなかった結果、生じる現象です。サインを受け取り苦悩や生きづらさを理解し、当事者の望む生活が実現するように一緒に課題を解決する。普段の私たちの仕事に少しだけ家族全体を支援しよう、子どもや家庭にどんな影響があるだろうかと考えること、問題を先送りしないように、いまできることは何だろうという思いやまなざしを加えることで、子どもや家族を巡る問題は変化するはずです。

 まずは普段のソーシャルワークに「子育て支援」「家族全体を見る視点」を意識的に添えてみてください。どこまでも、私たち精神保健福祉士は子ども子育て応援団で居続けましょう。


一括ダウンロード用データ(A5判・50頁/PDF/3.04MB)


■もくじ

はじめに つまずきが虐待にならないために
1 家族の仕組みを考えてみよう〜どこからでも、誰からでも、キャッチするために、そしてリスクを減らすためにできること〜
2 SOSをアセスメントする
(1)虐待に気づくための視点
   コラム1 行き場のない子どもたち
(2)子どもからのSOSをキャッチする
   コラム2 経済的虐待という視点
(3)主に身体治療を担う医療機関の立場から
   コラム3 特定妊婦
3 養育者の権利と子どもの権利
   コラム4 ヤングケアラー
4 虐待相談への対応と介入
   コラム5 マルトリートメント
   コラム6 発達障害と虐待
5 家族を支える関係機関・ネットワーク
   コラム7 要保護児童対策地域協議会(要対協)
あとがき この冊子を手に取ったみなさまへ


■編集:「子ども虐待対応マニュアル」検討プロジェクトチーム

リーダー/加藤 雅江(担当理事/杏林大学)
天野 庸子(さいたま市教育委員会)
大 靖史(日本医科大学付属病院)
岡本 秀行(川口市保健所)
西隈 亜紀(NPO法人東京フレンズ)
三品 竜浩(東北福祉大学)
森田久美子(立正大学)
山本 由紀(国際医療福祉大学)
吉田 真由美(福岡市立児童心理治療施設)
四ツ谷 創史(青森県七戸児童相談所)


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