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<2004/11/22>

厚生労働省に「精神保健福祉法」改正に関する要望書を提出

 平成17年に定時改正が行われる「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下「法」という。)に関して、本日(11月22日)、厚生労働省(矢島精神保健福祉課長宛)に次の要望書を提出しました。

 今般の法改正は「定時」であるとともに、当該法を含めた「障害保健福祉関連法改正」という大きな流れの中にあります。

 厚生労働省が社会保障審議会障害者部会(10月15日)で提示した「今後の障害保健福祉策について(改革のグランドデザイン案)」では、改革の具体策のひとつとして、身体・知的・精神障害の福祉サービスに係る共通部分を総合化する「障害福祉サービス法(仮称)」を次期通常国会に提出するとしています。

 一方、精神障害固有の問題については、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(精神保健福祉対策本部、9月2日)に基づき、「入院医療中心から地域生活中心へ」の改革を進めるため、精神保健福祉対策本部中間報告(2003年5月)に基づく3検討会の最終まとめを踏まえ、1)国民の理解の深化、2)精神医療の改革、3)地域生活支援の強化を今後10年間で進めるとし、当該法改正をはじめとする施策群の実施につなげるとしています。

 さらに、三位一体改革による財源問題等を背景に、障害保健福祉施策と介護保険制度との関係についても別途検討が進められています。

 こうした政策動向を見据えながら、本協会としての要望内容をご確認いただくとともに、今後の法改正作業を是非とも注視ください。


JAPSW発第04−54号
2004年11月22日

厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
 精神保健福祉課長 矢 島 鉄 也 様

社団法人日本精神保健福祉士協会
 会 長 高 橋   一

「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」改正に関する要望について

 平素より、精神保健福祉行政の推進にご尽力を賜り、心から感謝申しあげます。
 さて、宇都宮病院事件から20年が経ち、精神障害者の社会復帰と人権擁護を主眼とした精神保健法が制定されて後、障害者基本法に精神障害者が福祉サービスの対象として規定されて、更に精神保健法が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下「精神保健福祉法」という。)に改正され、その後も、数次にわたる改正が図られています。
 しかし、精神科病院における不祥事が未だにあり、精神科病院への在院患者数はほとんど変わらず、社会的入院および長期入院患者の状況も同様にあります。また、精神障害者が地域で暮らすための支援体制の整備は遅々として進んでいません。
 社会情勢も急激なIT化や経済状況の慢性的不況、少子高齢化と好転の兆しが見えない中で、精神障害者は社会参加や自立への困難が未だ大きい状況に置かれています。
 一方、前回の精神保健福祉法改正により、市町村等における「精神障害者居宅生活支援事業」による身近な地域での施策展開の芽が出始めております。
 この間、貴省におかれましては、厚生労働大臣を本部長とする精神保健福祉対策本部の「精神保健福祉の改革に向けた今後の対策の方向」(中間報告)を受けて設置された3検討会のまとめや「精神保健医療福祉の改革ビジョン」、また「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」を公表提案されておりますが、そうした現状改革への取り組みに今、精神障害者、関係者をはじめ、国民の関心が高まっております。
 つきましては、今般の精神保健福祉法の改正作業において、精神障害者が地域でごく普通に暮らすことができますように、下記の事項について要望いたします。

1.法全体における問題点と改正案

 精神障害者に関する法律のみ、保健及び医療と福祉にまたがる形になっていることは、精神障害者が1993年まで法的に福祉の対象に規定されずにいたことや、疾病と障害を併せ持ち、相互に影響しあう特性から法体系が構成されたことと無縁ではないと考えられる。しかし、現状においては、精神障害者が疾病治療をしながらも福祉サービスの利用により地域で暮らすことが可能であるにもかかわらず、疾病特性から保護や医療の提供の割合が大きくなりすぎ、自立を損なう可能性も高い。保健・医療・福祉領域が健全な連携を果たしながら精神障害者の主体的な生活支援をしていくためには、法律を保健・医療と、福祉に関するものとに切り離すべき時期を迎えていると考える。このための作業に今般の改正から取り組みを要望する。またその際には、保健・医療の部分に関して精神障害者の特別対応を考えず、一般医療への統合を目指す形とした取り組みを果たしていただきたいこと。

2.個別条項に関する問題点と要望

1)精神障害者の定義に関して関連法との整合性を図ること。また、疾病規定ではなく、障害という観点からの規定にしなおすこと。(第5条関係)

2)地方自治体レベルでの市民への精神障害に関する理解の普及に関し、施策化を義務付けること。(第2条、第46条関係)

3)精神障害者に対する福祉サービスの実施主体としての市町村の責務を明記し、その相談窓口に精神保健福祉士の配置を義務付けること。(第2条関係)

4)精神保健福祉センター及び保健所に精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)を専従で配置することを義務付けること。(第48条関係)

5)医療保護入院制度を廃止すること。あわせて、精神保健福祉圏域毎に精神医療の救急体制を早急に整備すること。(第33条関係)

6)措置入院制度に関して運用の地域格差をなくすために運用制度に関する規定を全国で統一していくこと。(第29条関係)

7)措置入院期間および隔離状況が一年以上の長期に及ぶ場合は書面審査のみでなく、現地調査を行い状態の確認をするよう規定すること。(第38条の2関係)

8)「医療又は保護に欠くことのできない限度」による制限以外に、家族・友人・関係者が病棟に入ることを制限しないようにすること。(第36条関係)

9)医療機関の情報公開に関する規定を設けること。

10)精神医療審査会を独立した第三者機関とし、同委員の医療委員の比率を他委員と同等とし、新たに当事者及び精神保健福祉士を加えること。(第13条関係)

11)地方自治体毎に精神神障害者の人権擁護機関を設けること。

12)地方精神保健福祉審議会の委員に当事者および精神保健福祉士を加えること。(第10条関係)

13)「社会復帰施設」という名称を“未だ社会復帰の途上にある”というニュアンスから脱却できるように検討すること。(第4条関係)

14)今後ますます重要となる地域生活支援を考えるとき、その拠点となりうる地域生活支援センターを中心とした「社会復帰施設」において、当該法律に規定された援助業務等を遂行するために必要な人的体制を確保すること。(第50条の2関係)

3.その他関連要望事項

1)精神障害を理由とするあらゆる欠格条項を廃止すること。

2)精神障害者が差別や権利侵害を受けている状況が未だ多いことを考えるとき、地域でごく当たり前に暮らすことができるように、基礎的な法体系整備も不可欠だが、あわせて民法の成年後見制度や社会福祉法による地域福祉権利擁護事業、また個別の福祉サービスや生活支援事業を利用しやすくする手立てを講じること。

3)地域生活支援の推進のために、契約時代に移行している福祉サービスの利用が可能となるような所得保障制度の見直しを図ること。


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