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<2006/02/06>

障害者自立支援法施行における居住支援施設の設置場所等に関する要望書を提出

 昨年12月5日に開催された社会保障審議会障害者部会(第29回)では、障害者自立支援法施行における居住支援施設(グループホーム、ケアホーム等)の設置場所等に関して、委員から提出された資料(PDF/340KB)等により協議がなされましたが、本協会では、当該提出資料及び協議内容を踏まえて、2月9日に開催される第30回部会に先立ち、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長及び社会保障審議会障害者部会(部会長及び委員)に対し、2月2日付にて下記の要望書を提出しました。

【参考】
 ・第29回次第及び資料
 ・第29回議事録


JAPSW発第05−147号
2006年2月2日

1)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部長 中谷比呂樹 様
2)社会保障審議会 障害者部会(部会長・委員)

社団法人日本精神保健福祉士協会
会 長   橋   一

障害者自立支援法施行における居住支援施設について(要望)

 平素より障害保健福祉施策の推進にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 さて、今般の障害者自立支援法により、精神障害者が地域生活を送ることに関するこれまでの資源整備の立ち遅れを取り戻し、さらに社会的入院者にとっての受け皿整備にもつながるように体制整備の確かな実施が必要となります。
 つきましては、当該体制整備において重要となる居住支援施設に関して、下記の通り要望いたしますので、充分なる議論とご高配を賜りますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.新設の居住支援施設(グループホーム、ケアホーム等)は、病院の敷地外設置を推進してください。

[理由1]精神障害者の地域生活支援施策の現状に関しては、街の中に居住支援施設を設置するに際したコンフリクトが強く、設置計画が困難となった事例も少なくありません。そのため、現状では生活訓練施設をはじめとする居住支援施設が病院の敷地内に有する資源(病棟転換利用や職員寮等の利用)の活用により整備されてきた旨の認識を持っております。その際の居住支援施設設置の根拠については、精神保健福祉法における精神障害者社会復帰施設(以下「社会復帰施設」という。)の位置付けでもありました。
 しかし、今般の障害者自立支援法においては、グループホームやケアホーム、福祉ホームは居住支援資源として新事業体系等に位置付けられることになっています。社会復帰施設でなく居住支援資源であるとすれば、医療を提供する病院の敷地内に設置されるものではなく、人的・物的交流が自然に行われる街の中に設置されるべきものと考えます。

[理由2]精神疾患は誰もが罹りうる疾患です。また、精神障害者であっても、自己決定に基づく適切なサポートを受けながら街で暮らすことが可能であり、ノーマライゼーションの理念に則した生活といえます。
 そのことについて国民の理解と認識、協力を得るためにも、精神障害者の居住支援施設に関しては、病院の敷地外設置を推進することが求められます。
 一方、精神障害者に対する偏見差別が根強いことを理由に、居住支援施設を街中に設置することが困難として、病院の敷地内への設置も認めるべきとの意見があります。
 しかしながら、病院の敷地内に新たに居住支援施設を設置すれば、街中への施設設置や整備の“不要論”につながりかねず、精神障害への偏見差別を助長することに結びつくことが懸念されます。また、地域から長く隔離され収容処遇を受けてきた精神障害者が、街に出て行くこと、もしくは街に馴染む暮らしを図るための支援を妨げるものです。現状病院の敷地内に設置されている居住支援施設に暮らす精神障害者からは退院の実感や地域生活の実感を持ちにくいという声も聞かれます。

 なお、上記内容を基本的原則として要望いたしますが、地域への居住支援施設の整備が極めて困難なために、病院の敷地内にある資源の有効活用等による居住支援施設設置を足がかりとして整備を進めることが現実的に必要不可欠な場合においては、明確な地域生活への移行計画を伴ったうえで認可することも考慮すべきです。
 また、病院の敷地内にある居住支援資源に住まう精神障害者の日中活動の場は、敷地外資源を利用するなど、地域生活を実感できるバランスのある資源利用をサービス利用計画の中に組み込むべきと考えます。


2.居住支援施設の規模は、居住の場にふさわしい少人数の規模にしてください。

[理 由]今般示されたグループホームの基準では、1か所あたりの最少基準人数は2人であり、事業者単位では4人以上の利用者が確保されれば良いとされるサテライト方式が認められたことは評価に値します。
 介護保険制度における居宅系施設サービスでは、早期から在宅生活との整合性を持たせるべく、多床室による集団的なケアから個室化やユニット化が促進されています。精神障害者のケアにおいても、集団的・画一的ケアの弊害がいわれる中、居住支援施設は生活の場に移行する過程の位置付けとして整備されることを考えるとき、地域における生活の場の形態としては、小規模であることが望ましいと考えます。
 また、最大人数については検討中とのことですが、現在の社会復帰施設における生活訓練施設等の定員20人については、5年間の新事業体系移行期間中に段階的に小規模化していくことは可能と考えられ、新規のサービス事業体系規模としての設定は小規模としていただくように要望するものです。


3.精神障害者の居住支援に関して、関係省庁の連携による総合的施策の具体化を推進してください。

[理 由]障害者自立支援法は国の障害者施策の柱となる実定法として、障害者の地域における自立生活を推進するために成立したものと認識しています。昨年末には公営住宅法施行令が改正され、精神障害者も単身入居が可能となり、全国の自治体に対して厚生労働省と国土交通省の連名による通知がなされました。
 また、国の「障害者を施設から地域へ」という施策推進における課題のひとつである住宅確保の問題に関して、一部マスコミの報道では、国土交通省において単身入居が可能な障害者の範囲を見直すことにより、民間住宅における障害者の入居促進を図る考えがあるとの情報がありました。入居にはサポート体制が不可欠であり、今年10月に施行される市町村での地域支援事業のひとつである居住サポート事業と連携した展開が望めるものと期待しております。
 さらに、市町村が居住支援資源の整備に関する具体化を障害福祉計画策定等で積極的に取り組むこととともに、国及び都道府県による指導や支援が併せて必要と考えます。
 こうした政策方向の更なる促進のために、関係省庁がより一層連携し、精神障害者への偏見差別の解消にむけた具体的施策が総合的に展開されることが必要です。

以上


社会保障審議会障害者部会
(平成17年12月5日現在)

(敬称略、五十音順)

 嵐谷 安雄  (福)日本身体障害者団体連合会理事
 安藤 豊喜  (財)全日本聾唖連盟理事長
 伊藤 勇一  全国身体障害者施設協議会会長
 猪俣 好正  (社)全国自治体病院協議会精神科特別部会部会長
 江上 義盛  (財)全国精神障害者家族会連合会専務理事
 大濱   眞  全国脊髄損傷者連合会副理事長
 岡田 喜篤  川崎医療福祉大学学長
 岡谷 恵子  (社)日本看護協会専務理事
 亀井 利克  名張市長
 北岡 賢剛  滋賀県社会福祉事業団企画事業部長
 君塚   葵  全国肢体不自由児施設運営協議会会長
◎京極 高宣  国立社会保障・人口問題研究所所長
 小板 孫次  (財)日本知的障害者福祉協会会長
 古畑 英雄  かながわ福祉サービス運営適正化委員会事務局次長
 小林 秀資  (財)長寿科学振興財団理事長
 笹川 吉彦  (福)日本盲人会連合会長
 新保 祐元  (福)全国精神障害者社会復帰施設協会理事長
 末安 民生  (社)日本精神科看護技術協会第1副会長
 高橋 清久  国立精神・神経センター名誉総長
 高橋 紘士  立教大学コミュニティ福祉学部教授
 武田 牧子  (福)桑友理事長
 丹下 一男  (NPO)障害者雇用部会顧問
 堂本 暁子  千葉県知事
 長尾 卓夫  (社)日本精神科病院協会副会長
 野中   博  (社)日本医師会常任理事
 広田 和子  精神医療サバイバー
 福島   智  東京大学先端科学技術研究センター助教授
 星野 泰啓  全国社会就労センター協議会会長
 町野   朔  上智大学法学部教授
 松友   了  (福)全日本手をつなぐ育成会常務理事

◎:部会長


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