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<2006/06/14>

参院厚労委、医療制度法案を採決!〜21項目の附帯決議を賛成多数で可決

 医療制度改革関連法案を審議していた参議院厚生労働委員会では、今日13日の法案審議終了後、野党の更なる審議を求める声を聞き入れることなく、採決を行い与党多数により可決した。

 質疑終局については、民主党をはじめとする野党は、法案審議が道半ばであり「現時点での採決は横暴」とする反対討論を行った。

 また、同委員会では法案審議を通じて明らかになった疑義を中心とする附帯決議を賛成多数で可決した。附帯決議は、安易な公的医療保険の範囲の縮小を行わず将来にわたる国民皆保険制度を維持することや、後期高齢者医療制度の創設や療養病床再編に際する充分な配慮、また高額医療・高額介護合算制度と障害者自立支援法のサービスに係る利用料負担とを早期に検討すること等、21項目から成る。(附帯決議全項目は下記参照

 今日で3回目となる朝日の質疑では、新たに創設される後期高齢者医療制度の実質的“保険者”である広域連合について詰問。保険者機能を充分に発揮するためには明確に保険者として位置付けることが必要と指摘すとともに、そもそも地方自治体の主体性が求められる広域連合を国が設置義務とすることは「悪用」と断じた。対する政府は、広域連合による後期高齢者医療制度の運営が自治事務であることを明らかにするとともに、保険者機能については文書で明確にしていくと答弁した。

 また療養病床再編について、法案附則の検討規定とされている今後の介護施設の見直しの方向性、時期と検討の場を明らかにするよう求めたが、政府は「今後の検討課題」と逃げつつも介護施設の一本化については「そこまで具体的には考えていない」と答えた。(Asahi21 ≪F&M-Letter≫2006/06/13)


健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための
医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成十八年六月十三日
参議院厚生労働委員会

 政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。

一、新たな保険外併用療養費制度においては、医療における安全性・有効性が十分確保されるよう対処するとともに、保険給付外の範囲が無制限に拡大されないよう適切な配慮をすること。

二、後期高齢者医療制度については、後期高齢者医療広域連合の設立をはじめ、その創設の準備が円滑に進められるよう、都道府県、市町村、広域連合、医療保険者等に対する必要な支援に努めること。また、後期高齢者支援金を負担する保険者等の意見が広域連合の運営に反映されるよう、保険者協議会の活用等について指導を行うとともに、意見を聞く場の設定について検討を進めること。

三、後期高齢者医療の新たな診療報酬体系については、必要かつ適切な医療の確保を前提とし、その上でその心身の特性等にふさわしい診療報酬とするため、基本的な考え方を平成十八年度中を目途に取りまとめ、国民的な議論に供した上で策定すること。

四、高齢者の負担については、高齢者に対する高額療養費の自己負担限度額の設定、療養病床に入院する高齢者の食費及び居住費の負担の設定、後期高齢者医療制度の保険料の基準の策定に当たって、その負担が過度とならないよう留意し、低所得者への十分な配慮を行うこと。特に、被用者保険の被扶養者に対する新たな保険料負担については、特段の軽減措置を講ずること。

五、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金等については、その負担の歯止めとなるよう、保険料率の内訳の明示、著しく負担が高くなる保険者への配慮措置などを含めた方策を検討すること。あわせて、現行制度と比較して急激な負担増とならないよう、激変緩和のための適切な措置を講ずること。

六、高額療養費制度の自己負担限度額の在り方について、家計に与える影響、医療費の動向、医療保険財政の推移等を踏まえ、検討を加えるとともに、その適用の利便に資するため、政府管掌健康保険は把握している情報の速やかな通知に努め、国民健康保険においても通知が行われるよう保険者の努力を促すこと。また、後期高齢者医療制度において、広域連合による被保険者への通知が十分行われるよう配慮すること。さらに、高額医療・高額介護合算制度と、障害者自立支援法のサービスに係る利用者負担とを調整する仕組みについて、今後早期に検討すること。

七、レセプトのオンライン化については目標年次までの完全実施を確実なものとするよう努めるとともに、これと併せて個別の医療内容・単価の分かる領収証の発行の普及に努めること。

八、今後の保健事業の推進に当たっては、生活習慣病の予防健診や住民の健康増進のための事業を充実するよう、地域医療を担う関係者の協力を得つつ、医療保険者や市町村の健診・保健指導の実施体制の確保に一層努めるとともに、入手した個人データについては、委託先を含め個人情報保護法の観点から万全な管理体制を確立すること。さらに、地域・職域における健康づくりを体系的・総合的に行うために、生活習慣病予防に向けた国民運動を積極的に展開するとともに、生活習慣病予防対策の実施状況を踏まえ、必要に応じ健康増進法の見直しについて検討すること。また、被扶養者の健診の普及を図るため、その利用者負担も含め機会の確保に十分に配慮すること。

九、生活習慣病予防を強力に推進するために、市町村に加え、保険者又はその委託先等に、地域医療を担う関係者の協力を得つつ、保健指導の担い手である保健師又は管理栄養士等を適正に配置するよう努め、計画的に実行できる体制を整備し、その効果の検証を行うこと。

十、療養病床の再編成に当たっては、すべての転換を希望する介護療養病床及び医療療養病床が老人保健施設等に確実に転換し得るために、老人保健施設の構造設備基準や経過的な療養病床の類型の人員配置基準につき、適切な対応を図るとともに、今後の推移も踏まえ、介護保険事業支援計画も含め各般にわたる必要な転換支援策を講ずること。また、その進捗状況を適切に把握し、利用者や関係者の不安に応え、特別養護老人ホーム、老人保健施設等必要な介護施設及び訪問看護等地域ケア体制の計画的な整備を支援する観点から、地域ケアを整備する指針を策定し、都道府県との連携を図りつつ、療養病床の円滑な転換を含めた地域におけるサービスの整備や退院時の相談・支援の充実などに努めること。さらに、療養病床の患者の医療区分については、速やかな調査・検証を行い、その結果に基づき必要に応じて適切な見直しを行うこと。

十一、産科、小児科を始めとする特定の診療科及びへき地医療における医師不足問題に対応するため、地域の実情を考慮した医療機能の効果的な集約化・重点化の促進と拠点病院への搬送体制の整備、大学医学部の入学定員の地元枠の設定、地域の病院に医師を紹介する体制の見直し等について、地域医療の関係者が参画する都道府県の医療対策協議会における検討を踏まえ、必要な措置が講ぜられるよう支援を行うこと。

十二、小児救急医療については、小児救急医療拠点病院への支援等による二十四時間対応が可能な体制の確保、小児救急電話相談事業等保護者が深夜等でも相談ができるような施策の充実、患者の容態に応じた適切な受診についての啓発に努めること。

十三、安心して出産できる体制の整備を進めるため、地域における産科医療の拠点化・システム化を図るとともに、助産師の一層の活用を図ること。また、母と子の安全のため、助産所の連携医療機関が確実に確保されるよう努めること。

十四、小児医療・産科医療両者の連携・協力の下に、地域における周産期医療体制の整備を図るとともに、NICU(新生児集中治療室)の確保と、その長期入院患者の後方支援施設も含めた支援体制の構築に努めること。

十五、医療の高度化、チーム医療の推進、安心・安全の医療の確保など、医療をめぐる状況の変化や国民のニーズを踏まえ、質の高い医療従事者を育成するために、教育や研修の在り方について必要な検討を行うこと。また、医療従事者によるチーム医療の推進を図り、関係府省の連携の下、総合的な医療従事者確保対策について検討すること。特に、医療の現場において看護師の果たす重要な役割にかんがみ、大学教育の拡大など教育期間の延長を含めた看護基礎教育の在り方について検討するとともに、医療・介護提供体制の見直しに伴い必要となる看護職員を確保するために、離職防止対策やナースセンター事業の推進を始めとした看護職員確保対策を講ずること。

十六、入院時の治療計画等に関する書面の交付及び説明に当たっては、患者又はその家族に十分な理解と同意が得られるよう配慮すべきことを医療関係者に対し周知すること。

十七、医療計画制度の見直しに当たっては、数値目標の設定や、達成のための措置の結果、地域格差が生じたり、患者・住民が不利益を被ることがないよう配慮すること。また、医療連携体制の構築に当たっては、地域の医療提供者の意見を十分尊重するとともに、地域医療連携については、地域連携クリティカルパスの普及等を通じた連携体制の確立を図るため、診療報酬上の評価等によりその支援に努めること。さらに、在宅医療を推進するため、診療報酬上の在宅医療の対象範囲の見直しを検討すること。

十八、社会医療法人については、地域の医療連携体制の一員として、地域住民の信頼の下、適正な運営が図られるよう指導すること。

十九、医療事故対策については、事故の背景等について人員配置や組織・機構などの観点から調査分析を進めるとともに、医師法第二十一条に基づく届出制度の取扱いを含め、第三者機関による調査、紛争解決の仕組み等について必要な検討を行うこと。

二十、臨床修練制度における対象資格の拡大に当たっては、低賃金・劣悪な労働条件の下での労働につながることがないよう、改正の目的等の周知に努めること。

二十一、国民生活の安心を保障するため、将来にわたり国民皆保険制度を堅持し、平成十四年の健康保険法等の一部を改正する法律附則第二条第一項に明記された、「医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持するものとする。」ことを始めとして、安易に公的医療保険の範囲の縮小を行わず、現行の公的医療保険の範囲の堅持に努めること。また、今後の医療制度改革に当たっては、個々の制度見直しのみならず、社会保障全体の在り方に深く留意し、国民の視点に立った給付と負担の関係を明らかにすること。

右決議する。


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