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<2006/07/31>

日本精神保健福祉士養成校協会平成18年度総会、公開シンポジウムと同時開催
テーマ:精神保健福祉士の資格と専門性―社会福祉制度転換の時代にあたって、そのあり方を考える―

 
【シンポジウムの様子】

 日本精神保健福祉士養成校協会(以下「精養協」という。)総会ならびに公開シンポジウムが、さる7月24日(土)、大正大学(東京都豊島区)にて開催された。本協会から、竹中会長が総会の来賓挨拶を述べ、大塚常務理事がシンポジストとして参加した。

 
総会で挨拶する竹中会長

 公開シンポジウムでは、教員・研究者が多数集まり、社会福祉分野における資格制度のあり方や求められる専門性等について、約2時間をかけた議論が行われた。
 ここでは、公開シンポジウムの内容について報告するものとする。
 はじめに、精養協副会長(会長代行)であり本協会理事も務める石川到覚氏より挨拶があり、続いて精養協常務理事の田中英樹氏による進行のもと、4名のシンポジストから、下記の順にて発言が行われた。

 牧野忠康氏((社)日本社会福祉教育学校連盟 副会長/日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科教授)
 東條光雅氏((社)日本社会福祉士養成校協会 事務局長/駒沢大学 文学部)
 大塚淳子 ((社)日本精神保健福祉士協会 常務理事)
 黒木識敬氏(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課)

 
シンポジストの発言を耳を傾けるフロアの様子

 トップバッターである牧野氏から、「大学教育を地力とした、底力と創造力の高い精神保健福祉士の養成ついて」をテーマに発言があった。まず、社会福祉士国家試験の合格率向上を図るための教育を優先せざるを得ない現状を認めつつも、それが養成教育の本質ではないとし、社会福祉教育の今後のあり方について発言があった。その内容として、現在の4年制の大学教育では専門職としての質を担保するには期間が短すぎることから、今後は軸足を大学院教育に移行するなども含め6年制教育が必要ではないか、さらに専門知識だけでなく総合的な教育が必要ではないか等について指摘された。

 
シンポジストとして発言
する大塚常務

 次に東條氏からは、社会福祉士制度改革に関わる(社)日本社会福祉士養成校協会(以下「社養協」という。)の活動の経過と概要について報告がなされた。社養協と中村厚生労働省社会・援護局長との意見交換の中で、「介護福祉士制度の見直しと共に、(社会福祉士制度の)見直しを行っていくのであれば抜本的な改革でなければならない」と指摘を受けたことを紹介した。その点をふまえ、厚労省に対して「今後の社会福祉士養成教育のあり方に関する提案」を提出したこと、今後はその提案にあるシラバスやカリキュラム案を煮詰めていく予定であると説明された。また、社会福祉士と精神保健福祉士とは兄弟のような資格であるという性格を踏まえた上で、資格のあり方の議論を進めていく必要があること、今後、社養協としては社会福祉の専門家が、実際にどのように活躍し、どう職域が拡大されていくのかについて関心があり、また心配なところでもあると述べた。

 続いて大塚氏から、構成員の概況を踏まえつつ、精神保健福祉士の資格と専門性に関する課題と展望について発言があった。内容は、協会構成員データから見る精神保健福祉士の職域が、医療機関から種々の生活支援施設や行政機関などへ拡大していることを述べるとともに若い年齢層が増えていることも示した。また、近年の精神保健・医療・福祉課題と動向から、今後、精神保健福祉士が専門性を発揮し活躍できる場が拡がるだろうとしつつ、社会的入院の解消などに向けて、まだまだ資格化が求められた時代背景としての課題も多く残っていると述べた。実際に現場で働き資質を高めていくことで本質的な専門職となっていくのではないか、国家資格取得イコール専門職となるというのは違うと考えると述べた。まとめとして、協会としては専門性を向上していくためにも、今後それに見合った研修制度体系を提供できればと考えている。精神障害者の生活支援を行うためにも、教育機関、行政(文部科学省、厚生労働省)、現場が三者一体となり社会変化に対応可能な精神保健福祉士の養成・配置促進を政策化していき積極的関与をしていくことが望ましいと述べた。

 最後に黒木氏は、さまざまな法改正や施策化が進む中で、精神保健福祉分野を取り巻く状況は転換期にあり、精神保健福祉士が活躍する範囲を拡大するひとつの機会であると発言された。厚生労働省では、自殺対策基本法の成立などメンタルヘルスの分野において、今後精神保健福祉士が重要な役割を担うと考えていること、精神保健福祉士は、名称の通り精神保健、精神福祉にまたがる幅広い領域をもつとして、より高い資質が求められていると述べた。このことから養成校協会には、その人材教育を十分に行ってほしいと述べた。

 フロアとのディスカッションでは専門職をめざす学生に対する就職先確保の難しさ、さらに資格取得者の待遇について不安の声があがった。しかし、職域拡大するにあたってどういう学生を送りだせるのか、資質の向上は言葉では簡単だが実際は難しく、どのように専門性を上げていくのか、精神保健福祉士について十分に議論してほしいという声もあがった。
 また厚生労働省に向けて、市町村への精神保健相談員の配置や、診療報酬への精神保健福祉士の位置づけなどについて、より積極的な方針を示してほしいという要望も挙がったが、それに対しては専門職集団や養成に携わる方たちからの当事者としての声が足りないのではないか、もっとその必要性に関してもっと声を挙げていくべきというやり取りも見られた。また6年制教育という方向を考えていくときには、ゼネラリストとスペシフィストとの違いなどについてもっと議論を重ねるべきではないかという意見も出た。

 介護保険制度改正に伴う介護福祉士法改正案が次期通常国会に提出予定となっているが、同一法である、社会福祉士法に関しても、介護保険法改正や障害者自立支援法施行に伴い、また一部、大学の将来展望も関連して、見直し改正案作成に向けた動きが着々と進んでいる。本協会でも、様々な法改正や状況変化を睨み、今年度から「精神保健福祉士の資格制度のあり方に関する検討委員会」を立ち上げて、先の動向を睨みつつ影響を受ける部分の分析や、精神保健福祉士という資格制度の将来展望や研修等のあり方について鋭意検討を進めているところである。今後も厚生労働省や日本精神保健福祉士養成校協会、日本社会福祉教育学校連盟等との連携のもと取り組んでいく方針である。


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