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<2008/10/20>

第11回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました

 10月17日(金)15時より、全国都市会館 大ホール(東京都千代田区)において、標記検討会が開催されました。 

 本日の検討会では、前々回の検討会で示された、「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性」の中から、「相談支援について」のテーマが取り上げられました。事務局より、障害者自立支援法における相談支援についての議論を中心に、との前提が示され、「地域における相談支援体制」「ケアマネジメントの在り方」「自立支援協議会」の3つの観点から施策の充実に関する議論がなされました。


1)地域における相談支援体制

 最初に、地域における相談支援体制について、サービスにつながっていない方をサービスにつなげるための特に重要な事業であるということを再認識すべきという意見が出されました。その考え方を前提に、地域にあるニーズを発見するためにも、相談支援事業を受身な「待ちの姿勢」のものだけではなくて、アウトリーチや訪問の機能も含めた大きな枠組みで捉えてほしいという意見が多くの構成員から出されました。また、サービス利用計画費の制度を活用しきれていない現状があり、窓口からの道筋をしっかり作る必要があるのではないか、との指摘がなされました。

 具体的な体制については、3障害の総合相談支援センターをまず市町村等に一ヵ所設け、専門的な相談についてはそれぞれに体制を設けてはどうかという提案がなされました。この意見に対しては、重複障害者への支援を充実させる意味でも、ぜひ3障害の窓口を一本化したいという賛成の意見が出される一方、窓口が一本化されることは望ましいが、人材の確保が可能なのか、またアクセスの面で厳しい地域もあるため、必要な数を確保するためにも財政的裏付けが必要であるとの意見が出されました。また、人材や窓口数の確保への意見として、診療所や病院、保健所と連携することで、窓口を広く多く構えることが可能になるのではないかとの意見が出されました。また、そうした仕組みを実現させるためには、地域活動支援センターが相談支援事業を担っている現在のような体制では限界があり、それぞれの役割を明確に分け、独立した相談支援拠点を設けるべきであるとの声が多く挙がりました。拠点の在り方として、介護保険制度の地域包括支援センターを活用し、併設することの可能性も示されましたが、それに対しては、障害者自立支援法における人員配置等の体制を明確にした上での慎重な取り組みが必要なのでは、との意見も出されました。加えて、体制を整える上で、各自治体の裁量も大きいことから、自治体によって差がでることを懸念し、ある一定の枠を設ける方がよいのではないかとの指摘もなされました。

 また、報酬や評価については、ニーズを掘り起こした分、人を増やしていけるような制度を設けることの必要性や、利用者からの満足度評価や事業者からの評価制度を取り入れるべき、との意見が出されました。また、一般相談とケアマネジメント、各々に報酬が出るような仕組みづくりを、との声も挙がりました。冒頭で挙げられたように、アウトリーチや訪問機能の有効性を鑑み、そのような支援にも報酬を得られるような制度設計をお願いしたい、との要望も出されました。


2)ケアマネジメントの在り方

 ケアマネジメントの在り方については、「人材の確保と質の担保」と「報酬体系の在り方」「介護保険制度のケアマネジメントとの比較」の3点について主に意見が出されました。

 まず、「人材の確保と質の担保」については、現在の研修体系では時間数も少なく質を保つことが困難であり、より実践的で必要な時間をかけた研修が必要だとの意見や、安易に養成するだけではなく、資格要件を整え、医療や福祉をきちんと理解している人材を確保する必要があるとの意見が出されました。

 また、「報酬体系の在り方」については、中立性、公平性を保てるケアマネジメントを行うためにも、ケアマネジメントを専門に行うこととで事業者として経営が成立するような報酬体系の仕組みをつくってほしい、との意見が出されました。また、今あるサービスにつなげることだけに報酬をつけるのではなく、訪問や寄り添い等、現在認められていない部分も報酬として認めるような仕組みがほしいとの意見や、必要なサービスは個別給付化してほしいとの意見が出されました。

 次に「介護保険制度のケアマネジメントとの比較」については、介護保険制度の中のケアマネージャーは今あるサービスと利用者を結びつけることに専念している傾向があるが、本来のケアマネジメントは、法外のサービスや資源の利用を含めて利用者の生活を支え、サービスが不足している場合には必要なサービスを作っていくというところまで考えた広いものであるとの指摘がなされ、そのような制度設計をぜひお願いしたいとの意見が出されました。また、現行はサービス支給決定後に行われているサービス利用計画作成の仕組みに関して、支給決定前からケアマネジメントを行うことにより、市町村のサービス支給決定の仕組みとの整合性が懸念されていることに関しては、サービス支給決定の仕組みはケアマネジメントを構成する一部分であり、ケアマネジメントを広い意味で捉えるべきとの声が挙がりました。


3) 自立支援協議会

 上記2点の議論の中で、自立支援協議会の在り方については、その役割が十分認識されていないとの指摘とともに、事例検討やグループスーパービジョン、ケアマネジメントの振り返りを行うなど、重要な役割を果たすものであるとの発言がなされました。


<全体を通して>

 事業全体に関わる話として、制度を推進していく上では国民全体を巻き込んだ議論が重要であり、その点、介護保険制度ができた際の機運の盛り上がりを参考にすべきだとの意見や、マスコミの取り上げ方がいかに重要かといった指摘がなされました。

 当事者の構成員からは、本当の豊かな生活とは何か、相談支援とは何かということを今一度考えてほしい、との声が挙がりました。また、家族会の構成員からは、障害の種別を考える前に、まず話を聞いてくれる体制を作ってほしいとの意見や、精神障害者には障害者相談員制度がなく、当事者性が全くないということが指摘され、ピアカウンセリング等を制度に組み入れてほしいとの要望も出されました。これらの意見に対して、相談する人、される人、ということを規定しすぎることなく、皆が支えあう社会を作ろうという視点が大切であり、精神障害者のみならず地域全体のための制度である、という広い視野を持つことが重要であるとの指摘がなされました。

 また、介護保険制度からも分かるように、制度が浸透するまでには、10年、20年といった長い時間が必要となることから、やっと軌道に乗ってきたときに財源が切られるような事態にならないよう、期間や目標値を明確にし、戦略をしっかり立てて制度設計をしていく必要があるとの意見も出されました。

 次回の検討会では、今回同様、論点整理に基づいた検討を行うこととなっています。第12回検討会は10月29日(水)に予定されています。

傍聴記録:事務局 今井悠子

※今回の配布資料については、WAMNET(http://www.wam.go.jp/index.html)で公開され次第、リンクを貼ります。


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