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<2009/06/05>

第18回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会が開催されました 

 6月4日(木)、厚生労働省省議室にて、第18回今後の精神保健医療福祉の在り方に関する検討会が開催されました。
今回の議題は、(1)精神科デイ・ケア等、(2)気分障害、(3)依存症、(4)児童・思春期の精神医療の4件あり、前半に(1)、後半に(2)〜(4)と議題を分けて協議が行われました。

1.精神科デイ・ケア等について

 まず、事務局より資料に基づき、精神科デイ・ケア等の制度概要、デイ・ケア利用者の実態等に関する全国調査や海外情報、デイ・ケア等に関する先駆的事例等、障害者自立支援法による障害福祉サービスの利用との比較等の説明がなされました。

 そのうえで、利用者が症状に応じた支援が受けられるよう、機能を強化・分化したデイ・ケア等を整備すること、限られた医療資源をより重症な患者に重点的に活用する観点や、デイ・ケアと障害福祉サービスの重複利用者は後者に移行すること、地域生活の観点からのデイ・ケアの長期、頻回、長時間の利用の是正について等、課題と検討にあげられた内容について協議されました。

 構成員からは、

○デイ・ケアが始まったころは、再入院防止、居場所づくりの必要性があったが、障害福祉サービスの充実により機能のすみ分けがなくなってきた。しかし、サービスの地域格差があり資源の少ない地域でデイ・ケアを切るべきではない。今が過渡期であるという認識が必要

○日中はデイ・ケア、夜はナイトケアで、食事もとるという生活では、社会的通所者を作り出しかねない。社会的入院とデイ・ケアとは同じ問題をはらんでいる。財源問題からも医療と福祉の重複サービスには整理が必要

○医療費削減が目的で、デイ・ケアの利用を是正するというのならこの会の趣旨に反する。デイ・ケアの位置づけや機能分化の議論が必要で、最終的にはデイ・ケアをどう充実させるか、という方向で議論する必要があるのではないか

○デイ・ケアは十分な質と量、基盤整備がされていない中で削減や機能分化は時期尚早であり絶対に反対

○デイ・ケアの長期利用者がいる現実は受け止めるべきで、生活支援型のデイサービスにあたる部分は福祉サービスに移行すべき。資源がない地域での移行はすぐには無理だが、スムーズな移行の仕掛け方は検討に入るべき

○資源が少ないところにあわせて全国の資源を作るのではなく、地域間格差を認識してデイ・ケアの必要性を議論すべきであり、また、地域資源では行えない専門的プログラムもある。デイ・ケアには、日中の生活状況を見ながら薬の副作用をみる大切な場面もある。諸外国では他のプログラム開発によりデイ・ケア数が減っている経緯もあり、精神医療の質の向上が必要

○今回の議論は、国、医療機関、福祉の職域開発という財源問題からスタートしているようだが、コンシューマー(消費者)の視点で考えると、自分らしく生きるためであれば医療でも福祉でもどちらでもよい

などの意見がだされました。

2.気分障害、依存症、児童・思春期の精神医療について

 はじめに、すべての資料について事務局から説明がなされました。

 気分障害については論点整理には上がっていませんでしたが、気分障害、特にうつ病罹患者の増加が著しいことから、今回議題に取り上げることになったとの説明があり、うつ病患者の早期発見・適切な診断のため、精神科へつなぐ対策を進めること、気分障害患者の診療ガイドライン等の作成により、医療の質の向上を図ること、海外でうつ病への有効性の評価が高い認知行動療法について、国内での検証と普及を図ること、気分障害の治療について、積極的な社会復帰の取組みや治療支援方法の研究を進め成果の普及を図ること、の検討の方向性が示されました。

 依存症については、依存症患者の回復に向けた総合的な取り組みを強化すること、物質使用に係る法的側面については、精神保健福祉だけでなく幅広い観点からの検討が必要、との検討の方向性が示めされました。

 最後に、児童・思春期の精神医療では、児童・思春期患者に専門的対応ができる医師数の拡大と一般の精神科医に対する研修を進めること、児童・思春期精神科医療に積極的に取り組むような施策を行い、専門病床や専門医療機関の確保、医療提供体制の拡充を図ること、との検討の方向性が示されました。

 各テーマについて、構成員から次のような意見が述べられました。


<気分障害>

○うつ病は早期受診が少ないため、国民に対する啓発活動が必要。静岡県では、啓発活動の一環としてうつ病のコマーシャルを放送したり、予算に基づきコールセンターを設置したりしている。地域包括支援センターが各市町村にあるので、そういうところにPSWなど専門家を配置して、うつ病の啓発や自殺予防につなげられるよう担当部局をまたいで施策を講じてほしい

○薬の副作用に関する情報をもっと正確に提供すべき。今は中途半端な情報が広がっている。また、再発率が高いため一生を通した支援の視点が必要

○従来の抑うつ神経症の人がうつ病の中に含まれるようになって、気分障害の増加につながっていることも理解すべき

<児童・思春期>

○児童・思春期の施策に対して診療報酬上の評価だけでは運営が難しく、都道府県医療計画上等に位置づけ実行してほしい

○自治体での計画に位置付けるのは今財政危機に瀕している自治体としては実質的に困難。診療報酬上でもっと高い評価が必要

○発達障害や自閉症など、児童精神科医などによる1.5歳児検診など早期スクリーニングが重要

○リスクの高い子どもに、きちんと療育できるかどうかがカギであり、そのためにも児童精神科医の養成やきちんとした研修が絶対必要

○児童思春期を一括議論はやめ、児童と思春期はわけて考えるべき

<依存症>
○世界的な依存症の定義やその被害の大きさから考えても、ニコチン依存症を加えるべき

○依存症に対して医療は無力であり、有効であるとされる自助グループが全国で活動できるような支援が必要

○アルコール依存症は実際に地域でも受診率が低い。大量飲酒や長期飲酒が依存症になることを啓発し、予防する視点が必要

○依存症の啓発は、教育で伝えるべきであり、また、タバコのように、アルコール産業界に依存症になるリスクの啓発を求めるべき


 また、3つのテーマに共通する事項として、医療のみの検討でなく福祉や教育、司法などとの連携が重要であること、医療に比較して絶対的に福祉などのコストが貧しいこと、また、医師不足や医師の養成に重きが置かれているが、看護、コ・メディカルも併せて不足しているので、常にチームの各職種への目配りが必要という意見がありました。

 第19回となる次回は、2009年6月18日(日)10時から航空会館で実施されることが事務局から報告され閉会しました。

傍聴記録:事務局 依田葉子

配布資料(WAMNET090609)へリンク。


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