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<2009/11/24>

「第7回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」報告
 

【日 時】2009年11月17日(水) 【場 所】三田共用会議所(東京都港区)

【議 事】※当日の資料は ここ からご入手ください。

1.精神保健福祉士の新たなカリキュラムについて

 座長挨拶の後、事務局より、1年ぶりの開催になること、この間中間報告を受けて自立支援法等の一部改正案として精神保健福祉士法の改正案が上程されたが廃案となったこと、新政権への移行に伴い、今後の方向性は現時点では不透明だが、検討会では粛々と必要な検討を進めていただきたいことの報告があった。

 続けて事務局より、資料説明があった。「教育内容等の見直しについて」(資料1)では、「見直しの基本的な考え方」として、本検討会中間報告を踏まえて、実践力の高い精神保健福祉士を要請する教育内容への改正を実現するために、2009年3月よりワーキングチームを開催し、教育内容の見直しに向けて、新たなカリキュラムに関する検討(9月まで計4回)を行ったこと、ワーキングチームで検討された内容を基にして、さらに事務局において検討会中間報告で指摘された事項を踏まえ、今後の検討会における議論の叩き台となるように、「教育内容見直し案」として整理した旨の説明があった。

 「教育内容の見直し案 T教育カリキュラムの枠組みと講義系科目」(資料2)では、新教育カリキュラムの枠組み(案)として、1)教育時間数を現行の90時間増の1200時間とすること、2)社会福祉士との共通科目として「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」(30時間)を新たに盛り込むこと、3)専門科目体系として現行の学問体系から、知識・技術を柱とした科目体系に見直すこと、4)専門教育カリキュラムの構成として専門科目に、精神保健福祉士教育の中核的な科目を創設し教育効果を高めること等の説明があった。

 具体的な専門科目案の構成見直し(案)として、1.「精神疾患とその治療」(60時間)〔現行:精神医学〕、2.「精神保健の諸課題と支援方法」(60時間)〔現行:精神保健学〕、3.「精神保健福祉相談援助の基盤T」(30時間)、4.「精神保健福祉相談援助の基盤U」(30時間)〔以上、現行:精神保健福祉援助技術総論〕、5.「精神障害者福祉の理論と相談援助の展開」(135時間)〔現行:精神保健福祉援助技術各論、精神科リハビリテーション学、精神保健福祉論の一部〕、6.「精神障害者の施策と福祉サービス」(45時間)、7.「精神障害者の生活支援システム」(30時間)〔以上、現行:精神保健福祉論の一部〕とすることが示され、各科目のシラバス内容と想定される教育内容の例(案)の説明があった。

 「教育内容の見直し案 U演習・実習」(資料3)では、演習・実習の教育内容の見直しの考え方(案)として、演習の時間数を、現行の60時間から90時間へ拡充すると、実習時間数を拡充するとともに、精神科医療機関等の実習を必須にすることが示され、それぞれのシラバスの内容の説明があった。

 以上の説明を踏まえ、検討会構成員による意見交換が以下のように行われた。

〇障害者支援に関する科目は共通科目として入れ込まざるを得ない。/専門科目郡の設定(案)については、(1)から(6)に整理されているが、3の「医療と協働・連携する相談援助の理念と方法に関する知識と技術」は精神保健福祉士養成の根幹をなすところ、内容がそれぞれに入り組んでしまっているという印象。福祉士と医療に跨るところが精神保健福祉士にとって重要なので表に出るようにしてほしい。/新科目では、精神保健福祉と精神障害者福祉の2つの表記が混在している。10年前の精神保健福祉士法制定後のカリキュラム検討の際に議論して、精神保健福祉に整理した。また、そのときの議論に戻ってしまう印象がある。/時間数について、135時間や45時間といった奇数で設定している科目があり、大学では授業の組み立てが難しい。

〇5の「精神障害者福祉の理論と相談援助の展開」については、TとUに分けるような整理をした方が大学では取り組みやすいかもしれない。

〇精神障害者福祉という表記については、中核となる科目として位置づけることと、社会福祉士の科目との整理から「精神障害者」としたと理解している。

〇個人的には、むしろ精神保健福祉とした方が良いと考える。精神障害者と限定的に捉えるよりは、将来的にさまざまな精神保健上の課題への取り組みに広がっていく可能性も考え合わせて。

〇「障害者」と表現することも、広く精神保健福祉全般に関わる大きな課題である。

〇「精神障害者」とすることは、やはりちょっと違うのではないかと。地域で支援を展開している中では、「障害者」も「障がい者」とする動きが広まっている。

〇専門科目5については、「精神保健福祉」に変更する方向で。6の「精神障害者の施策と福祉サービス」については、福祉サービスではなく保健サービスとした方が良いだろう。

〇今の議論に関連して試験委員の立場からは、用語の整理も必要だと思う。用語委員会を別に設けて整理を図ってほしい。

〇リハビリテーション辞典を最近刊行したので参考まで。

〇医療の現場では最近、アドヒアランスという言葉が使われるようになってきた。コンプライアンスとは違う概念なので、精神保健福祉士に伝えておくべき。

〇まだ精神障害かどうか分からない、あるいは診断されていない人たちの相談が増えてきている。カプランがかつて提唱した第一次予防に今後支援がシフトしていくことも見越したカリキュラムとしてほしい。

〇2の「精神保健の諸課題と支援方法」について、さまざまなメンタルヘルス課題に対応する具体的な支援の部分が抜けている。また、5の科目では、スーパービジョンとコンサルテーションが一つの括りにされているが、コンサルテーションは今後非常に重要となるので、独立させた方が良い。

〇2の科目について、シラバスに含まれる事項の(2)から(6)に対して想定される教育内容の例として、「保健所等の精神保健福祉士の役割」が示されているが、さまざまな課題に対するもう少し踏み込んだ内容にすべき。ゲートキーパーとしての役割が期待されているところでもあるので。

〇「保健所等の精神保健福祉士の役割」については、総括的にしたほうが良い。

〇演習・実習について、大学の多くが社会福祉士のカリキュラムを履修したうえで精神保健福祉士のカリキュラムに進むというところが5割を超えるようになってきた。ジェネラリストとしての基礎のうえにスペシャリストとして治療や医療の現場で具体の経験をするという位置づけで捉えると、実習時間数は実習先の確保の問題も含めて、3障害を対象とした地域の施設等社会福祉士の実習先と共通のところは一部認めていく夫が必要。また、演習についても自己覚知等のソーシャルワーカとして基礎的な部分は社会福祉士の演習と共通するものとする配慮が必要。

〇読み替えを認める際には、実習指導者が精神保健福祉士で指導者としての要件を満たしているところといった当然の縛りが必要。

2.その他

 座長からは、カリキュラムについては、本日の意見を一旦事務局で整理したうえで、次回再度検討していくこと、またカリキュラム改正時期については、今後の障害者施策の詰めの検討が始まる中で具体化していくことが示された。
 また、事務局からはカリキュラムの整理がついたうえで、短期養成と通信過程に関する検討を行う予定であるとされた。

傍聴記録:常務理事 木太 直人


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