機関誌「精神保健福祉」

通巻87号 Vol.42 No.3(2011年9月25日発行)


目次

巻頭言  過去から未来へ,受け継がれるもの,そして進化させるもの/栗田直嗣

特集 第47回社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会/第10回日本精神保健福祉士学会学術集会

〔特別企画〕
本協会の災害支援体制と支援活動の報告/演者=竹中秀彦/報告者=小関清之・渡邉昭宏・木太直人・廣江 仁/司会=大塚淳子

〔特別講演〕
精神障害者の地域生活支援について〜精神保健福祉士に求められるもの〜/工藤一恵

〔分科会1〕
・ 乳幼児,児童・思春期における早期支援の取り組み
・ 掴んでいますか? 家族のニーズ〜求められる支援
・ 権利を護る仕組みと実践から
・ 生活の場へ出向く訪問型の支援
・ 耕そう! 創ろう! 豊かな地域精神保健福祉
・ さまざまな支援における精神保健福祉士の役割

〔分科会2〕
・ スクールソーシャルワーク等教育の現場から
・ ピアサポートの支援と当事者からの学び
・ 精神保健福祉士の養成教育とスーパービジョン
・ 促進しよう! 地域移行支援
・ 働きたい,働き続けたいを支援する
・ 多様な領域における支援

〔ポスターセッション〕

〔プレ企画〕
・精神保健福祉士の専門性〜業務指針の意義と活用を考える〜
・長期入院患者さんの想いを聴く
・自死予防活動の実際〜白浜レスキューネットワークの取り組みを通して〜
・ 「はたらきたい」にどう応えていますか?〜就労支援を通してその人らしい生活を考える〜
・ 【初任者企画】みんなで悩めばこわくない!

〔記念講演〕
挑戦 〜人と社会をつなぐ取り組み〜/ 佐野 章二

投稿規定


巻頭言

過去から未来へ,受け継がれるもの,そして進化させるもの

第47回社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会/第10回日本精神保健福祉士学会学術集会 大会・学術集会長 栗田 直嗣

 新聞のスポーツ欄では、全国で繰り広げられている夏の高校野球大会の地方大会がその紙面をにぎわすようになってきました。ちょうど明日は、昨年(2010年)の開催県の沖縄県の代表が決まるようです。そして、季節を超え復興に向けて苦難の日々を乗り越えようとまなざしを上げておられる東日本の被災された地方では、球児たちがいつもとは違う悪条件の中で必死に白球を追い続け、母校や地元の伝統、先輩から受け継いできた想いや願い等をその白球に込めて、未来に向けて追い求める姿が私の胸を熱くします。全国の球児たちがそのヘルメットに「がんばれ、日本」と刻みこみ、積み重ねてきた練習を、今全力でプレイに変え、勝負にかかわらず、未来を担う後輩たちにその真価(進化)を受け継ごうとしているのでしょう。

 今大会・学術集会で私たちが掲げたテーマ「過去から未来へ、受け継がれるもの、そして進化させるもの」は、われわれPSWがその専門性をもって向き合う「生きる」ことへの「歩む」ことへの提言だと確信しています。そして大会や学術集会をとおして、その実践の現場からたくさんの提言や報告がなされました。多くの意見交換や議論が活発に交わされ、交流、懇親の場ではつながりや広がりが確固としたものになったのではないでしょうか。そしてそれらを持ち帰った皆さんは、「向き合う」日々の中で自らの実践に変えていかれるでしょう。そうした全国の実践を「声として」「力として」現状と乖離することのない「制度」や「施策」「法律」につなげていくことが、「未来」に向かって進化させていく大切なことだと思っています。

 和歌山県精神医学ソーシャルワーカー協会も日本精神保健福祉士協会和歌山支部もまだまだ未熟で、今大会・学術集会を開催することすら本当に不安でした。しかし、社団法人日本精神保健福祉士協会本部・事務局の方々、先駆けて開催された先達者の皆さん、県内外の関係機関のご支援をいただき、開催することができました。またこの度の東日本大震災にもかかわらず、その現地からもご参加いただけましたことは本当に大きな勇気と力をいただきました。本当に皆さんありがとうございました。

 「公助」「共助」「自助」のバランスが改めて問い直され、「今を生きる」ことから、ややもすれば「乖離」してしまっているこの社会に、今大会・学術集会が小さくても楔を打ち込み、未来に一条の光を届ける契機になればと願っております。

 来年は、熊本県の皆さんが「想いをつないで」くださいます。雄大な阿蘇山の、カルデラの大地が広がるきっと素敵なところでしょう。そして近い将来、東日本の地でつなぎ続けられた「想い」「実践」を「提言」し、「交流」できることを祈っています、いえ信じています。


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