精神症状等を有する認知症患者に係る退院支援パス等の地域連携の推進に関する調査事業
(厚生労働省平成23年度障害者総合福祉推進事業)

社団法人日本精神保健福祉士協会 発行


報告書作成にあたって

 わが国の高齢化は世界に類を見ない速さで進行しており、家族構成や産業構造の変化、コミュニティの脆弱化および人口減少などを伴い、認知症のある方をはじめ医療や介護を要する高齢者への支援は、大変大きな課題となっている。

 厚生労働省老健局が2002(平成14)年に実施した将来推計によると、2005(平成17)年の要介護認定が自立度U以上の認知症患者数は169万人、2015(平成27)年には250万人とされた。また、2008(平成20)年の患者調査による年次推移をみると、1996(平成8)年に11万人であった認知症患者数が2008(平成20)年には38万人まで増加し、外来患者が約30,6万人、入院患者が約7,5万人となっている。介護保険制度が始まって既に10年余経過したが、認知症患者数の増加に伴い、近年は認知症のある方の生活支援が、医療と介護にまたがった大きな課題となってきている。

 精神病床入院患者の疾病別内訳を見ると、統合失調症患者は自然減や退院促進、地域移行支援等が一定進んでいることなどもあり減少傾向にあるが、認知症患者は増加傾向にある。このまま進展すると、精神科病院では認知症患者に提供すべき医療の役割を超えて、統合失調症等患者の減少によって生まれた空床を埋めるべく積極的に認知症患者を受け入れることから新たな社会的入院を生むことが危惧された。

 認知症患者に対し精神科医療が果たすべき役割等を検討するために、厚生労働省で2010(平成22)年の4月から開催されている「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の第2ラウンドでは「認知症と精神科医療について」が検討され、とりまとめが2011(平成23)年11月29日に公表された。とりまとめでは、認知症の方への支援に当たっては、ご本人の思いを尊重し、残された力を最大限生かしていけるような支援をすることを前提とし、できる限り地域の生活の場で暮らせるような支援とするために、連携パスなどの取組みを進めることとしている。

 社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、本協会とする)は、厚生労働省の2011(平成23)年度障害者総合福祉推進事業の補助金を得て、「精神症状等を有する認知症患者に係る退院支援パス等の地域連携の推進に関する調査事業」(以下、本事業とする)に取り組むこととなった。精神症状等を有する認知症患者の地域生活を支える医療支援・サービスのあり方について、地域における実践事例や実態調査を踏まえ、精神科病院や地域の介護保険サービス事業所(以下、事業所)等との連携方策、患者像とそれに対するサービス提供のあり方の提言に資する調査検討の実施をめざした。事業成果として開発したパス等と活用方法について記したガイドブックを添えて報告をとりまとめるに至ったのでご高覧頂ければ幸いである。末尾ながら検討委員会構成員をお務めいただいた方々と、調査等実務を担った事業担当者の皆さまへの感謝を申し上げる。

 是非とも認知症の方の支援に携わる現場の皆さまにご活用いただき、有効な支援ツールとなるような改善を図っていきたいと考える。ご活用いただくそのプロセス自体が支援を豊かにすることに資すると考える次第である。

2012(平成24)年3月31日

社団法人 日本精神保健福祉士協会


■一括データ/ 報告書・ガイドブック(82頁/PDF/8.5MB)
■分割データ/ 報告書PDF/2.5MB)
ガイドブックPDF/3.3MB)
資料1:アセスメントシートEXCEL/96KB)
資料2:退院支援・地域連携パス(支援者用)EXCEL/113KB)
資料3:退院支援・地域連携パス(本人・家族用)EXCEL/366KB)
資料4:情報提供同意書WORD/14KB)

精神症状等を有する認知症患者に係る退院支援パス等の地域連携の推進に関する調査事業
目次

第1章 事業概要
1 事業目的
 1.本事業の取り組み経緯
 2.本事業の目的
2 事業要旨
3 事業内容
 1.基礎調査
 2.ヒヤリング調査
 3.試行調査
 4.研修

第2章 認知症の方の退院支援における今後の課題について
1 今後の課題について1
2 今後の課題について2

資料 
1.検討委員名簿
2.事業担当者名簿
3.調査事業協力者一覧
4.調査票
(1)情報シート(ヒヤリング調査)
(2)演習用事例(研修)
(3)演習用シート(研修)
(4)アンケート(研修)


認知症の人の「退院支援・地域連携パス」ガイドブック
目次

第1章【パスの概要】
1.パス作成の目的
2.パスの対象
3.パスの構成
4.パスの使用方法
(1)使用の手順
(2)保管及び取り扱い方法
5.パス全体の留意点
(1)記入及び使用に関する留意点
(2)アセスメントシートの記入における留意点
(3)退院支援・地域連携パスの記入における留意点

第2章【使用と記入時の留意点】
1.【アセスメントシート】
2.【退院支援・地域連携パス】
(1)入院前〜入院時
(2)入院を要する症状の改善期
(3)退院調整期

第3章【記入例】
 事例1
 事例2

資料
資料1【アセスメントシート】
資料2【退院支援・地域連携パス(支援者用)】
資料3【退院支援・地域連携パス(本人・家族用)】
資料4【情報提供同意書】


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