精神保健福祉士のための相談支援ハンドブック(ver.1.3)

作成:公益社団法人日本精神保健福祉士協会 相談支援政策提言委員会


・ 報告書データPDF/40頁/5.5MB/一括ダウンロード用データ)


 私たち相談支援政策提言委員会は、ここに本人中心の地域生活支援を実践するすべてのPSWのための「相談支援ハンドブック」を作成いたしました。私たちがソーシャルワー力ーとして担ってきた「相談」が「相談支援事業」として制度化された今、名称独占資格である精神保健福祉士が業務独占任用資格である相談支援専門員資格を得て、制度における相談支援を包含した相談支援業務を行なうことの意義は大きいと考えています。障害のある国民が障害福祉サービスを利用するには必ず相談支援を受けることになったこと、相談支援専門員が地域相談支援というサービスを行なえるようになったこと、それが、社会的入院の解消に役立つ地域移行支援等であることからも、精神障害者の社会的復権を願い生活支援を行なっているPSWとしては、欠くことのできない業務として相談支援事業が重要となったと言えます。

 我が国の障害福祉施策は障害者総合支援法によって、障害種別を分けずに本人主体、他の者との平等、地域生活支援、社会モデルなどを基本とする地域生活支援施策となり、ノーマライゼーション社会に向けた本格的な社会変革が始まりました。PSWは「相談」を担う専門職として長年の実践から積み上げてきた大切な理念や視点、方法と技術などをもっています。いよいよ相談支援の専門職として社会的実践の先導者としての役割を果たすべき時代を迎えたと考えています。また今こそ相談支援の専門職として相談支援事業に関心を向けていただきたいと切に願います。

 精神保健福祉士は「精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動」を行う職業として自覚し続けてきました。精神障害者として、差別を受けること、自由でなくなること、自らの決定よりも支援者などの決定が優先されて従うこと等々、理不尽な状況から解放することが私たちの大きな支援課題です。広義では多様な生活支援を担うことがソーシャルワー力ーの業務ですから、個人の問題解決だけではなく個人と相互関係にある多様な環境・状況に対して働きかける社会的活動も私たちの業務です。

 私たちPSWは相談から始まり、相談支援の連鎖としての多様な援助関係の展開を基本としてきました。私たちは、実践軸を「クライ工ントと対等な関係の確立」という「かかわり」においてきたのです。これは支援者と支援を受ける者との主体的「協働過程」を歩むことです。どのような場所、立場で働こうと基本に本人中心、自己決定の尊重を据えて、“障害者"となった人々の、その人の生活=人生を支援することが責務です。

 私たちは、(1)自己支援力(セルフケアの力)、(2)家族支援力、(3)地域支援力(制度を含む)、(4)専門職支援力の4つのストレングスに注目し、疾病・障害があってもリカバリーできることを可能とする相談支援を提案します。それは「支援を受けながらも本人たちが主体的に判断して利用する相談支援」となり、主体的判断=自己決定への支援も含んでいます。精神保健福祉士であり相談支援専門員となった者は、当事者の言葉を借りるならば次のようなことが支援の内容となるでしょう。(1)彼らの人生に希望を与えること、(2)彼らに効果のある治療と支援を提供すること、(3)彼らの苦しみの意昧を見出すことを助けること、(4)個人の持つ力を支援すること、(5)対等なパートナーとなること、(6)彼らの権利を守ること、(7)彼らを家族や地域につなげることなどです。これらが求められ、それを満たす相談支援を実践することになります。

 病院で働こうと、障害福祉サービス事業所で働こうと、相談支援事業所で働こうと、この相談支援ハンドブックに関心を寄せられ、地域で暮らすことをあたりまえにするための実践に活用していただくことを願います。

門屋 充郎


・もくじ

1. はじめに
2. 「相談支援」とは?
 1)精神保健福祉士にとっての「相談」「相談援助」「相談支援」
 2)「相談支援」と「自立支援協議会」「基幹相談支援センター」
 コラム1:サービス等利用計画におけるサービス"等"とは?
 コラム2:ピアの力
3. 計画相談支援の流れとポイシト
 1)計画相談支援の流れ
 2)「rサービス等利用計画」のあり方
 コラム3:「サービス担当者会議」の重要性
 コラム4:「セルフ作成」について
4.計画相談支援と障害福祉サービス等との関係
  ・「サービス等利用計画」と「個別支援計画」
 コラム5:障害福祉サービス事業者が最初の相談窓口なった場合は?
 コラム6:障害福祉サービスが既に支給決定されている場合は?
5. 相談支援と精神保健福祉のこれから
6. おわりに
付録 「相談支援」をもっと深く理解するために!!

・公益社団法人日本精神保健福祉士協会 相談支援政策提言委員会(2013年9月現在)

担当部長  中川 浩二 和歌山県障害福祉課 和歌山県支部
委員長 岩上 洋一 特定非営利活動法人じりつ 埼玉県支部
委員 有野 哲章 埼玉県幸手保健所 埼玉県支部
委員 遠藤 紫乃 特定非営利活動法人ほっとハート 千葉県支部
委員 吉野 智 中核地域生活支援センター海匝ネットワーク 千葉県支部
委員 金川 洋輔 地域生活支援センターサポートセンターきぬた 東京都支部
委員 吉澤 浩一 相談支援センターくらふと 東京都支部
委員 今村 まゆら かまた生活支援センター 東京都支部
委員 菅原 小夜子 特定非営利活動法人こころ 静岡県支部
委員 中野 千世 地域活動支援センター櫻 和歌山県支部
委員 青戸 忍 特定医療法人養和会 養和病院 鳥取県支部
助言者 門屋 充郎 特定非営利活動法人十勝障がい者支援センター 北海道支部
協力 相川 章子 学校法人聖学院大学 人間福祉学部 埼玉県支部

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