東日本大震災支援活動記録集


一括ダウンロード用データ(A4版・98頁/PDF/3.3MB)


 大地震、巨大津波そして原発事故による放射能汚染、すべてが想定外と言われる未曾有の被害を出した東日本大震災からはや4年近い月日が流れようとしている。しかし今なお避難生活を余儀なくされている方が26 万人強、仮設住宅での生活を強いられている方は10 万人にも及び、被災地や被災された人々は今も平穏な日常とは程遠い、非常時の只中にあるのではないだろうか。また被災者には仮設住宅の劣化や健康不安、人間関係の希薄化など新たな難題が次々降りかかってきていると聞く。復興への道のりはいまだ困難の連続と言っても決して過言ではないだろう。しかし被災地から離れて住む多くの国民にとっては、徐々に関心の的から外れつつあるのではないだろうか。それは私たち精神保健福祉士にしても決して例外とはいえない。次々と各地で起こる自然災害、広島の土砂災害の記憶も生々しいうちに御嶽山の噴火被害が起こり、新たな脅威が記憶の風化に拍車をかけていくようだ。

 この「東日本大震災・支援活動記録集」は、公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下「本協会」)が取り組んだ災害支援の実践を記録として編纂することで、すべての構成員が活動の概要を共有するとともに、活動から得られた教訓や課題を精神保健福祉士(以下「PSW」)による災害ソーシャルワークの検証材料の一つとするということが企画の趣旨である。しかしそれ以前に東日本大震災の記憶を風化させない、今なお経済的にも社会的にも絶望的なダメージを受け、癒すことのできない心の傷を負っている人々のことを忘れない、そしてその苛酷な現地で支援を続ける仲間を応援したい、この思いをすべての構成員の皆様と共有するための存在としたいというのが編集委員一同の祈りにも似た願いである。

 振り返れば「被災されたすべてのひとの痛みを、苦しみを、哀しみを分かつことができるように、復興への長い道程の困難に寄り添って関わり続けることができるように、すべての人が希望を持って困難に立ち向かえるように、わたしたちの思いと知恵と力と技術を結集しなければなりません。」高らかに謳い上げた東日本大震災復興支援宣言(2011 年6月)どおりの支援活動ができたとは残念ながら到底思えない。さまざまな不自由の中、遠方から支援に入られた方々の悪戦苦闘がそのまま成果につながる程被災地の現状は甘いものではなかったのだろうと思う。かえって派遣先の方々に気を使わせることになったこともあるだろう。不全感や無力感と戦いながらの被災地支援、入られた方々に改めて深い謝意と敬意を表したい。また支援者の後ろに不安と不自由を託ちながら送り出してくれたご家族や職場の方々がおられたことも忘れてはならないと思う。そして何より自ら被災しながら被災地支援にずっと携わっている方々、遠方からの支援者へのサポートをしていただいた方々にはとても言葉には尽くせないが心から御礼申し上げたい。

 この記録集はPSWの災害支援の忠実な記録という以上に、災害ソーシャルワークの可能性と課題を検証し、具体的な対策を社会に発信し、また行政や国への提言につなげていく材料にしていくことに大きな意味があると考えている。災害ソーシャルワークの実践を有効にするために日頃からの訓練、研修の必要性は言うまでもなく、この記録集が生きた教材になることを確信している。

 最後になるが、記録集刊行にあたり、多忙な時間を割いて御寄稿いただいた方々、アンケートやヒアリングにご協力いただいた方々、すべての関係する皆様に心から感謝申し上げる。

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠


東日本大震災支援活動記録集目次

はじめに
目次
1.東日本大震災対策本部と東日本大震災復興支援本部における取り組み
2.支援者派遣のコーディネート及びバックアップ体制
3.被災地における支援活動の概要
4.活動報告
5.派遣者へのアンケート結果
6.派遣受け入れ先の声
7.ほっとミーティングの記録
8.資料集
おわりに


編集委員(50音順)

柏木 一惠(公益財団法人浅香山病院)
木太 直人(公益社団法人日本精神保健福祉士協会)
小関 清之(医療法人社団斗南会 秋野病院)
田村 綾子(聖学院大学 人間福祉学部)
廣江 仁(社会福祉法人養和会 障害福祉サービス事業所 F&Y境港)

執筆者(50音順)

天野 宗和(一般社団法人福島県精神保健福祉協会 いわき支部長)
飯ヶ谷 徹平(医療法人社団優仁会 グループホームさざんか)
太田 隆康(特定非営利活動法人心泉会)
大屋 未輝(独立行政法人国立病院機構 さいがた病院)
梶田 紀子(特定医療法人新生病院)
柏木 一惠(公益財団法人浅香山病院)
木太 直人(公益社団法人日本精神保健福祉士協会)
木村 雅昭(医療法人社団友和会 友和病院)
木本 達男(岡山市保健所)
小関 清之(医療法人社団斗南会 秋野病院)
新川 貴史(社会福祉法人養和会 宿泊型自立訓練事業所 はばたき)
田村 綾子(聖学院大学 人間福祉学部)
廣江 仁(社会福祉法人養和会 障害福祉サービス事業所 F&Y境港)
古市 尚志(公益財団法人浅香山病院)
三木 良子(東京成徳大学 応用心理学部)
結城 佳子(名寄市立大学 保健福祉学部)
吉野 比呂子(一般社団法人東京精神保健福祉士協会)
渡部 裕一(公益社団法人宮城県精神保健福祉協会 みやぎ心のケアセンター/医療法人社団原クリニック)


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