いま、研修センターが思い描く「精神保健福祉士」
〜中期ビジョン2020『鍛える』が見据える取り組み〜

研修センター長 洗 成子

 あなたは精神保健福祉士としての自分をどのように育てていきたいとお考えですか?

 もしかすると「あんな風になりたい」と憧れて理想とする先輩に出逢えたという方もいらっしゃるかもしれませんね。あるいは現場での経験をとおして、精神保健福祉士として深めたい領域、磨きをかけたい知識や技術など、具体的な方向性をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

 もしくは、理想と希望を持って精神保健福祉士になったのに、日々の現実とのギャップに気力が奪われ意欲を維持することも難しいと、今まさに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。資格を取ったところがスタートラインで、生涯にわたって研鑚を続けなければならないとは言っても、それぞれが求める研鑚の内容は異なり、取り組み方も多様であることは言うまでもありません。

 新任・ベテランの区別なく、私たちには専門職者として学び続け、力量を高めていく責任があります。そして研修センターの役割は、新任からベテランまで、一人一人の精神保健福祉士が育ち続けていくための環境(研修・スーパービジョン・自己研鑚)を形作り提供することにあると考えています。

 これからの日本社会にはますますソーシャルワークが必要であるとの国の声に呼応して、あらゆる領域の人が「ソーシャルワーカー」を名乗り始める可能性がある中で、私たちこそが社会福祉の基盤(価値・倫理)を備え、且つメンタルヘルス領域に精通したソーシャルワークの専門職であるということを認めてもらうには実践で示していくしかありません。

 自分の目の前にあるミクロの個別支援から始まって、メゾ・マクロへと社会変容の展開ができてこそのソーシャルワークですが、現場で支援に携わる中で発見した問題を社会化する経路を切り開くことが十分に実践できていないと感じている人も少なくないのではないでしょうか。自分の専門性を磨き、真にクライエントの力になれる精神保健福祉士になりたいとの志を遂げるために協会に入会くださった方も多いと思っています。

 生涯研修制度が立ち上がり十年余、研修センターでは、質の高い力量のある精神保健福祉士の現任者を養成するためにさらなる具体的な方策を検討している最中です。 

 そして、今後の人材育成のシステムを検討するための骨格となる、以下のような方針をまずは定め、6本の柱立てをしました。

【方針】研修センターが目指す精神保健福祉士像

【『ソーシャルワークを基盤とし、メンタルヘルス課題を含むあらゆる生活福祉課題を地域包括的に対応できる人材』の育成
    ↓

〈前提としての資質〉精神保健福祉士であるために、誰もが必須に備えているべきこと
 『精神保健福祉士の倫理綱領に準じた「倫理」「価値」「専門性」を意識して、業務指針に基づいた業務を適切に行うことができる』
    ↓
具体的にはどのような研鑚を積むことで目標とする精神保健福祉士に近づけるのか
〈研鑚の6本柱〉
  1. 精神保健福祉士として自身に対する評価を適切に受け止めて、実践に生かすことができるようになる。(自己評価・他者評価の機会を取り入れている)
  2. 精神保健福祉士としてあらゆる研鑚機会を活用し、自ら学び続ける力を保ち続けることができるようになる。
  3. 精神保健福祉士として連携・調整・協働・チームアプローチをすることができるようになる。
  4. 精神保健福祉士として地域アセスメントを正確に行い、分野横断的な支援が展開できるようになる。
  5. 精神保健福祉士として制度政策を深く理解・分析し、近未来に起こりうることを見通す力が身に着くようになる。
  6. 精神保健福祉士として社会を変える発信力・行動力を有することができるようになる。

 実践領域が広がっても、精神障がい者の社会的復権・権利擁護と福祉のための専門的・社会的活動を行うという専門職としての揺るぎない原点を核に持っていることが、私たち精神保健福祉士の強みです。日々の実践において原点たる資質を養いつつ、その資質のうえに研鑚を積み上げていくことが肝要であると考えました。

 この6本柱を基軸に、今後は具体的なシステムを検討していきます。これらはもちろん研修だけで備わることではなく多様な学びのあり方が必要であることや、精神保健福祉士の養成校との連続性、都道府県協会や他団体との連動・連携の仕組みなどを念頭に置きながら協議する必要があります。

 システムの完成には数年を要することになりますが、モデリングによる検証など、構成員の皆さまにもご協力をお願いしながら実効性のある良いものの構築を目指していきます。