報告

第16回更新研修

「第16回更新研修」を、2012年12月8日(土)、9日(日)の日程で、タイム24(東京)を会場に開催しました(開催案内)。


       
小出講師による講義1 演習の様子 全体会発表 代表者による修了証書授与

・ テキストからは得られないもの

社会福祉法人友遊会 詩膳 栗原 潤

 2012(平成24)年12月8日(土)、12月9日(日)の2日間に渡り、タイム24(東京会場)にて本協会主催の生涯研修制度更新研修が開催されました。追加研修とあってか、北は北海道、南は沖縄と全国各地から70数名のPSWが参加され盛り上がりをみせました。

 全2日間の研修構成は3コマの講義研修、そして演習と事例検討会という流れで進行していき、講義研修では小出保廣氏(堺市ちぬが丘保健センター)、長谷川治氏(青森市役所障害福祉課)、川口真知子氏(公益財団法人井之頭病院)よりお話しを頂戴することができました。

 小出氏からは「精神保健福祉士の専門性V」と題した講義で、精神保健福祉士の資格化に至るまでの様々な過程や揺らぎの時代について、資格化されたあとの倫理、価値の確立に至るまでの歴史的背景について、小出氏自身の実践談を交えながら具体的に語られ、これまで様々な揺らぎの中で現在のPSWの価値や倫理が築かれてきたことを改めて認識する機会となりました。

 長谷川氏からは「精神保健福祉制度・政策論U」と題した講義で、歴史的政策の流れから障害者総合支援法に至るまで、精神保健福祉医療の各制度の説明に加え、保護者制度の在り方や障害者権利条約の批准についてなど、講師より問いかけられる場面があり各受講者と検討する機会が設けられました。そのことで講義を聴き頷くだけではなく、自身の思考の言語化と仲間の視点とを良い形で交錯することができ、現実の課題と照らし併せながら障害者の権利をより具体的に考える機会になりました。

 また川口氏からは「精神保健福祉士の実践論V」と題した講義を頂き、権利擁護の視点をはじめ、PSWとして日々の業務の中から常にソーシャルな視点を意識し実践していくことの重要性と、その積み重ねや実践の中から地域社会資源の開発にも積極的に取り組んでいくことの重要性が語られ、ソーシャルワーカーの役割について改めて考える機会となりました。

 それぞれの講義で共通して感じたことは「P魂」でした。PSWとして実践で培ってきた知識、技術、価値、倫理、そして熱い想いがそれぞれの講師から伝わってきたのが非常に印象的でした。
そして、その「P魂」を受けて2日目の昼前より演習及び事例検討の時間が始まりました。演習・事例検討では7人1グループ程度に分かれ進行して行きましたが、この時間が私にとっては一番有意義な時間となりました。

 事例に関しては1人1事例、全グループでは70強の事例が報告され、その中から各グループで1事例を絞り内容を深めていく形となりました。事例を深めると同時に、自分自身のこれまでの実践を理論化して言語として表現することの難しさを感じたり、各受講者のもつ視点の多様さに新らたな気づきを見出すことができたり等々、1つの事例を通じ自分自身の大きな糧になったことは間違いありません。

 各グループからの事例報告では、発達障害者への支援、高次脳機能障害者への支援、ひきこもり支援、地域移行、自立支援協議会での役割、PSWのバーンアウト、被災地での支援、PTSD、アルコール問題と多岐に渡り、PSWの職務の広さを改めて感じました。

 研修企画運営委員の鈴木詩子氏の講評において、事例検討はスーパービジョンであり、自己の成長を高め、我々の成長はより良い支援、実践、或いはソーシャルアクションにつながっていくのだというお話がありました。さらにバーンアウトにも有効であるというお話がありました。現在、ピアヘルパー、ピアカウンセラー、ピアサポーター等の当事者活動や当事者性の有効性が語られていますが、このような研修で同じ価値を持つPSWの仲間と語り合えることはそれこそピアな集まりではないでしょうか。仲間にエンパワメントされながら、専門性を高める機会となり、足元を振り返る機会となり、そして自分たちのメンタルヘルスを維持する機会として非常に有効であるということを私自身再認識することができました。

 また、1日目の研修終了後には懇親会が行われ全国津々浦々の多くのPSWが参加されていました。最初は社交的な挨拶からはじまって、ほんのりとお酒が入ってくると、徐々にテンションも高まり「P魂」がはじまります。「P魂」の使い方がこれでよいかわかりませんが、とにかくそれぞれの勤務先や立場は異なったとしても、同じPSWとして、同じ価値を持つもの同士が何十人も集まり日々の実践論について熱く語り合う、とにかく良かったです。現実の現場から少し離れ、価値を同じくする仲間たちに出会い、語り、日々の悶々とした気持ちも払しょくされた感じで気持ちがHOTになったことを覚えています。

 今回の更新研修及び懇親会では諸先輩方含め、新たな出会いも多くあり、顔の見える関係の中においてPSWの価値の共有をすることができたなど、テキストからは得られない多くの宝物を得ることができました。研修会へ参加された皆様、講師の皆様、事務局の皆様との出会いに感謝するとともに、今回学び磨いたPSWのこころ、そして自分のこころを大事にしながら、これからの日々の実務に向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。


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