報告

第7回基幹研修23&第3回オムニバス研修を受講して

第7回基幹研修23)」と「第3回オムニバス研修」をあいち福祉医療専門学校(愛知県名古屋市)にて開催しました。日程は、基幹研修2が2010年9月4日(土)、基幹研修3が2010年9月4日(土)、5日(日)、オムニバス研修が2010年9月5日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<基幹研修3
田村講師による講義1 竹中講師による講義2 全体会での各班発表 修了証書授与

・ 私が日々の実践で大事にしたいものとは・第7回基幹研修3の感想

久留米大学医学部付属病院 精神神経科(福岡県)/経験10年 新開貴夫

 2010年、9月4日・5日の2日間に渡って、社団法人日本精神保健福祉士協会主催の第7回基幹研修3(以下、研修)を受講・修了しました。認定証書を今眺めながら、いろいろなことを考えているところです。

 研修は、講義、演習、事例検討のそれぞれが充実しており、中身のあるものだったと感じています。参加者も明確な問題意識を持たれている方ばかりで、参加者同士での話だけでも収穫を実感できるものでした。限られた字数で、研修の内容と感想を要領よく述べるのは難しいので、しぼって感想を述べたいと思います。

 私にとって一番良かったのは、田村研修センター長による「精神保健福祉士の専門性3」の講義でした。講義の中で「みなさんが、それぞれの職場の日常業務において、常に大切にしていることは何ですか?」「それは職場が変わってもPSWである限り、不変ですか?」という問いかけがありました。「この問いこそ、私が求めていたものかもしれない」とさえ思い、とても惹きつけられました。10年間この仕事をしてくる中で、この問いかけに答えることができるものを、おぼろげではあるものの、しかし、着実に作ってきたと私自身では思っています。

 精神科病院に勤めた後、ニュージーランドで精神保健施策とそれに関わる当事者運動を学び、その後、地元で生活支援センターを作り、当事者職員と、もがきながら3障害の相談支援事業を作ってきました。退院促進事業、犯罪被害者支援センター、学校ソーシャルワーク、大学院入学を経て、現在の職場に来ました。いずれも葛藤だらけの毎日でした。被害者意識に支配された時期もありました。考えてみると、私が日々の実践で大事にしたいと思うのは、何十年も病院に入院していた患者さん、ハンセン病の元患者さん、水俣病の患者さん、虐待やDVで途方にくれた生徒やお母さんたちの思いと、そこから学んできたものです。「誤解なく学び、誤解なく伝える」のは難しいものですが、相談業務の中で、知ってしまった責任、関わってしまった責任を果たしていくのは、精神保健福祉士の有資格者にとっては、避けられないものです。私は、これまで出会ってきた人たちから教えられてきたものを、精神保健福祉士としての実践によって、誤解なく社会に伝えていきたいと願っています。そのための専門性を身につけたいと願っています。

 今回の研修で、より一層、その思いを強くしたところです。今回の研修に参加できて良かったと思います。ありがとうございました。

 最後に、研修に参加してから、生涯研修制度共通テキストの1巻、倫理綱領のページをよく見るように心がけようと、身近に置くようにしました。「倫理綱領をもっと身近に・日常の中に」という研修で教わったことを実践したいと思います。


<基幹研修2
齊藤講師による講義1 岩尾講師による講義3 演習 修了証書授与

・ 10年目の振り返り

刈谷病院(愛知県)/経験年数10年 高木紀子

 今回おそらくほとんどの参加者の方が「経験年数3年」といった中で、実は経験年数10年目になる立場で基幹研修2に参加をさせていただきました。まさに「今さら」といった立場だと思うのですが「たとえ経験をどれだけ積み重ねようと(そんなつもりになろうと?)自分の立ち位置、姿勢、見方、考え方を問い直す、こうした機会を持ち続けることは必要だ」というのが研修を終えての実感でした。

 講義を聞いている間、演習の間、これまで、あるいは現在自分が関わっているケースがぐるぐると思い返される一日でした。

 在宅生活の中での問題にたいして、あるいは入院時、退院に向けて他機関をからめてのカンファレンス、サービスの調整・・・自分では「やれている」と思ってきたこれまでの業務が本当の意味でやれていたのか?どれほどの時間をかけて患者さんの「声」を聴き、あるいは患者さんが「声」をあげたい、伝えたいと思える場を作れてきたのか?

 「これが問題を解決する方法だろう」と「自分」が考える青写真が、患者さんの思いよりもまず前に立ち、「こうすれば安心して生活が送れるから」と(実際には患者さん本人よりも自分を含めた周囲の安心のために)そこに誘導することに力を注いでいたのではないか?日々の業務の煩雑さを言い訳にして、その青写真を段取り良く現実のものにしていくことを問題解決、援助だと、自分で納得しようとしていなかったか?

 それを繰り返す中で患者さん自身が「こうしたいんだ」と声を出すことを、わがままを言うことをいつしかあきらめさせてきたのではないか?

 思い返すと自分のかかわりがそんなふうに振り返られ・・・胸が痛む思いがし・・・ただ同時に己の気持ちがじんわりとあたたかくなる気もしました。

 なによりも(自分が思うところの)安全安心を優先し、資源のないことを言い訳にし『仕方がないのだから』と半ばあきらめとともに決まった枠に患者さんの生活をはめこむことを繰り返すこと…そうすることが知らぬうちに自分自身の気持ちまでも疲弊させていたのではないかと思います。このままではいずれ気持ちの行き詰まりを感じ、極端な話ですが・・・この分野にかかわりを持ち続ける意欲がなくなっていったような、そんな気がします。

 時間がないから、資源がないから、仕方がないから、そんな「ない」ことに諦めてしまうことのないように・・・まず聴くこと、聴き続けて患者さんの『わがままな声』をもっと聴けるように、いつかそのわがままを一緒に現実にできることをあきらめてしまうことのないように。この先の自分がこの仕事を好きでいるために、そんな自分を肯定し続けることができるように。そうした思いを失うことのないように、またこうした機会に参加できればと思います。


<オムニバス研修>
佐々木講師の「成長する精神保健福祉士」 青木講師の
「精神障害者の暮らしと障害年金の意義」
小久保講師による
「援助職のメンタルヘルス」
修了証書授与

・ 第3回オムニバス研修に参加して

松山記念病院(愛媛県)/経験年数3年 徳丸景子

 “精神保健福祉士の魅力”と題された研修は、以下の3つのテーマで日頃の実践を振り返りながら精神保健福祉士の魅力について実感することのできる内容でした。

 「成長する精神保健福祉士〜根をもつこと」では、普段の業務の中ではなかなか立ち返ることのできない、精神保健福祉士の専門性や意義について考える機会となりました。精神保健福祉士という資格が出来た経緯や時代背景など、これまで語られてきたものを、私たちの世代も語り伝えていく必要性を感じました。また、「原点」とは普段の業務の中にあり、利用者としっかりと向き合い話をしていくことにあること、日々の関わりを丁寧に行い、関係を大切にすることで今後の専門職として成長や、存在する意義を再確認できるのではないかと感じました。

 「障害者の暮らしと障害年金の意義」は、業務の中で当然のように聞く障害年金について、意義や捉え方についての研修を受ける初めての機会となりました。当然の権利という考え方の一方で、当事者や家族の思いを十分に聞くことができ、受け止めることができているか、研修の中であった「当たり前の思いを受け止める感覚を持ち続けること」ということは、意識しなければ忘れていきそうな感覚であるということ、人と関係性を築いていく上では決して欠けてはいけない感覚であるということを強く認識しました。

 「援助職のメンタルヘルス」は、目が向けられにくい援助者自身のメンタルヘルスについて、講師の体験談やストレス尺度などを用いての研修でした。自分を知ることや、自分も社会で生きている一員であることを自覚すること、人に語ることなど、普段利用者や他人に伝えることであっても、自分自身が意識をして行うことができているか問い直す必要があると感じました。

 研修を通して、自らの原点を見つめなおすこと、実践を語り合うことで、精神保健福祉士の魅力を再認識し、新たな視点を持って実践に戻れると感じました。前日の基幹研修2や、その後の合同懇親会にも参加させていただき、同じように悩んで行き詰まり、それでも前進しようと頑張っている人たちがいることに、さらに力をもらいました。地域を越えても語り合えることは、魅力の一つだと感じました。本当にありがとうございました。


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