報告

第8回基幹研修23&第1回更新研修

「第8回基幹研修(23)」と「第1回更新研修」を札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)にて開催しました(開催案内)。日程は、基幹研修2が2011年7月2日(土)、基幹研修3および更新研修が2011年7月2日(土)、3日(日)でした。ここでは、それぞれの修了者から報告記事を掲載します。


<更新研修>
演習の様子 全体会での各班発表1 全体会での各班発表 修了証書授与

・ 振り返ってみて

福祉ホームB型・生活介護事業「悠々の里」(北海道) 佐野 孝文

 2011年7月2日〜3日に行われた「第1回更新研修」を受講した。他の分野の研修会などには参加しているが、本協会による研修は実に久し振りであった。参加動機は単純で受講者の数が非常に少ない・・と伝え聞いたからである。定員100名で実際の受講者が20数名と少し寂しい気もしたが、ほとんどの受講者と顔見知りで和やかな気持ちで受講できた。

 当日、受付で「生涯研修制度共通テキスト」を受け取り、目を通す。精神保健福祉士として、意識してきた知識・技術・価値などが解りやすくコンパクトにまとまったテキストであった。今後、対象者との関わりの中での振り返りに活用していきたいと思う。

 講義1は、「精神保健福祉士の専門性3」というテーマで精神保健福祉士の専門的視点・倫理綱領の具体的理解について、自己覚知・権利擁護・援助の原則など講師自身の経験に基づいた事例で、分かりやすく共感できる内容であった。講義2は、「精神保健福祉制度・政策論2」というテーマであった。社会福祉の歴史的変遷と社会保障・社会福祉の動向についての内容で、政策や制度・施策を学び活用していくことの大切さ。対象者の生活支援に有効な施策へと変えていくためのソーシャルアクションを展開していく視点。そして、常に新しい情報を得ることの必要性を再確認することができた。講義3では、「精神保健福祉士の実践論2」についてのテーマであった。講師が地域での実践活動を通して幅広い視野で当事者と関わっている姿が、目に浮かんでくるようで感銘を受けた内容であった。実践の中での権利擁護やプライバシー・社会資源の開拓、森を見て・林を見て・木を見るというようなソーシャルな視点など講師独特な視座から語られ印象的であった。

 演習3では、「ソーシャルな視点」「専門性」についてのテーマでグループに分かれ検討された。事例検討では、受講者全員が事例を持ち寄り4グループに分かれ1グループ7名で行われた。時間的問題もあり全員の事例を検討することが出来ずもったいない気持ちと、残念さが残った。しかし、皆ベテラン・・・。どの事例も逆転移も起こさず、当事者と向かい合っている姿勢が印象に残った。

 振り返ってみると、私がワーカーとして勤め始めた頃は、Y問題で揺れ動いていた時であった。毎週のように地域の先輩ワーカーの方々の集まりに参加させてもらい、さまざまな課題についての議論を拝聴していた。その中ではお互い励まし合い、支え合うピア・スーパービジョンを行い、新人ワーカーであった私は、しっかりスーパービジョンを受けていた。その結果、バーンアウトもせず今日に至る基礎を築かせて頂いたと感謝している。


<基幹研修3
三品講師による講義1 小栗講師による講義3 演習の様子 修了証書授与

・ 諸先輩方の熱き心と行動を裏打ちする理論・哲学に学ぶ

恵庭市障害者総合相談支援センター e-ふらっと(北海道) 相談支援専門員 相内 隆志

 好天に恵まれた7月2、3日の両日、社団法人日本精神保健福祉士協会生涯研修制度 第8回基幹研修23と、第1回更新研修が札幌コンベンションセンターで開催され、私は基幹研修3に参加させていただきました。

 講義1では「精神保健福祉士の専門性3」と題して、三品斉先生より「現在に至るまで法律、制度も含めた、環境は歴史的な変遷を経て変化し、それにより障害の重さが変わってくる」こと、精神保健は「街づくり」であり、「当事者から学んだことを社会化して社会に働きかけるために、問題意識を共有する仲間の輪をひろげることは大切」との話がありました。また「資源を地域の共有財産として活かしていくことはPSWの役割」とのお話をあり、空知地区の精神保健領域にとどまらない地域実践について伺うことができました。自己決定におけるかかわりや、アセスメントにかかわるエピソードを通じて、多職種の中でのPSWの立ち位置について自分の言葉で伝えられることの大切さを理解しました。

 講義2は齊藤晋治先生の「精神保健福祉制度・政策論2」では、最新の政策動向について資料が提供され、共通テキストと併せて学習しました。障害者自立支援法が成立した経過を例に挙げて、制度を活用しながら検証し、変えていくためには法制度の内容やその成立背景にある政策動向を理解する必要があることにふれ、障がい者制度改革推進会議等の報告にも目を通しておくことも大切との話がありました。個別支援が優先されがちでしたが、それと同じく重要なものと認識を改めました。

 講義3は小栗静雄先生より「精神保健福祉士の実践論3」のお話をいただきました。
 精神障がい者が「幸せになるため、法律・憲法違反をなくそう」と「病院と地域の二足わらじ」で、十勝地区で展開してきたソーシャルな実践についてお話を伺うことができました。PSWは社会の中を漂いながら、当事者や、病院、地域の橋渡しをしていくことが役割であることや、当事者のニーズから出発した社会資源づくりの実際について聞くことができました。こうした行動を起こす原動力は「情熱とPSWとして譲れない価値」と伺い、自分もそうありたいと思いました。
 情報は「当事者からの神聖な預かりもの」であり、ていねいに扱うこと。上司、同僚への報告は「本人がそばで聞いている前提」で行うことや、専門職として実践知、経験知の言語化や、失敗や成功までの積み重ねをきちんと評価していくことなど、すぐに活用できそうな取り組みについても紹介され、とても参考になりました。

 演習で私たちのグループは、「精神保健福祉士の専門性とは?」というテーマで意見交換を行い、「本人、院内の他職種や、地域ニーズの隙間を取り持ちながら、当事者に寄り添うことが専門性では?」という意見が出されました。

 事例検討では、実習指導の事例を通じて「PSWの専門性をどう伝えるか」について検討を行いました。「PSWは他職種との連携の中で当事者がその人らしく暮らしていくため、寄り添う立場にいる」ことや「組織の健全性のチェックを担う役割もあるのでは?」「組織の中で立ち位置を自分の言葉で伝えられるようにしたり、組織の中で悶々としていることも言語化して行くことが大切」という意見も出されていました。

 演習、事例検討のグループは、それぞれ現職で関わる分野は異なっていても、経験的に共感できることが多く、とても居心地がいいグループでした。今回基幹研修Vに一緒に参加した職場の同僚と「5年後の更新研修で今回と同じメンバーで再会できたら」と話しながら帰途につきました。

 諸先輩方の熱き心と、行動を裏打ちする、理論・哲学について学ぶことができ、PSWの価値を確認し、自らの業務への取り組みについて見直すきっかけを与えていただいたものとして感謝しています。
 研修を企画、運営に関わったスタッフの皆様、ありがとうございました。そして、参加された皆様、お疲れさまでした。

※障害表記につきまして、本ページでは、報告者の記載のとおりに表記しています。


<基幹研修2
開講式 鈴木講師による講義1 演習 修了証書授与

・ 第8回基幹研修2に参加して

社会医療法人 函館渡辺病院(北海道)/経験年数5年 古川 航介

 2011年7月2日に、北海道札幌市の札幌コンデンションセンターで開催した基幹研修Uに参加しました。講義の内容は、精神保健福祉士の専門性U、精神保健福祉士の実践論U、精神保健福祉制度・政策論を各90分。演習は「精神保健福祉士に必要な“ソーシャルな視点”とは?」「精神保健福祉士の専門性とは?」のどちらかを選んで、グループディスカッションを行うという内容でした。

 それぞれの講義では、先輩の精神保健福祉士(以下PSW)の方々が講師として、自分の経験を基に生涯研修テキストに合わせながら話が進んでいきました。PSWとしての視点や関わり方といった基本的なこと、今までの自分自身の振り返ることの重要さ、倫理綱領の具体的な理解といった話等を、わかりやすく講義をしてくれました。その結果、自分自身が今現在、PSWとして悩んでいる部分、躓いている部分を解決するまではいかないものの、心で引っかかっていた部分が少し取れるきっかけとなりました。また、今までの経験を振り返る機会が中々なく、自分のかかわり方について「これで良いのかな?」「間違っているのではないか」と常に不安でありましたが、講師の経験やお話を聞き、「あ〜今までのかかわり方やPSWの視点は間違えてなかったんだ」と少しホッとしました。それと同時に、自分自身の問題点に気づき、今後、より良いPSWになるために何が必要であるのかを知る機会となりました。

 演習は、私たちのグループでは課題について、結果的に絞って話をすることは出来ませんでした。研修の参加動機やそれぞれの地域でのPSWの役割、地域特有の問題点等の話をしていくうちに、課題であるソーシャルな視点とは?PSWの専門性とは?と両方とも関係する話につながっていきました。最終的には、「明日からまたPSWを頑張っていきましょう!!」という課題と少し違ったまとめで終えることになりました。しかし、演習の中ではそれぞれのPSWの悩みや問題点を話すことも多く、その度に受け入れて話を聞いてくれるため、とてもスッキリして研修を終えたのではないかと思います。

 最後に、講義や演習はもちろん大切ですが、同じPSWの仲間とのつながりが大切なことにも改めて気付く良い機会となったか思います。いろいろなPSWの方々からの話を聞いたり、情報交換、悩みを共有することで、「またPSWとして頑張っていこう」と前向きになれること事ができました。


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