「養成研修:第13回認定成年後見人養成研修(4日間・後半2日間)」
「課題別研修:第15回成年後見に関する研修」

2019年1月31日(木)から2月3日(日)の期間で、LMJ東京研修センター(東京都)を会場に標記研修を開催しました。ここでは、修了者からの報告記事を掲載します。

第13回認定成年後見人養成研修(2019年度1月31日(木)〜2月3日(日))

          
開講式  川井講師による講義6 毛塚講師による演習2  代表者による証書授与 

第13回認定成年後見人養成研修(4日間)に参加して

高知県支部/経験年数12年 中川 美彦

 私は一支援者として、これまでクライエントとの関わりにおいて、社会福祉士や司法書士、或いは法人後見として活動されておられる専門職後見人の方々と一緒に仕事をする機会が多くありました。成年後見というと本人の代理で意思決定を行うという、本人の主体性を否定するようなイメージがあると思います。しかしそのイメージと裏腹に、私が今まで仕事をご一緒させて頂いた専門職後見人の方々は、その殆どのケースにおいて、少なくとも本人に対し「誠実」であることを貫こうとし、時には精神分野の支援者と連携を図りつつ、過度な代理権行使とならないよう本人の意思を最大限に尊重するため、懸命に努力されていました。

 その一方で、精神分野の知識や経験並びにソーシャルワークに関する専門性を持たない他の専門職の方々においては、自身の専門領域のみではカバーしきれず、やむを得ず代理権の行使に至るなどのケースも実際に目にすることもありました。他の専門職後見人の方々も闘っておられるというのが現実なのだろうと思います。

 以前からのそういった関わりもあり、成年後見制度についてはずっと興味を持っていたこともあって、今回4日間の養成研修を受講させて頂くこととなったわけですが、実際に受講してみると、成年後見人の役割である、「財産管理」と「身上監護」について、現金通帳その他資産の一切の管理とか、契約行為の代理、入院時の同意など、今まで外から見ていて、ある程度理解していたつもりが、いざ研修の場で事例に沿って自分が後見の立場でどう関わるかをやってみたところ、どうしていいか全くわからなかったことにまず愕然としました。事例検討では、ついワーカーとしての視点で事例を見ていることに気づき、立場が違えばこうも導き出す考え方が違うのかと思った瞬間でした。

 他にも、ベストインタレスト、愚行権、代理権など重要なキーワードの中身を学ばせて頂くとともに、本質として一番重要である意思決定支援について、グループワークなどを通じて深く学ぶことが出来ました。本人の「選択と自己決定に至る過程」の中で、どう関わっていくことが出来るのかを常に考えていくこと、それが、精神保健福祉士が成年後見を担う価値であることがよく理解できた講義内容でした。

 4日間という養成研修は、長い様であっという間でした。グループワークを通じて新しい仲間も出来ました。
 今後は私自身も、一人の成年後見の担い手として新たな一歩を踏み出し、迷い悩む中での経験と新たな気づきを得ながら、実践知を一歩一歩積み重ねていきたいと思います。

第13回認定成年後見養成研修(後半2日間)を受講して

八千代地域生活支援センター/経験年数12年 恩田 信幸

 これまで精神保健福祉士として関わらせて頂いたケースをきっかけに、本研修に参加させて頂きました。
 あるケースでは、知人から呼ばれ内容を確認せず連帯保証人の印を押してしまった。8050問題に当てはまるあるケースでは、自分が動ける内にお墓の移動をしたい。あるケースでは、行政の担当者が市長申立を渋り、ケア会議を何度も重ねる。これまで不慣れであった成年後見制度や民法、家族法、相続法等の知識を増やしたいと思うようになり、昨年の課題別研修、今回の養成研修(後半2日間)の受講となりました。

 事前の課題として、Q&Aやハンドブックを参考に、事例のケースを専門職後見人として選任された場合、@受任から初回報告期限まで、A初回報告期限から定期報告期限までの間に、取り組むべき課題のレポート提出がありました。参考書等で調べて研修当日にグループワークの中で発表しましたが、選任後に取り組む事やどの様な視点で臨むかについて、具体的にイメージを持つことができ、今後後見事務を進めていく事になった場合の不安が軽減された様に感じました。

 また、後見事務を行う際のリスクマネジメントを、具体的な事例を通して検討出来たことや、社会福祉領域の改革や人権に関する世界的な動向を踏まえた意思決定支援のプロセスについて、事例を通して学ぶこと出来ました。

 さらにシンポジウムでは、後見活動を実際に行っている先輩から、受任から現在までの経過、被後見人や関係者との実際のやり取り、後見人としての葛藤や今後に向けた意気込み等を聞かせて頂き、大変刺激になりました。

 現在当センターでは、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業を、圏域連携コーディネーターを中心に進めており、地域生活拠点等の整備に関する議論も予定されています。すでに、介護保険では地域包括ケアシステムが第一層、第二層とシステム作りが進められている状況です。成年後見制度利用促進基本計画では、地域連携ネットワークの整備・運営の中核となる機関の必要性がうたわれております。制度や成り立ちが異なるとは言え、同じ地面に何層ものネットワークやシステムが新たに求められています。どのネットワークでも共通し、軸の一つになると思われるや「成年後見制度」や「意思決定支援」について、さらに理解を深めていきたいと感じました。


第15回成年後見に関する研修(2019年度1月31日(木)、2月1日(金))

PSW専門職としての成年後見制度の理解

SOMPOケア札幌澄川居宅介護支援(北海道)/経験年数9年 澤谷 直子

 本人の事理弁識能力を欠く情態の中で、人としての尊厳を重んじた自発的な気持ちを尊重した毎日を送れるように成年後見制度を利用したほうが良いと思われる事例に度々出会うことがあります。現在、私は高齢者分野のケアマネジャーの業務に従事しており、成年後見の制度は、高齢者の日常のケアマネジメント業務に追われているうちに、制度の手続きの煩雑さ等を苦慮しているうちに時間が経過してしまうという実情です。支援者としてのインセンティブが全く働いていないのです。今回、その反省点も踏まえて、成年後見制度の権利擁護の視点や知識の確認と、PSW専門職としての倫理が成年後見制度の中でどう生かされているのかを学びたく研修に参加させて頂きました。

 弁護士さんや司法書士さんの講義では、法律に纏わる内容がたいへん充実していました。財産法や公法と私法の知識の解説、加えて、不動産売買、貸し金、抵当権、借地借家関係、損害賠償にわたる事項についてケースを用いながらの講義でした。ひとつひとつの法律が成年後見にどのように位置づけられている事なのかを理解でき、ケースは実際の現場の中で生じている身近な問題が多かったように思います。成年後見制度を熟知するには、法律を学び、物事を法的に道筋をたてて、的確に判断するリーガルマインドの考え方が必要だと痛感しました。

 また、クローバーに登録され活躍されている諸先輩の講義より、実際の成年後見での活動の深い味わいのお話しを聞くことができました。成年後見人の身上配慮義務、意思尊重義務の鎮守の大切さ、改めて精神保健福祉士の倫理綱領を読み直して初心に立ち返る必要性があると感じました。意思決定の能力のない人のベストインタレストを叶うことは、現在の私にとっては、容易に実践はできないけれども、日頃の業務を振り返り、自分が支援しやすい方法を常に選択していないか振り返る契機ともなる貴重な研修の時間でした。事例研究でご一緒させて頂いた同じグループの地域も職種も職場も異なった方々とのグループワークを通して表出してきた意見のひとつひとつも、私としては大きな財産となり得ました。課題別研修の2日間の中で感じた事は、判断能力に課題がある人たちが自分らしく生きる権利を守るには、成年後見制度が幅広く利用され、ご自身の財産管理と身上監護を礎に支援を受けて、その人の権利を擁護する社会が当たり前になってほしいと願うばかりです。


※ご報告いただいた方のご所属名と経験年数は、研修受講時の情報で掲載しています。