報告

「課題別研修/第2回成年後見に関する研修」「認定成年後見人養成研修−第2回養成研修・第1回継続研修」を受講して

2009年12月3日(木)から6日(土)の4日間、サンシャインシティ・文化会館(東京都豊島区)にて、「課題別研修/第2回成年後見に関する研修」「養成研修/第2回認定成年後見人養成研修」「第1回認定成年後見人継続研修」を開催し、課題別研修28人、養成研修15人、継続研修29人の皆さんが修了されました。ここでは、各研修の様子につきまして、それぞれの修了者の方からの報告記事を掲載します。

         
養成・課題別研修・講義 会場の様子 養成・課題別研修演習 課題別研修・修了証書授与 養成研修3日目講義
         
養成研修3日目全体会 養成研修・更新研修演習 養成・更新研修全体会 養成研修・修了証書授与 更新研修・修了証書授与

・ 養成研修/新しい制度についてPSWとしての自分のスタンスを確認できた研修でした。

医療法人豊済会 サポートセンターる〜ぷ(大阪府) 気鮓晶子

 2009年12月3日〜6日「認定成年後見人養成研修」に参加しました。

 私は精神衛生法から精神保健福祉法に替わった年に、精神科病院の初めてのソーシャルワーカーとして入職しました。相談室〜生活訓練施設〜地域生活支援センターと仕事をするなかで、お金にまつわる相談・調整のなんと多かったことでしょうか!自分のひと月の入院費、日用品費、おこずかいがいくらかかるか?それがきちんと確保できているのか?その出所は?お金のやりくりは生活そのものです。生活訓練施設で利用者と共にお金の問題と格闘するなかで、多くの利用者が力をつけて街に移っていきました。ある人は、病気の波が出てお金を使いすぎても、やりくりで乗りきれるようになったとき、病の再発もなくなっていました。「お金」と「病気」と「生活」は切っても切れないものだということを実感しました。そしてなにより、お金の使い方にその人らしさがみごとに反映されるのです!金銭管理の支援があればもっと多くの人が地域で生活できる。願わくば、そのひとらしい生活ができるようにお金の使い方を一緒に考えることができれば!私にとって今回の研修は半ば「宿命」(おおげさかな?)のようでもありました。

 そんなわけで年も押し迫った師走の4日間、東京で研修を受けることになりました。のっけから「PSWがクライエントのお金を握ってしまうことのタブー」についてのお話。重たい内容でしたが「クライエントにとって現実に必要なことはPSWとして関わるべきではないか」との呼びかけにとても共感しました。また、弁護士、家庭裁判所調査官、社会福祉士等講師の方々が異口同音に「成年後見制度は実際に使ってみないとよくわからない」と言っておられましたが、講師の先生方のそれぞれの経験された具体的な話を聞くなかでそのことがよくわかりました(制度の運用面について、もうひとつよくわからないというのが今回研修に参加した動機のひとつでもありました)。

 二日目からは午後グループにわかれての演習がありました。我ながらびっくりしたのは講義で「ふんふんわかった」と聞いていたのに、実際に自分たちの頭で考えだすと、出てくる話が「後見人業務」というより「ケースワーク」になってしまった事でした。ワーカー集団の性(さが)でしょうか。みんな大いに戸惑いました。しかし、これはとても新鮮な体験でした(一緒に戸惑ってくださった講師の長谷川先生ありがとうございました)。

 4日間あっという間に終わってしまいましたが、今回何人かのPSWの講師の先生方が、「外野から制度批判をするのでは何も変わらない。PSWとして関わっていくことが大事ではないか。」と言っておられたことが私自身へのお土産になりました。私自身の日常の仕事内容も障害者自立支援法によって大きく変わってきましたが、PSWとしての価値観に基づいて柔軟に運用していく力をつけたいと思っています。


・ 課題別研修/成年後見制度に精神保健福祉士が携わるにあたり感じること

訪問看護ステーションACT−J(千葉県)/経験年数1年半 樺島沙織

 今回の研修は、講師に精神保健福祉士、社会福祉士、弁護士、家庭裁判所の調整官と様々な職種の方々から多彩な内容の講義を受けることができました。

 成年後見制度の利用の必要性において、財産の保護、生活・福祉サービスの手配だけでなく、親亡き後の財産管理が課題となっているケースが増えているというお話を伺い、大きな課題であることを実感しました。これから益々、成年後見制度の申し立てが増えていく中で、昨年の申立件数では、後見人が全体の8割以上を占め、保佐は1割、補助は1割弱という結果であり、保佐や新たに新設された補助が充分に活用されていない現状であることを知りました。これまで、自身で金銭の管理をしていなかった、自身で判断して物事を決めていく機会がなかった方々の判断能力をその時点で決めていくことは、その方々の可能性を奪ってしまうことに繋がりかねないと感じ、そのような中で、ご本人の自己決定を尊重していく精神保健福祉士の役割はとても大きいと考えます。ご本人の意思や出来るところや可能性に焦点をあてることで、充分に保佐や補助でも可能であるケースが増えていくのではないかと思いました。

 また、精神障害を持つ方の後見人となる場合に、判断能力の変化の幅が大きくあることもあるため、タイミングや関わりが難しいという弁護士の先生からの話からも、精神保健福祉士が担うことで、主治医に見立てを求めながらより細やかに状況を確認していけるのではないかと感じました。そのようなときには、弁護士+精神保健福祉士など、複数後見人の選任ができるということで、今後の活用が期待できると思います。

 沢山のことを学べる良い機会だったので、講師の方々への質問の時間を充分に確保して頂けるとより良かったと感じました。

 研修の中で講義を受けるだけでなく、事例を通したグループワークがあることもとてもよかったです。成年後見人の倫理に関する事例検討では、利益相反、医療行為などで精神保健福祉士であることと後見人であることの間での葛藤や立ち位置の違いがあると感じる中で、ご本人とどのように関わるかという話が繰り広げられ、他の方々の意見を伺えるのと同時に、自分自身の振り返りもできてとても勉強になりました。

今回学んだことを生かし、成年後見制度への理解を深めていきたいと思います。


・ 継続研修/後見人(継続)研修に参加しての思い

桜が丘病院(熊本県)/経験(20年)木村 良子

 2009年12月に開催された、「第1回成年後見人養成研修」は、何もわからないままの参加をしました。

 しかし1年が過ぎ、その情報や賠償責任保険を契約する時に、本当にこれから「後見人」を引き受けることになるのだと思ったら、社会的にも個人的にもその責任の重さを感じ、正直に言って研修の場から逃げ出したい気持ちになりました。

 講義では、講師の先生や先輩方の体験事例などを詳しく聞かせてもらいました。「後見人」の事故の事例も勉強しました。被後見人との間に生じるいろいろな事柄、しがらみ、現職としてのPSWの倫理観、人間としての暖かさなどをもって、どれだけ貢献できるのか、また単なるビジネスと捉え粛々と割り切り「財産管理」「交渉、契約」などをやっていくための努力と経験をつけることが重要だと思いました。

 また、「被後見人」や家族など取り巻く社会の中で、その基本的な「生活」や「安全で快適な老後」を守るような援助が出来るように自分自身への釘を刺していました。

 研修の最後では、グループで話し合い、それぞれの「後見人としての心構え」を1枚の絵にすることになりました。グループ全員で勉強の結果を、各人の「後見人」に対する意識をどのように表現すべきなのか、思いは大きく膨らんでいるのですが、各人の想像している「後見人」は社会の中のどの位置づけなのか、また思い悩んでしまい1枚の絵にするのは困難でした。

 「PSW」と「後見人」の大きな違いに気づいていても、その技法、手段などで、またもとの考え方(PSW)に戻ります。考え方を修正し「後見人」としての在り方に徹することが「被後見人」の社会生活を豊かにし、支えていけるのではないかとの結論に、やっと達しました。これらを話し合い1枚の絵に描きあげて、少しホッとして他のグループの絵を見ながら思いは、みんな同じなのだと感じました。

 クローバーの一員として、貢献するためには「民法」や「家庭裁判所」との連絡などさらに勉強することが目の前に控えています。精神保健福祉士の「後見人」受任への要望は、家族の間で言われていました。やっとスタートしたこれからは、関系者と共に「高齢者」や「しょうがい者」を支援できるよう、PSWとして頑張っていきたいと思います。


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