報告

平成23年度障害者総合福祉推進事業「精神症状等を有する認知症患者に係る退院支援パス等の地域連携の推進に関する調査事業」
課題別研修/認知症の人の「退院支援・地域連携パス」研修を受講して

課題別研修/認知症の人の「退院支援・地域連携パス」研修」は、2011年度に2回開催しました。各会場の修了者の方から報告記事をお寄せ頂きましたので、ご報告します。

■東京会場

3月2日(金)、3日(土)、日本交通協会 (東京都千代田区)において、第1回目の研修を開催し、95名の方が修了されました。

       
講義の様子 会場の様子 演習 代表者1名による修了証書授与

・ 病院も、地域も、思いは一つ。

スターツケアサービス株式会社小規模多機能きらら南行徳(千葉県)/経験年数9年 小森 藍子

 「認知症の人の『退院支援・地域連携パス』研修」東京会場に参加させていただきました。

 この研修に参加したいと思ったのは、私自身、精神科病院のソーシャルワーカーとしての経験がありながらも、地域の事業所で働いていると医療、特に病院は遠い存在に感じ、どのように連携したらいいのか迷いがあったからです。また、事業所で唯一の精神保健福祉士として、治療の現場のことを周りに伝えなければと思う場面でも、自信を持って伝えられないこともあり、医療の現場で働いている人と交流したいという思いもありました。

 「退院支援・地域連携パス」の必要性Tでは、斉藤先生より、認知症に関する精神医療や和光病院での取り組みにについて講義を受けました。中でも、生活援助の場面で「できることを手伝って能力を損なう心配より、できなくなったことに直面させて自尊心を損なうことを心配した方がよい」ということは、すぐにでも職場で広めたいと思いました。家庭や、介護の現場では、「自立支援」という言葉が一人歩きしてしまい、冷静に考えると少々厳しすぎる声かけが聞こえてくることもあります。その方の病気を知り、今どの部分に障害を受け、どんな気持ちで生活しているのか、常に考えながら最善の声かけや支援ができるのがプロだと再確認させていただきました。もう一度、正しいケアができているのか振り返りたいです。

 演習では、「退院支援・地域連携パス」を用いて、ある事例の方の退院支援についてグループで話し合いました。私のグループは、認知症の方が多く入院している病院のソーシャルワーカーさんがほとんどでした。話し合いを通じて感じたことは、介護保険の中でこれだけ医療連携が叫ばれているのに、未だに地域は病院を分かっていないし、病院は地域を分かっていないということでした。少し残念に思いながらも、分かっていないことが多いのであれば、とにかくコミュニケーションを取り情報交換をするだけでも、改善できることがたくさんあるはず、という思いが芽生えました。地域にいると「忙しそうだから、さらっと伝えなきゃ」とか「連絡ないし、待っていればいいか」ということをつい考えてしまいますが、ご本人を思う気持ちは病院も地域も同じです。地域からも積極的にコミュニケーションを取り、退院支援のケースを一つ一つ経験していくことで、退院促進の流れを作っていきたいと思いました。


■大阪会場

3月9日(土)、10日(日)、堺市民会館 (大阪府堺市)において、第2回の研修を開催。106名の方が修了されました。

       
講義の様子 演習の様子 ガイドブックの活用方法の説明 代表者1名による修了証書授与

・ 本人の望む生活をつなげるための支援

加賀こころの病院(石川県)/経験年数5年/澤田 知佳

 3月9日(金)、10日(土)に大阪府堺市にある堺市民会館で「認知症の人の『退院支援・地域連携パス』研修」を受講しました。

 当院でも、認知症の方の入院が長期にわたり、病院で最期を迎えることも少なくない現状があります。介護保険施設等の受け入れ状況が整わないことや家族が自宅でみていくことの大変さもあり、入院されている認知症の方の退院後の望む暮らしに向けて早い段階から取り組むことがなかなかできていませんでした。入院することで今までの暮らしや関係が途切れてしまうことや院内でもなかなか入院治療の目標を共有することができておらず、地域や院内での連携やチーム作りに課題を感じていました。

研修では、個別のアセスメントを基にした治療・ケアが必要であることや、本人の世界を理解し本人の視点から生活を支援していくことが大切だということを学びました。入院はご本人の生活の一部分であり、それまでの生活や退院した後の生活とつながる支援を行っていくことが必要だということを改めて考えることができました。

  生活の状況や本人・家族の困っていることなどの情報をきちんと整理し、入院の目的を明確にすることがまず入院治療には必要だということも感じました。目的を明確にせずに入院すると、病棟内での、職員が大変だと感じる本人の行動に対しての治療・ケアになってしまいがちです。そうなると本人の気持ちや今までの生活での困ったことが見えなくなると思います。

  家族の大変さや病院・施設の都合でなく、本人がどのように暮らしたいかということは、本人主体や生活者を支援するという視点を持つPSWが特に大切にしないといけないことだと思います。連携パスでは「本人の気持ち」の確認が毎回できるようになっていて、本人不在の退院調整にならない支援を考えながら、本人にとって大切なことを他職種とも共有していけるのではないかと思いました。

 途切れのない支援のためには院内や地域の協力がとても重要です。そのために連携パスの活用を通して、チームで認知症の方の望む生活に向けて支援を考えていくことが必要であり、まずは、地域・院内にも連携パスのことを知ってもらうこともこれからの課題だと思います。

 連携パスはツールであり、大切なことは本人の望む生活へ向けてチームで継続した支援を行っていくことです。かかわりの中でその人への理解を深めながら支援を行っていきたいと思います。(2012年3月12日)


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