報告

課題別研修/精神保健福祉士の専門性〜業務指針の意義と活用を考える〜を受講して

2010年8月29日(日)、目白大学(東京都新宿区)にて、「精神保健福祉士の専門性〜業務指針の意義と活用を考える〜」を開催し、57人の方が修了されました。ここでは、修了者の中からお二人にに報告記事をお寄せいただきました。

会場の様子 講義1を話す西澤講師 自由討議の様子 修了証書の授与

・ 精神保健福祉士の専門性〜業務指針の意義と活用を考える〜に参加して

鈴木神経科病院(千葉県)/経験年数6年 飯ヶ谷徹平

 2010年8月29日、残暑厳しい中「精神保健福祉士の専門性〜業務指針の意義と活用を考える〜」に参加してきました。経験年数は6年とまだまだ経験不足、病院の相談室と同法人のグループホームを兼務しながら近頃疲弊気味、今研修に参加し毎日の業務に何か生かし、振り返りたいと思い参加を決めました。

 会場について参加者名簿を見ると、今まで参加した研修で講師をされていた先生やどこかで名前を耳にしたことのある大先輩の名前が沢山、これは濃い研修になるなと身が引き締まる思いでした。しかしながら私は業務指針も流し読んだ程度、研修中はついていくのに必死でした。

 さて、研修の内容は「精神保健福祉士の理念〜倫理綱領を読み解く」「精神保健福祉士の業務とは〜統計調査からの考察」「精神保健福祉士の業務指針〜作成の経過と課題」「各分野における業務指針(1)医療機関(2)地域生活支援(3)行政機関」と4部構成で最後に自由討議・意見交換が入るという内容であり、とても盛り沢山の内容でした。1日を通しての講義の中で「業務指針は言い換えれば行動綱領にあたるものである」「実践の手引きとしての有効性を持つ」「専門性の到達点」「迷ったときの判断ポイント」等の話があり、今まであまり倫理綱領を見ていなかったことや業務指針を熟読してこなかった事を反省し、今後の業務の中で迷子になった際にはぜひ活用していきたいと思いました。また、最後の自由討議・意見交換の中で、「葛藤やジレンマを抱えて現在各現場で働く精神保健福祉士のための業務指針であってほしい」「業務指針は理想型だが現実的ではない」「絵に描いた餅になる危険性がある」等の白熱した意見交換がなされ、今後今研修の意見やアンケートを踏まえ第2版が作成されることに大きな期待を抱いています。 

 最後になりますが、素晴らしい講義をしていただいた講師の方々、「精神保健福祉士業務指針」作成委員会・提案委員会の方々、そして今回の研修を企画していただき、報告掲載の機会をくださった日本精神保健福祉士協会事務局の方々に感謝いたします。ありがとうございました。


・ 精神保健福祉士の業務を考える

大阪人間科学大学 富澤 宏輔

 8月最後の日曜日。厳しい今年の暑さも全くその収まりをみせないなか、私たちの業務を考えるにふさわしい研修に参加することができました。

 私が本研修に参加して最もよかったと感じた点は、私たちPSWの「業務」について一貫して考えることができたことです。研修最初の講義では、倫理綱領を読み解くというサブタイトルにもあるように、専門性を具現化する倫理綱領と専門職としての具体的実践を示した業務指針の位置づけを考えることができました。業務指針を切り口にして、倫理綱領についても、時代、実践に即したものが検討されるべきではないかと感じました。次の講義では、協会が今まで実施した統計調査の結果から「業務」を考えました。過去の業務統計調査の目的や意義を知り、私たちPSWの業務実態を明らかにすることで現在のPSWの立ち位置があること、実践領域の拡大にともないPSWの配置が促進され、そもそもPSWが何者であるかを示すことが重要であると感じました。PSWとしての普遍的かつ固有の業務を示し、業務指針を作成することの意義を学ぶことができました。

 昼からの業務指針作成の経過と課題の講義からは、私たちがこの業務指針を読むうえでの留意点があると感じました。まず、「ガイドライン」であって「マニュアル」ではないという点です。業務指針は、業務の実態から導き出された専門性の到達点であるとともに、専門職種として目指されるべき目標と方途を示すものとあり、現実と理念との乖離、専門性の到達点と自分の力量との乖離が前提となって示されています。つまり、PSWの業務の一つの道筋を示したものではないかととらえることができます。また、今回示されたものが第1版とされていることで、今後構成員の手でさらにバージョンアップしていくべきものであるという点です。第1版の作成にあたりまとめられた「精神保健福祉士の業務特性に関する整理」(p.20)をみると、倫理綱領を基盤とした整理がなされている。今後それぞれの領域の業務指針の作成が進むことを考えると、根底にある共通基盤としての倫理綱領の重要性が増すと思われます。これらとの整合性を図り、あり方を検討していくことも必要になると考えます。

 最後に、本研修で私が重視した点であり、危機感を感じた点について述べておきたいと思います。それは、「用語の定義と解説」についての部分です。作成委員会でも今後早急に行うこととして挙げています。同職種間において用語の共通理解が得られないことは、職域拡大が進む現状において、また対人援助を行う職種として大きな問題です。私たちが共通して掲げる業務指針や業務分類を意義あるものとして活用していく今だからこそ、議論を活発にしていくべきであると感じました。


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