報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2010〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2010年9月25日(土)、26日(日)、昭和女子大学(東京都世田谷区)にて、「ソーシャルワーク研修2010」を開催しました。ここでは、4つのテーマの各修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 相談面接技法を学ぶ〜アルコール依存症へのかかわりを中心に

藤田講師による講義 小関講師による講義2 岡田講師による演習 修了証書の授与

クライエントの“気付き”を促す面接技術

芙蓉会病院(青森県)/経験年数3年 四ッ谷 創史

 本州最北端、豪雪地帯の青森県の中でも、最も雪の多い八甲田山の麓に私の勤務する病院は位置しています。相談に訪れるクライエントは、土地柄もあってか、押しなべて口数が少ない方が多い印象です。

 近頃、私も経験年数を重ねていくのに伴って、アルコール問題を抱える人の家族との関わりや受診相談を受ける機会が増えつつあります。普段は口下手な人が、意を決して相談に訪れたのにもかかわらず、ついつい業務的な対応になってしまったり、次回の相談へと繋がる動機付けがうまくできなかったりと、日々の面接場面で、支援者として葛藤が生じることも少なくありません。

 普段から面接技法をぼんやりと感じながらも、それを意図的に行おうとすると、途端にぎこちなくなってしまい、なかなか実践できずにいました。日々の面接場面での悩みや葛藤を少しでも解消させようと、今回このソーシャルワーク研修への参加を決心しました。

 研修では、相談面接技法、グループの作り方と進め方、家族との相談場面等について学びました。“面接者が面接の舵をとる”ために、相談面接技法を意図的に行う必要があることなど、普段の実践で、漠然と行っていることに私たち支援者が気付き、意識することが専門性を発揮することなのだと実感できました。支援者が“気付く”ことにより、クライエントが自ら問題の解決に踏み出すための“気付き”を促すことになるのだと思います。講義では、次のようなお話がありました。

 …家族がアルコール依存症から回復していく過程を通して、様々な問題と向き合い、それらの解決を図ることで「病気になって良かった」と気付く家族がいること、そのために、専門職の立場から、“回復への希望”を伝え続ける姿勢を示すこと…

 アルコール依存症の治療に関わるソーシャルワーカーとして希望がもてた、とても惹きつけられる内容でした。

 今回の研修に参加し、他の地域で活躍する精神保健福祉士とともに、基本に立ちかえって、実践を振り返り、日頃の自分の取り組みに対するスーパーバイズを受けることができたように思います。研修で学んだソーシャルワークの技術を意識的に日々の実践の中に取り入れていくことこそ、精神保健福祉士としての専門性なのだと感じました。改めて精神保健福祉士の魅力を感じることができ、同じく研修に参加された方々とともに、とても有意義な時間を過ごせたことを嬉しく思います。


・ テーマ2 就業支援にかかわる精神保健福祉士

倉知講師による講義1 ロールプレイ 大島講師による演習 修了証書の授与

就労支援に携わる精神保健福祉士の役割について

千葉県立障害者高等技術専門校(千葉県)/経験年数9年 中村 桂子

 私は今年度4月より障害者高等技術専門校に異動し、障害者の職業訓練の現場に携わっていますが、これまで精神科単科の病院や保健所での法施行の緊急対応が多かったため、就労支援を専門的に行う事には戸惑いがありました。

 本校には数年前から看護師が在籍し、昨年一年間は保健師が勤務していましたが、精神保健福祉士の配属は初めてです。専門校における精神保健福祉士の役割や業務について、どのような事が期待されているのか分からないまま、無我夢中でこの半年間が過ぎました。そのため今回の研修を受けるに当たり、就労支援の視点や専門校における精神保健福祉士の役割について、広い視野から見直す機会になればと考え、受講しました。

 今回の研修で職場開拓の企業訪問場面を想定したロールプレイに参加しました。そこで、相手の立場を踏まえて、分かりやすい説明をすることの難しさを改めて実感しました。これまで病棟やデイケアのメンバーとプログラムで一緒に活動し、また面談を通じて、どのようなことが苦手であり、不安を感じているのかといった精神障害の特性について理解していたつもりでした。しかし、ロールプレイではあれもこれも伝えようとしてしまい、言葉がうまく続かず、企業のニーズや懸念を踏まえ、利用者の個別性を理解していただけるような説明ができませんでした。

 聞き手に分かる言葉で説明をすることが難しく、専門用語をかみ砕いて説明することの大切さを実感しました。受け手側の不安を少なくするためには、支援する側がなお一層の理解を深め、相手が聞きたいポイントを踏まえた適切な説明ができるようになることが重要であると感じました。

 専門校の精神保健福祉士の役割を考えた場合、企業の方だけでなく、精神障害のある方に対応する職員に対しても、障害特性の理解を深めるという点で同様であると感じました。訓練指導をする指導員に精神障害とはどのような障害であるかを適切に伝えることで、その障害特性を踏まえた訓練に繋がり、個人の特性を活かした就労の機会が広がると思われます。今後の就労支援に携わる精神保健福祉士として、障害特性の理解が深まるよう、内外に対し適切な説明ができるよう心掛けていきたいと思います。また、支援者の一人としてどんなことができるのか、日頃の業務を見直し、関係者が訓練場面の情報を共有しながら就労支援に向けた環境が強化されるよう取り組んでいきたいと思います。

 今回、研修に参加されている方の自己紹介を聞き、就労支援機関が多種多様であり、役割と線引きの難しさや連携の重要性を改めて感じました。そして、「就労支援に携わる精神保健福祉士は現場のあちこちに居るんだ」と思い、日々の業務に励もうというパワーをいただき、心を新たにした研修でした。このような機会を与えていただいた皆さまに感謝いたします。


・ テーマ3 認知症支援にかかわる精神保健福祉士

荒田講師による講義 高村講師による講義 岩尾講師による講義 修了証書の授与

ソーシャルワークの原点にかえる研修

順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター(東京都)/経験年数7年 久田 由起

 私の所属する順天堂東京江東高齢者医療センターは、産科、小児科以外の一般病棟219床と、認知症疾患治療病棟129床(うち身体合併症に対する治療体制86床)を有する、急性期医療を行う病院です。現在私は認知症疾患治療病棟を担当しており、認知症高齢者に対する理解を深め、またこれまでの自分の業務を振り返るため、2010年9月25日(土)、26日(日)の2日間、「ソーシャルワーク2010 テーマ3 認知症支援にかかわる精神保健福祉士」を受講しました。

 1日目は、「認知症高齢者のソーシャルワーク」「医療機関におけるソーシャルワーク」「認知症高齢者の理解と生活の捉え方T」についての講義でした。二日目は、「認知症高齢者の理解と生活の捉え方U」、「認知症高齢者の地域生活支援と家族の支援」の講義と、グループにわかれて行うテーマ別演習がありました。演習では、「これまで認知症の方をどのように理解していたか、また関わりをどのように捉えていたか」「自分の得意とする支援」「ソーシャルワーカーの大切にすべき立ち位置」について、今回の講義を通して、またそれぞれの所属機関の現状を踏まえて、話し合いました。

 私が印象に残っている講義は「医療機関におけるソーシャルワーク実践の実際」についてで、現場で働く柏木先生から、認知症疾患医療センターの役割と課題、認知症疾患治療病棟におけるPSWの役割、若年性認知症支援の現実と課題、の3つのテーマでした。精神保健福祉士の支援内容について、制度利用や、窓口が一本化されていない行政機関との連携の重要性等について学び、診療報酬や社会的入院等のジレンマはありますが、認知症疾患治療病棟における精神保健福祉士の役割を再確認することができました。また、「認知症高齢者の理解と生活の捉え方1」では、認知症の理解と認知症高齢者の方のメッセージや行動にどんな意味があるかについて演習も交えて学びました。認知症の方に対して普段立ちどまってゆっくり考える機会があまりなかったので、良い機会となりました。「認知症高齢者の地域生活支援と家族の支援」では、地域社会で認知症高齢者の生活支援の実際について、岩尾貢先生よりお話を聞くことができました。事例で紹介された認知症高齢者の方や地域の方々の様子がとても生き生きとしていたのが印象的で、認知症高齢者は必ずしも援助の対象ではなく、地域の人との相互関係の中で共に支えあって生きているのだと感じました。

 今回の研修を受講して、今後は、できる限り患者さんとの時間をつくり、チーム医療の中で、患者さん、御家族との情報共有に努めていきたいと思いました。また、ソーシャルワーカーとして患者さんの地域生活移行を支援する視点を忘れてはならないと感じました。

 受講者の方々は全国から参加されており、デイケアやグループホーム、病棟勤務と、業務の違いはありましたが、演習を通じて、それぞれの仕事上での悩みを分かちあったり、認知症の方に対する熱い考えを知ることができ、とても励みになり、勇気づけられました。


・ テーマ4 オムニバス研修〜精神保健福祉士の魅力〜

開講式 会場の様子 シンポジウム 修了証書の授与

精神保健福祉士としての意識をもって社会に参加する

神奈川県 大橋 佳子

感想

 この研修の申し込みをした時、課題をみて経験年数が浅い会員を対象にして行われると思っていましたが、学生の方々が多いのには驚きました。

 私もつい最近まで勤労学生?でしたが、その時はこのようなセミナーがあるのは知りませんでしたし、目の前のレポートとスクーリングをこなすのが精一杯でした。まずは、卒業して資格をとるというのが私の目先の目標でした。

 今年、国家資格に合格しましたが、一般企業に引き続き派遣社員として勤めており、ともすれば大学や実習で学んだ事をはじいた感情で行動する日々を送ってしまいがちです。

 そのため、このような講習やセミナーに参加することは、私が日々すごしている日常に疑問や反省をつきつけてくれる意味でも非常に意味があると思っています。

 今回は午前中に「医療機関で働くPSW」「社会復帰施設で働くPSW」の方々の話を聞き、午後からはシンポジウムで「産業分野で働くPSW」「精神科病院相談室で働くPSW」を受講しました。

この中で私は興味をひかれたのは「産業分野で働くPSW」でしたが、講師の方々それぞれの職歴や生き方を垣間見る事ができました。そして、何より私が感じた事は皆さんに共通しているPOWERです。

 今、やるべきことをやり、葛藤やジレンマを抱えながらも明日につなげるという。私自身もPOWERを取り込みながら今日を過ごしていきたいと思いました。

研修を通じて感じた精神保健福祉の課題

 日本では、精神保健福祉の歴史自体がまだ新しく、障害者として位置づけられたのも最近だというのも認識しています。行政も政策に本腰をいれたのは知的・身体に比べて非常に遅くこの10年でやっと他の障害者に近づけるようになり、病院から地域社会への流れができてきつつあるように思われます。

 唯、人々の精神障害に対する認知度はまだまだ低いのが現実です。

 その一方で不登校やひきこもり、社会にでて、1年も経たないうちにうつ病や神経症になる人も増えています。精神疾患は誰でも発症する可能性がありますし、周りの環境により症状が改善するものだと思います。精神障害者に関わる人たちだけでなく、全ての人がその事を理解し、行動する事がとても大切だと思います。

 最後に事務局の方々、講師の方々、私たちがリラックスできるような雰囲気を作って頂きありがとうごじました。またお会い出来ることを楽しみにしております。


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