報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2015〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2015年10月31日(土)、11月1日(日)、タイム24(東京都江東区)にて、「ソーシャルワーク研修2015」を開催しました。ここでは、ご寄稿いただいた修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 理想的な相談支援(せいかつしえん)体制を追求する〜相談支援(せいかつしえん)とは何なのか?〜

       
シンポジウムの様子 演習の様子 対談の様子 代表者による修了証書授与

■「私は何をすべきか?」を仲間と考える研修

曽我病院(神奈川県)/経験年数7年 小澤 佐織

 私は精神科病院で仕事をしています。患者さんに対し「精神保健福祉士」として支援が出来ているのか、専門性は何か、と年々迷いが強くなってきました。ソーシャルワーク研修に参加するのは今回で3回目です。専門性に真正面から向き合い、「私は何をすべきか」を考える機会として、職場の同僚とソーシャルワーク研修に参加させて頂いています。

 地域のサービス・支援者が少ない中、これまで私は病院内で他職種と行う支援に目が行きがちでした。また、患者さんの病状を中心に支援を考えがちな自分に憤りを感じていました。
 今回の研修で、医学モデル視点の支援ではなく本人中心の支援を実践するには、精神保健福祉士個人の感覚の支援にならない様に地域を含めた支援の仕組みづくりと、継続させる大切さを学びました。そのため、少ない社会資源の中、まずは病院も地域も協同で支援を積み重ねることで、お互いの機関の理解と連携を生み出すものと感じました。
 しかし、地域を含めた支援の仕組みづくりの重要性に気づいても、実際どこから手を付けたら良いのか、どの様に構築されていくものかなかなかイメージができません。
 患者さんの退院に対する希望と不安から考える退院支援として、病院内と地域で生じる課題解決に向けた声の上げ方、他機関・行政の巻き込み方、社会資源のつくり方を岩上先生の講義とロールプレイを目の前で見ることにより、イメージが具体化され非常に勉強になりました。

 今回の研修で、先生方の医療と地域を繋いできた取り組みを伺え、地域・課題は異なっても同じ思いで参加した方とのグループワークで、日々の実践や悩みから生み出された新たな課題を共有することも出来ました。研修を通し、地域の課題は「精神保健福祉士としての私の課題」と考えを改める機会になりました。
 また、職場の同僚と研修に参加したことで、自身の地域・職場で私たちは何をすべきか課題をより体系化させることができ、一緒に取り組めればと思いました。私は課題を取り組むことに対し、勇気や覚悟も必要であると感じます。そのため、全国にも身近にも「仲間」がいることを非常に心強く思います。今後は職場や職種に限らず、「仲間」を広げることが今回の研修で考えた私の課題です。

 学ぶことを楽しく感じ「これからも頑張ろう」と思え、課題を取り組む決意と可能性を見出す2日間の研修でした。参加させて頂きありがとうございました。


・ テーマ2 退院後生活環境相談員を知ろう!!〜役割を知る、大切にすることは?〜

       
講義2担当の中村講師 演習の様子 グループ発表の様子 代表者による修了証書授与

■研修に参加して

医療法人芳純会潮岬病院(和歌山県)/経験年数5年 山下 智也

 私は、精神科病院で勤務しており、現に退院後生活環境相談員を担っているため、今回の研修内容は、非常に興味深く、他病院の取り組みを知り、日頃の業務を改めて見直し改善できるのではないかとの思いから参加しました。

 まず門屋先生からは、精神保健福祉医療の歴史や施策の移り変わり、精神科医療の課題等の講義がありました。精神保健福祉士は今、何に取り組むべきかを改めて私なりにも考え直すことができました。地域移行というけれど、根幹は精神科病院経営の問題もからみ、そこを改善しなければ、なかなか進まないという現実論も言われていて、現場で働くPSWとして毎日そのジレンマに悩んでいる自分がいたので非常に深く考え、それを改善するためには、どのような声をあげていけばよいのか改めて考えることができた内容であったと思います。

 退院後生活環境相談員の役割や相談支援専門員の役割についての講義では、相談員や専門員ついて、表やガイドラインを用いて分かりやすく整理して頂き、医療と福祉をつなげる足がかりとなったように感じました。

 シンポジウムでは、病院PSWの立場と地域の相談事業者の立場から発言がありました。体制は整っているのになぜ動かないのかという話題から始まり、病院内の他職種連携の具体的な方法や地域資源の円滑な利用方法などの話がありました。現場で色々と実践できる内容ばかりだったように思います。ただ、病院の方針や地域性もあるのか、なかなか思うように進まない現実もあり、もどかしく思うところです。

 病院で勤務していて気づかなくなっていた「病院スタッフに本音を言えない患者、患者はスタッフに非常に気を使っている」との指摘には、自分の業務を見つめ直したとき反省しなければいけない面が多いです。法律遵守や連携をする事に目を奪われ、最近、患者様とゆっくり話ししてないなあ、なんて感じました。

 グループワークでは、病院職員だけのグループだったこともあり、退院後生活環境相談員の取り組みを中心に活発な意見がかわされました。実務的な面で、ふとした工夫など本当に多くのことを学べました。患者本位といいつつ、説明をしてレールを敷き、説得を何度も繰り返して失敗のないように周りを固めて支援しているのが一連の流れのような気がします。ただ、安心して失敗できる環境をつくること、多様性を持ちながら患者や病院と上手く付き合うことが必要であるとの再確認ができました。

 最後に、日々の業務の中で、色々なことはあるけれども、患者さんの真の思いに耳を傾け、実現するために思考錯誤して、行き詰ったら周りにも助けを求め、しなやかに柔軟性を持って支援にあたっていきたいと改めて感じた研修でした。


・ テーマ3 支援の姿勢を学ぼう〜かかわりの第一歩、面接と記録のスキルを学ぶ〜

       
講義1担当の渡邉講師 講義2担当の鈴木講師 演習の様子 代表者への修了証書授与

■支援の姿勢を見詰め直す良い機会に

ハートランドしぎさん(奈良県)/経験年数6年 安居 幸栄

【応募動機】
 私に今年度春より社会人1年目の後輩が出来ました。私は後輩指導の経験がほとんど無い上に、これまで一人職場で誰かに指導を受ける機会もなく、結果我流でスキルを身に着け今日に至っています。「これでは後輩に対してきちんとした指導が出来ないな」と思い、支援の姿勢を一から学ぼうとこの研修に応募しました。

【研修で得たもの】
 講義1が始まりました。「相談支援の基本姿勢」です。タイトル通り基本的な内容でしたので特に目新しいこともなく、「この内容であれば自分がこれまで行って来た支援のやり方で大丈夫だ。だから後輩にもこれまでの自分のやり方で指導すれば十分だ」と軽率にもその時私はそう思いました。

 続く演習1で、受講者同士でペアを組み、一方が一生懸命自己紹介をし、もう一方が徹底して耳を傾けない、うなずかない、興味を示さないという演習を行いました。僅か1分のことでしたが、話し手側の私は、話せば話すほど不安が高まり、大げさではなく相手に言葉が届かないことがこれ程までに絶望感を心に刻み込むものかと肌で感じる体験をしました。この演習で、講義1後の「これまでの自分の支援の姿勢で大丈夫、十分だ」という思いに少し揺らぎが生じたのでした。

 しかし、午前の講義1と演習1で気持ちの引き締めが図れ、初心に帰り講義2を受けることが出来たため、今度こそは支援の姿勢をしっかりと理解し身に着けたつもりでいたのですが、その後の演習2で途方もなく過信していた自分に気が付くことになったのです。大枠だけが設定された相談者役と10分間の模擬面接を行うというものでした。ネグレクトの母親である相談者に対して、地域での話し合いの結果を伝えるという面接場面です。私は、この母親である相談者の気持ちに寄り添うことが全く出来ませんでした。「子どもの面倒を見ないダメな母親を何とか説得して、傷ついている子どもを救わないといけない」とう使命感に駆られ相談者に接してしまいました。「相談者も傷ついている」ということに気が付くことなく対立したまま時間切れで面接を終えたのです。

 今回の研修を終えて私は、これまで自分はきちんと支援の姿勢を保ち面接が出来ているものと慢心していたことに気が付きました。相手がどの様な立場であったとしても目の前にいる相談者に寄り添うことが支援の基本姿勢であり、最も重要であることを実感することが出来ました。そして、そのことに無自覚であれば、知らず知らずの内に相談者を傷つけ、辛い思いをさせているかもしれないことを実感することが出来ました。これまで無自覚に行っていた自分自身の支援の姿勢をきちんと見詰め直す良い機会になりました。

【お礼】
 この研修に参加させていただいて本当に良かったと思います。自分自身の過信・慢心に気が付き、基礎を十分に身に着けることがなぜ重要であるかを学ぶことができました。
 また、研修終了後、この研修が講師の渡邉俊一先生ならびに鈴木詩子先生によって綿密に計算され、支援の姿勢の重要性を実感・体感できる様に講義と演習を組立てておられることを耳にし、経験年数を気にせずどなたでも得るものがある研修になっているということを知りました。本当にすばらしい研修をありがとうございました。


・ テーマ4 災害時、平常時に精神保健福祉士ができることは?〜災害支援ガイドライン改訂を踏まえて〜

       
演習1担当の島津屋講師 演習の様子 グループ発表の様子 代表者への修了証書授与

■災害に備えて

医療法人社団 つくば健仁会 とよさと病院 (茨城県) /経験年数4年 吉葉 麻菜美

 2011年3月。東北地域と離れてはいない関東で、大きな地震の揺れを味わいました。それなのに、月日が流れれば自身の記憶から薄れてゆく。その事実に悲しい想いになりました。
 自分に何が出来るのか、どうしたら良いのか様々な迷いを抱えている最中、今回の研修を受け、災害時、そして平常時に精神保健福祉士として出来ることは何か、考えました。また、実際に支援に携わった方々のお話を聞き、一人で考え、悩んでいたことに対することへの理解が深まりました。

 午前中の講義では、PSWの専門性を押し付けるばかりにならないよう、被災者が自身の状況を理解し、認め、何をしたら良いのか考えることができるように、「待つ」ことも支援の一つであることに気が付きました。自分の置かれている状況を把握したうえで出来ること、自分が去っても支障のないようにするにはどうしたら良いのか考え実践することの大切さを理解しました。

 そして、実際に支援に携わった方々のお話を聞き、被災地に赴いた時には、自分が考えている以上にストレスがかかっているということを知りました。経験したことのない環境の中で、二次受傷者にならないよう、自分自身の些細な変化に気づき、その都度ケアすることができれば、大事にならないこと、そして地域の復興が遅れてしまうことにならないように、平常時から自身のケアを行い、最大限の力を発揮できる状態でいることの重要性に気づきました。また、一人でケアをするのは限界がありますし、一人の考えでは支援の幅も狭まります。そこで、共感し合える仲間をつくり、話をすること、PSWの仲間同士、心の交流が大切であると思いました。

 午後の演習では、勤務先周辺の地図を書き、大地震が発生した時にソーシャルワーカーとして自分の家族、職場、利用者に何ができるのか具体的にイメージすることにより、いかに普段は何も考えずに生活しているのかを痛感しました。勤務先での役割のみならず、地域の支援者として求められている役割を認識し、地域との協力体制を普段から築いていくことが大切だと理解しました。
 これらの学びをこれからの災害支援にどのように役立たせていくかが、今後の私自身の課題です。

 最後になりましたが、協会の皆様には台風18号等による大雨等被災地支援に係る募金のご協力を頂きまして、ありがとうございました。この場をお借りして、御礼申し上げます。


・ テーマ5 PSWの成長を支える力〜スーパービジョンへのお誘い〜

       
会場の様子 シンポジスト 模擬SVの様子 代表者への修了証書授与

■スーパービジョンに誘われて

大泉病院(東京都)/経験年数13年 田保 圭一

 皆さんはスーパービジョンって、受けたことあります?私はありません。それどころか「スーパービジョン」に対して空恐ろしさを感じ、スーパービジョンという言葉を聞くたびに体がすくみ、顔を引きつらせて逃げ回っていた感さえあります。“きっとスーパーバイザーから雨あられの質問が投げかけられ、あるいは投げつけられ、傷だらけにされてしまう…。そんな想像を禁じえませんでした。

 そんな自分が受講を決めたのは、ある意味“怖いもの見たさ”。そんな向きもありますが、新人教育や指導について不安があったのもまた事実です。研修には全国からスーパービジョンや新人育成に関心をお持ちの受講者が集まり、そんななか、よくまぁ自分が申し込んでしまったものだと席に座しておりました。

 まず研修の冒頭に『OJTとSVの違い』についての講義があり、ふと職場のことを思います。新人職員や当時の自分も業務の上で困っていることがあれば、その「答え」や「結果」を直ぐに上司や先輩に求めがちになっていたなと。これは所属機関の機能にもよりますが、間断なく結果を求められる状況に立たされていれば往々にしてあることだと思います。そして所属機関の役割に見合った人材を育成し適応させるにはOJTは欠かせない重要なことでもあります。

 でもそれだけでは成長できない。組織に期待される業務が遂行できたとしても、それで完結してしまう。ソーシャルワーカーとしての自分を引き上げるのは自身であり、それを支えるものがスーパービジョンなのかなと感じました。「スーパーバイジーが自身の実践を語り、それをスーパーバイザーは支持的に聴く」。そこには雨もあられも降ってこない。肯定され、安心した環境というのは何だか子育てのような印象もあり、確かに人が成長するうえで大事な土壌なんだなと思えてきました。

 そして『SV体験談』では、失敗や葛藤を交えたお話を伺い、とても共感し勇気をもらえるものでした。特に“スーパーバイザーも、PSWとして悩み考えながら歩を進める同じPSW”と話していただけたことは印象に残りました。PSWとして成長する手掛かりをスーパーバイジーだけでは見つけられないこともあり、そこで足元に光を当てながら「そこにあるものは?」と問いかけてくれるのがスーパーバイザーなのかな、と。取り留めも無くそんな理解をしました。

 今回の研修を通して、スーパービジョンをとても身近に感じることができました。次は自分が実際にスーパービジョンを受けてみたいと思います。そしていつか後輩にも「スーパービジョンを受けてみたら?」と投げかけられる自分になりたいと思います。そう感じることが出来たのが、今日の何よりの財産となりました。


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