要望書・見解等

2007年度


標  題 「退院支援施設」に関する要望書
日  付 2008年3月12日
発 信 者 精神保健従事者団体懇談会(社団法人日本精神神経学会、日本病院・地域精神医学会、社団法人日本作業療法士協会、全日本自治団体労働組合 衛生医療評議会、日本臨床心理学会、全国保健・医療・福祉心理職能協会、日本精神保健看護学会、有限責任中間法人日本総合病院精神医学会、日本児童青年精神医学会、全国精神医療労働組合協議会、特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会、社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会、社団法人日本精神保健福祉士協会)※賛同団体のみ
提 出 先 各都道府県 知事、各政令指定都市 市長、各中核市 市長

 貴職におかれましては、日頃より精神医療・保健・福祉の充実のために尽力されていることに敬意を表します。

 私たちは、精神障害者が地域であたりまえに暮らしていける社会の実現を目指して活動している精神医療・保健・福祉関係団体です。

 これまでの国の精神障害者に対する隔離収容政策が、世界に類を見ない数の精神病床と長期に及ぶ「社会的入院」を生み出してきました。

 「社会的入院」が余儀なくされることは精神障害者の生活権の侵害を意味するものでもあり、その解消が急がれるところです。そうしたことから、各自治体による障害者計画の中でも、社会的入院の解消と精神障害者の地域移行が重要な課題となっています。

 ところが、厚生労働省は昨年4月1日に精神障害者「退院支援施設」の運用に踏み切りました。この「退院支援施設」の設置は、「看板の書きかえ」によって「社会的入院の解消(精神病床の削減)」という「数合わせ」をしようとするものにすぎません。社会的入院患者が病棟転用の「退院支援施設」に移ってもその生活実態は全く変わらず、真の地域移行が保証されているわけではありません。それまでの病院生活と本質的に変わりない施設生活に移され、単にその費用が医療費から自立支援法による福祉財源によって賄われるようになるだけのことです。

 この「退院支援施設構想」に対して、障害当事者団体はもとより、障害者支援団体、精神医療・保健・福祉関係団体、その他多くの関係団体がその撤回を要求してきましたが、国はそれを押し切って実施することにしました。

 この「退院支援施設」が社会基盤整備の進まない中、社会的入院者の終の棲家になるのでないかと心配されます。これに対して厚生労働省は「地域移行推進協議会」を事業者に作らせて、その運用の適正化を図るとしています。しかし、この協議会についてはその第三者性に問題があり、退院支援施設におけるサービスの質や事業の実効性などについて厳しく評価されないことも予想されます。

 これまでの誤った精神医療施策のために人生を台無しにしてしまった人々が大勢います。日本の精神病床数34万床の半数近くが5年以上の長期入院者で占められています。誤った歴史を繰り返してはならないと思います。

 今求められているのは、名ばかりの「退院支援施設」を作ることでなく、精神障害者の地域移行のための基盤整備に力を注ぎ、本来の退院促進支援活動を充実させることだと思います。

 つきましては、「退院支援施設」に関して、下記の通り要望いたしますので、ご高配の程、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.事業者から「退院支援施設」の指定申請があっても認めないでください。

2.住宅確保(グループホーム・福祉ホーム・公営住宅の障害者優先利用、住居入居支援)、退院促進支援、生活支援(ピアサポート、ホームヘルプ、生活ヘルプ、地域活動支援センター)など、障害者が地域で暮らすための基盤整備こそを推進してください。

3.退院支援施設整備でなく、本来の自立支援事業や居住資源整備のための予算確保を国に要求してください。



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標  題 平成20年度「スクールソーシャルワーカー活用事業」に対する意見(ご回答)
日  付 2008年2月29日
発翰番号 JAPSW発第07−255号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 文部科学省 初等中等教育局 児童生徒課

 時下、貴職におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素は、本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、誠にありがとうございます。

 さて、平成20年2月22日付事務連絡「平成20年度「スクールソーシャルワーカー活用事業」に対する御意見等について(依頼)」の件につきましては、下記のとおり、ご回答申しあげます。

 本協会の意見が、当該事業の一助になれば幸いです。
 なお、ご不明な点等ございましたら、ご連絡いただければ幸いです。


1.スクールソーシャルワーカーとして求められる専門性(適切な人材)について
 今日の学校が抱える児童生徒に関わる諸問題は、複雑多様化する社会の仕組みや価値観の中で発生しており、その問題解決を行うにあっては、それらの環境要因に着目したアプローチが必要です。起きている「問題」を抱える児童生徒個人へのアプローチのみで対処することには限界があり、児童生徒と環境との相互作用の中に問題が生じているという認識のもと、その相互作用に介入する視点が求められると考えます。スクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)は、これまで行われてきた児童生徒個人への働きかけは当然のこととして、更に、児童生徒を取り巻く生活環境(家族関係をはじめとする家庭環境、住環境、学校内・近隣の第三者との人間関係、経済的環境、地域内の関係機関、居住地域の文化的特性など)への働きかけを行うところに専門性が発揮されます。そして、児童生徒が抱える問題の解決にあたっては、問題を児童生徒から切り離すのではなく、「児童生徒を、人格を持つ一人の人間として尊重する」という観点から、児童生徒と一緒になって取り組む姿勢が求められます。すなわち「ソーシャルワークを行う上で必要なコミュニケーション能力を持ち、“子ども達の利益を最優先する”というスクールソーシャルワークの基本的な視点・考え方を有すること」が基本であると考えられます。

 以上のことから、SSWとして適切な人材は、社会構造に対する理解とそれに働きかける専門知識と技術、さらにはそれらを運用するうえで必要となる価値観、倫理観を持ち合わせていることが要求されるため、一定程度の経験・知識を有する社会福祉の専門職(精神保健福祉士、社会福祉士)であることが求められます。

 なお、児童生徒が抱える諸問題の多くがメンタルヘルスに関連したものであることを考慮するならば、より適切な人材は、精神保健分野の専門教育を受けた後、精神科医療機関や精神障害者の生活支援機関・施設等における臨床実践の経験をもつ精神保健福祉士が最も適任であると考えます。

 精神保健福祉士がSSWとして有効であることは、下記の事柄等に精通していることが挙げられます。

 1)対象者の性格傾向や心理特性、疾病や障害の理解
 2)援助において生じる心理力動の理解
 3)援助原則、援助技術、倫理等の技術や知識の修得
 4)対象者や周辺環境がもつ「強さ」、「可能性」に着目したアセスメント力 
 5)家族を援助対象として、児童生徒との関係性に関与する援助
 6)問題解決に有効と思われる社会資源(人的資源を含む)と対象者とを結びつける力
 7)対象者を中心とした地域における支援ネットワークの構築
 8)関係機関との調整を行いマネジメントしていく力


2.スクールソーシャルワーカーの担うべき職務内容について
 教育現場で生じる社会的な要素を多分に含んだ諸問題に対しては、教育的、心理的な働きかけに加えて、社会的な視点を持って対処することが必要です。これは、すなわちソーシャルワークの視点に基づく働きかけの必要性を意味します。

 ソーシャルワーカーの担うべき職務内容としては、個別援助であるソーシャル・ケースワーク、集団援助であるソーシャル・グループワーク、地域援助であるコミュニティワークがあります。また、これ以外にケースマネジメント、教員等に対するコンサルテーションが挙げられます。これらは、全てが社会福祉における専門技術であり、SSWの職務として考えられるものです。

 具体的なSSWの職務内容は、以下のものが考えられます。

 1)学校生活を円滑に営むための援助・支援
 2)精神面や社会生活面の問題、課題解決のための援助・支援
 3)ハラスメントに対する権利擁護
 4)教師に対する助言と指導(コンサルテーション)
 5)ケースのリスクアセスメント
 6)ケース会議等の開催
 7)学内、学外関係機関との連絡調整、児童生徒の支援ネットワークの組織化
 8)親の会などのグループワークや地域へ働きかけるコミュニティワーク


3.スクールソーシャルワーカーの活用方法
 SSWは、児童生徒を「人格を持つ一人の人間としての権利と尊厳を保障する」視点を持って、社会的側面から教育現場で生じる諸問題解決のための援助・支援を行うこととなり、その活動範囲は、学校内は勿論のこと、学外、すなわち児童生徒の全生活場面を視野に入れたものとなります。具体的に実践現場で確認されていることとして、いじめや不登校、反社会的行動なども児童・生徒の置かれている環境が大きな要因となっているケースが多く、そのような問題への介入や発達障害などの医療機関との連携、生活全般を含めた福祉的な支援など幅広い活用が可能です。

 そのため、スクールソーシャルワーカーは、学校にあっても、教育活動とは一線を画したところで、即介入も可能であり関係機関へもすぐ足を運べる自由な体制で児童生徒の援助を行えるように位置づけることが有効な活用方法であると考えます。

 社会福祉の視点や知識・技術を基軸に活動を行うSSWは、以下のような機能を持って援助・支援を行います。

 1)ソーシャルワーク機能(対児童生徒、保護者)
 2)アドボケート機能(対児童生徒)
 3)プロテクト機能(対児童生徒)
 4)マネジメント機能(対児童生徒)
 5)コーディネート機能(対児童生徒、保護者)
 6)コンサルテーション機能(対教職員)
 7)ネットワーキング機能(対教職員・関係諸機関)


4.教育現場におけるスクールソーシャルワーカーと他の専門家(スクールカウンセラー等)等との連携の在り方について

 児童生徒の抱える諸問題は、教育、心理、福祉といった複合的な要素を孕んだものと考えられるため、職種による役割を明確に分けて対応することは現実的でないと考えます。しかし、児童生徒の抱える諸問題に、チームを組んで対応する場合は、各職種の専門性の違いを明確にしておくことが、連携を持つ上で何よりも必要と考えます。言い換えれば、近接領域であっても、各職種が専門性の違いを理解しないまま児童生徒に対応することは、援助における責任の所在が曖昧になり、結果的に的確で有効な介入がなされない危険性を有し、本事業がシステムとして継続的に機能することを阻害することになりかねません。

 こうしたことが、各職種に共通認識されて初めて連携がなされると考えます。具体的な方法としては、チームカンファレンス(処遇会議)の場をもつこと等が、必要かつ有効と考えられます。既存の実践ではスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーが協働して関与する事例もあり、スクールソーシャルワーカーがマネジメント役を担う者としての確認を行うことにより、個別の関与に終わってしまうことや当事者不在の状況を作ってしまうことを防ぐと考えられます。


5.その他、本事業に対する意見
 本事業が有効に機能するためには、日本スクールソーシャルワーク協会、日本学校ソーシャルワーク学会等の専門学術団体と、本協会や社団法人日本社会福祉士会等の専門職能団体、そして貴省が相互に連携して協力体制を作り上げ、SSWに関する研究・研修体制の構築及び学術的バックアップを継続して行う必要性があると考えます。そのことがSSWの資質の向上に繋がり、ひいては児童生徒に対する適切な援助・支援に結びつくものと考えます。


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標  題 福祉人材としての精神保健福祉士の任用に関する要望書
日  付 2008年2月14日
発翰番号 JAPSW発第07−230号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 1)都道府県知事 様 2)政令指定都市 市長 様 3)市町村長 様 ※市町村長へは2月下旬発送予定

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、精神保健医療福祉施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼を申しあげます。

 さて、ご承知のとおり、近年国民の福祉・介護ニーズが増大し、質的にもニーズが多様化・高度化してきた状況から、1993年に厚生省(当時)より告示された「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する指針」(通称・福祉人材確保指針、以下「指針」という。)の見直しが図られ、2007年8月28日に新たな指針が告示されたところです。

 同指針には、今後さらに拡大する福祉・介護ニーズに対応できる質の高い人材を安定的に確保していくことが、国民生活に関わる喫緊の課題としたうえで、福祉・介護事業の経営者、関係団体等、国、地方公共団体が取り組むべき人材確保の方策の一つとして、福祉関連の有資格者の活用等の促進を図ることが謳われました。

 精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰と社会参加を支援する専門職として1997年に国家資格化され、現在までに3万4千人を超える有資格者が誕生しております。また、児童生徒の虐待、いじめ、ひきこもり、うつ、自殺、アルコール・薬物依存、認知症等国民のメンタルヘルスへの関心の高まりと相まって、精神保健福祉士が対象とする領域は狭義の精神障害に止まらず、広くメンタルヘルスのさまざまな課題に広がってきております。

 つきましては、今後、国家資格を有する福祉人材である精神保健福祉士について、下記の点に是非ともご配慮を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.生活保護者や障害者等の自立(自律)を支援し、また、乳幼児期から老年期に至るまで、メンタルヘルスのさまざまな課題に適切に対応するうえで、福祉事務所、児童相談所、保健所、保健および福祉に関する市区町村窓口等に精神保健福祉士の任用を図ってください。


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標  題 「スクールソーシャルワーカー活用事業」における精神保健福祉士の積極的活用に関する要望について(お願い)
日  付 2008年2月5日
発翰番号 JAPSW発第07−219号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 都道府県・政令指定都市教育委員会 教育長 様

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、精神保健医療福祉施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼を申しあげます。

 さて、ご承知のとおり、近年国民の福祉・介護ニーズが増大し、質的にもニーズが多様化・高度化してきた状況から、1993年に厚生省(当時)より告示された「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する指針」(通称・福祉人材確保指針、以下「指針」という。)の見直しが図られ、2007年8月28日に新たな指針が告示されたところです。

 同指針には、今後さらに拡大する福祉・介護ニーズに対応できる質の高い人材を安定的に確保していくことが、国民生活に関わる喫緊の課題としたうえで、福祉・介護事業の経営者、関係団体等、国、地方公共団体が取り組むべき人材確保の方策の一つとして、福祉関連の有資格者の活用等の促進を図ることが謳われました。

 精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰と社会参加を支援する専門職として1997年に国家資格化され、現在までに3万4千人を超える有資格者が誕生しております。また、児童生徒の虐待、いじめ、ひきこもり、うつ、自殺、アルコール・薬物依存、認知症等国民のメンタルヘルスへの関心の高まりと相まって、精神保健福祉士が対象とする領域は狭義の精神障害に止まらず、広くメンタルヘルスのさまざまな課題に広がってきております。

 つきましては、今後、国家資格を有する福祉人材である精神保健福祉士について、下記の点に是非ともご配慮を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。

 なお、過日、文部科学省を訪問して別添の要望書を提出させていただき、ご理解をいただいておりますことを申し添えます。
 また、ご参考までに、平成19年度に施行されている「熊本県スクールソーシャルワーカー設置要項」を添付いたします。


1.児童生徒の不登校や虐待等への予防や解決を図るために、小学校や中学校でスクールソーシャルワークを推進すべく、文部科学省の委託事業等も活用しながら、社会福祉及び精神保健の専門的な知識や技術を有する精神保健福祉士の活用を積極的に推進してください。


<資料>
1.文部科学省初等中等教育局長様宛「『スクールソーシャルワーカー活用事業』における精神保健福祉士の積極的活用に関する要望について(お願い)」(2008年1月30日付JAPSW発第07-215号)
2.熊本県スクールソーシャルワーカー設置要項


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標  題 「スクールソーシャルワーカー活用事業」における精神保健福祉士の積極的活用に関する要望について(お願い)
日  付 2008年1月30日
発翰番号 JAPSW発第07−215号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 文部科学省 初等中等教育局長 金森越哉 様

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 平素より、精神保健医療福祉施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼を申しあげます。

 さて、ご承知のとおり、近年国民の福祉・介護ニーズが増大し、質的にもニーズが多様化・高度化してきた状況から、1993年に厚生省(当時)より告示された「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する指針」(通称・福祉人材確保指針、以下「指針」という。)の見直しが図られ、2007年8月28日に新たな指針が告示されたところです。

 同指針には、今後さらに拡大する福祉・介護ニーズに対応できる質の高い人材を安定的に確保していくことが、国民生活に関わる喫緊の課題としたうえで、福祉・介護事業の経営者、関係団体等、国、地方公共団体が取り組むべき人材確保の方策の一つとして、福祉関連の有資格者の活用等の促進を図ることが謳われました。

 精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰と社会参加を支援する専門職として1997年に国家資格化され、現在までに3万4千人を超える有資格者が誕生しております。また、児童生徒の虐待、いじめ、ひきこもり、うつ、自殺、アルコール・薬物依存、認知症等国民のメンタルヘルスへの関心の高まりと相まって、精神保健福祉士が対象とする領域は狭義の精神障害に止まらず、広くメンタルヘルスのさまざまな課題に広がってきております。

 つきましては、今後、国家資格を有する福祉人材である精神保健福祉士について、下記の点に是非ともご配慮を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.児童生徒の不登校や虐待等への予防や解決を図るために、すべての小学校や中学校におけるスクールソーシャルワークを推進すべく、貴省の来年度予算事業として予定されている「スクールソーシャルワーカー活用事業」において、精神保健福祉士の活用を積極的に図ってください。

2.「スクールソーシャルワーカー活用事業」の実施主体となる都道府県・市町村の教育委員会に対して、社会福祉及び精神保健の専門的な知識や技術を有する精神保健福祉士を周知していただき、その活用を積極的に促してください。


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標  題 後期高齢者医療の診療報酬体系に関する要望について(お願い)
日  付 2007年10月25日
発翰番号 JAPSW発第07−142号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 1)厚生労働省 保険局 医療課長 原 徳壽 様
2)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 福島靖正 様

 平素より、本協会の事業に関しまして格別のご理解、ご協力を賜り深く感謝申しあげます。また、先般の第164回国会におきまして健康保険法等の一部を改正する法律(平成16年法律第83号)の成立に伴い、平成20年度から後期高齢者医療制度が施行されるわけでありますが、貴省におかれましては、その準備にご尽力頂いていることと拝察いたします。

 さて、私ども精神保健福祉士は、後期高齢者の問題として、第2回社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会においても報告された、後期高齢者の5分の1が認知症を有しているという状況を、後期高齢者の極めて深刻な問題として認識しているところです。私ども精神保健福祉士は、技術理念をソーシャルワークにおき、学問的基盤を社会福祉学においた福祉専門職であり、特段この認知症高齢者においては、臨床の現場で既に数々の実践を行っているところです。また、精神保健福祉士の多くが所属している精神科病院の入院患者の年齢別内訳によると、75歳以上の後期高齢者が2割を超える現状であり、その予備軍としての65歳以上をあわせると4割を超える状況となっています。また、第12回社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会に提出されました「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子(案)」におきましても、精神保健福祉士が臨床の場面で実践しております関係機関の連絡調整並びに情報共有というコーディネート機能が重要な事項と考えられます。以上の観点から、私ども精神保健福祉士が持ち併せているソーシャルワーク技術が、後期高齢者医療に有効に作用するものと考えられます。

 つきましては、本協会といたしまして、下記のように「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子(案)」から精神保健福祉士の有効作用をまとめてみましたので、後期高齢者医療の診療報酬体系において精神保健福祉士を組み入れていただくことのご検討を何卒よろしくお願い申しあげます。

1.外来医療について
  「関係者、患者・家族との情報共有と連携」において、医療と介護・福祉サービスにおいて情報共有をする際には、医療と介護・福祉の架け橋となる精神保健福祉士の存在が必須であり、カンファレンスの実施においても、医療機関と地域関係者との連絡調整、会議の進行等においてコーディネートしていく職種は精神保健福祉士が最も適任であると考えられます。


2.入院医療について

1)後期高齢者の入院時から、「退院後の生活を見越した計画的な入院医療」を行うために、これまでの生活歴、既往歴、介護・福祉サービスの利用状況、地域資源のアセスメントを含めた地域診断、本人が望む生活、家族の意向等について精神保健福祉士がアセスメントに積極的に参画する必要があると考えられます。

2)「入院中の評価とその結果の共有」につきましても上記同様ソーシャルワーク機能が有効であると考えられ、評価結果の情報共有についてもコーディネート能力を有する精神保健福祉士の参画が有効であると考えられます。

3)「退院前後の支援」につきましても円滑に在宅生活に移行するためには環境調整が十分に必要であります。そのための機能として、また、関係職種の連携調整役としても精神保健福祉士が最適任だと考えられます。


3.在宅医療について
1)「情報共有と連携」については、医療機関内の情報の共有と連携、更には介護・福祉関係者の相互の情報共有も重要なこととなりますが、医療保健福祉をつなぐコーディネート能力を有する精神保健福祉士は必置であると考えられます。

2)「訪問看護」については、その内容に在宅療養の環境整備や医療や介護・福祉サービスの提供者等との調査調整等ソーシャルワーク機能が有効であると考えられます。現に精神科訪問看護・指導においての診療報酬の算定について精神保健福祉士は対象職種となっており、実践活動を地域において行っているところです。


4.その他
 本協会が実施した「2006年度構成員実態調査」(調査期間:2007年2月1日〜2月28日、対象者数:5,339人、回答者数3,100人、回答率58.1%)の結果に基づきますと、医療機関に勤務する者1,583人中一般科医療機関勤務者は157人であり約10%を占めます。彼らの業務は精神疾患以外にも幅広い疾病対象者へのソーシャルワーク業務であります。また、老人福祉関係施設、介護老人保健施設、地域包括支援センター、老人介護支援センターといった老人福祉及び介護領域に勤務する者は115人で現在勤務している回答者数2,910人中約4%となります。また保健所、市町村保健センター、精神保健福祉センター、福祉事務所等での勤務者が108人であり約4%となります。このように、すでに精神疾患や精神障害だけではなく、医療と保健、福祉にまたがる領域で勤務しております。


[添付資料]※省略
1.精神病床の入院患者の年齢分布
2.福岡県A病院 老人性認知症センター統計
3.大阪府B病院 老人性認知症センター統計
4.「認知症領域における精神保健福祉士の活動と役割」他(社団法人日本精神保健福祉士協会作成)
5.精神保健福祉士の機能(図2枚)


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標  題 2008年度診療報酬改定に関する要望について
日  付 2007年10月25日
発翰番号 JAPSW発第07−142号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 1)厚生労働省 保険局 医療課長 原 徳壽 様
2)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 福島靖正 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、貴省におかれましては、2004年9月に精神保健福祉対策本部公表の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、10年後を目途に精神保健医療福祉における「入院治療から地域生活中心へ」の転換の推進や、「受け入れ条件が整えば退院可能な約7万人」の解消が謳われ、その具体化のための施策展開が図られていると認識しております。

 本協会としましては、精神障害者の社会復帰促進の強化のためには、精神科医療機関内外に渡るネットワークの構築によるチーム医療の推進、及びその環境調整が極めて重要であると認識しているところです。

 つきましては、以上の観点から、下記のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。


1.訪問看護ステーションに精神保健福祉士の配置を規定してください(別紙の「T」参照)。

[理由]入院中心のケアから転じて在宅医療の支援体制を整備推進する方針は、慢性疾患や障害のある方が住み慣れた街で安心して暮らせる保障として大変重要です。その中心的役割を担う訪問看護ステーションは、数の上では少数ですが、精神障害者も対象としているものです。
  現行の社会保険診療報酬では、精神科訪問看護・指導料、精神科退院前訪問指導料といった在宅医療及び地域移行支援を行う算定対象職種として、すでに医療機関に属する精神保健福祉士が認められています。
  訪問看護ステーションにおいても、これまで認められている職種に精神保健福祉士が加わり、複数職種による患家や患者の生活圏への訪問看護・指導を行うことにより、従前に増してより手厚いケアの提供が可能となり、再発および医療中断の防止、更には自立支援の促進、QOLの向上等による安定した地域滞在日数の増加に貢献すると考えます。


2.「精神科回復期リハビリテーション病棟」の施設基準を新設してください(別紙の「U」参照)。

[理由]わが国の精神科医療状況において、優先されるべき課題は急性期治療でも退院に結びつかない、いわゆるnew long stayの患者を如何に社会復帰に結びつけるかであります。入院1年後の残存率が15%もあり、その後殆どカーブを描かなくなることから、入院1年以内の間に如何にトータルなリハビリテーションと社会復帰援助を行い退院に結びつけ、残存率を低下させて行くかが重要となります。そのために、回復期リハビリテーション病棟の施設基準を新たに設け、精神科病院がより積極的に社会復帰・退院促進に取り組めるようにすべきと考え上記の案を提案します。
 すでに急性期症状が緩和されたものの、生活環境、家族関係、通院治療への移行、退院時の地域生活支援体制の確立などにいま少し専門的支援が必要な患者への治療を行う病棟の施設基準を新設し、包括診療報酬の設定をすることで在院の長期化を防ぎ社会的入院の予防に結びつくと考えます。
 地域関係諸機関および生活環境調整を行うことが出来る専門的な機能を持った精神保健福祉士を専従配置することにより、いわゆる社会的入院といわれる事態を事前に予防できると考えられます。


3.精神療養病棟の施設基準に精神保健福祉士の配置を加えてください。

[理由]精神科病院によっては、精神療養病棟から長期入院患者の退院促進を行っているところもあります。
 しかしながら、現在の精神療養病棟における配置基準による専門職だけでは、帰るべき地域や家族らとの繋がりが疎遠になってしまった長期入院患者の個別性に配慮した支援においては、いささか不充分なものになっていると思われます。配置された精神保健福祉士が、精神療養病棟における個別性に配慮した治療を支えると共に、それぞれに合った丁寧な調整を図り、地域生活へと繋ぐ一定の役割を担うことにより退院支援と地域移行の効果が上がると考えられます。


4.精神科医療機関における退院支援室の設置基準を作ってください。

[理由]退院促進を行うために、病棟基準ではなく、病院内に専従の医師、看護師、精神保健福祉士で構成される退院支援室を設置し、チームアプローチによる退院支援を行い、10年以上の長期患者が退院した際には加算がつくような仕組みを設けることにより、退院促進への積極的取り組みが推進されると考えます。


5.精神保健医療福祉相談援助指導料(精神保健医療福祉環境調整料)を新設してください。

[理由]精神科病院の精神保健福祉士は、受診受療援助、入院援助、退院援助、療養上問題調整、経済問題調整、就労問題援助、住宅問題援助、教育問題援助、家族問題調整、社会復帰相談等についての専門的援助指導を行い、社会復帰促進に大きな役割を果たしているのは承知の通りであります。また、精神保健福祉士は多くの関係職種や当事者からもその専門性を必要とされ、その依頼や役割を果たし、精神障害者の入院から退院時まで、さらに在宅となった精神障害者の再発予防に至るまで、医療チームの一員として治療に深く関わっております。特に旧社会復帰施設や現障害者自立支援法の各種施設等の入所指導から在宅復帰支援、就学復帰支援、就労支援など、精神障害者の医療と地域社会を結びつける重要な役割を果たしたといえると考えられます。
 そこで、通院及び入院により治療中の精神障害者(患者)及びその家族に対して、精神保健福祉士が主治医の指導(指示)を受け、家族調整支援・経済問題調整援助・地域関係機関調整援助等に関する相談援助業務を30分以上行った場合に算定するという精神保健医療福祉相談援助指導料(精神保健医療福祉環境調整料)を設定することにより退院促進や、地域滞在日数の増加に貢献できると考えます。


 なお、要望項目1(訪問看護ステーションへの精神保健福祉士の配置)につきましては、社団法人日本精神科病院協会、社団法人日本精神科看護技術協会、社団法人日本作業療法士協会、社団法人日本看護協会、財団法人日本訪問看護振興財団のご理解をいただくとともに、関連研究として厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)「重度精神障害者に対する包括型生活支援プログラム」(平成14〜16年度、伊藤順一郎氏他)があります。


(別紙)
重点要望項目2点に関する参考資料

T.訪問看護ステーションへの精神保健福祉士の配置に関する要望について

1.要望内容
 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年3月31日厚生省令第37号/最終改正 平成17年9月7日厚生労働省令第139号)の一部改正
<対象項目>
第4章 訪問介護  第2節 人員に関する基準
(看護師等の員数)第60条第1項
対象項目 現行基準 改正要望案
第1号ロ 理学療法士又は作業療法士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数 理学療法士又は作業療法士、精神保健福祉士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数

2.要望理由
1)現在訪問看護ステーションは、介護保険に基づく場合と、健康保険に基づく場合に行われている。そのうち健康保険に基づく場合その対象者は「疾病又は負傷により継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその程度につき厚生労働省令で定める基準に適合したと認める者)」となっており、その中に「精神障害者」も含めています。
 また、訪問看護の内容として、在宅において介護に重点をおいた看護サービスの具体例として、@病状観察、A清拭・洗髪、B褥瘡の処置、C体位交換、Dカテーテル等の管理、Eリハビリテーション、F食事排泄の介助、Gターミナルケア、H家族の介護指導等と合わせて、精神科看護を含めています。
 現行の訪問看護ステーションの人員基準に「理学療法士又は作業療法士」も認めているのは、上記の具体例のうち、リハビリテーション等に対応できるようにしたものと考えられます。精神障害者の在宅療養においても、自立した日常生活を営むことができるよう、その療養生活を支援し、心身の機能の維持回復を図るためには、看護師等と協働して精神保健福祉士の「相談援助」等(参考1参照)の必要な訓練が極めて有効であると考えます。

2)社会保険診療報酬では、すでに「精神科訪問看護・指導料」の対象職員として、精神保健福祉士が認められている。援助内容としては「看護及び社会復帰指導等」となっている(参考2参照)。診療報酬と同様の趣旨で訪問看護ステーションにおいても精神保健福祉士の参画が認められることが妥当と考えられます。

3.効果
1)厚生労働省が精神保健福祉対策本部で検討し、試行的実践をしている、いわゆるACTのシステムにおける効果に実証されているように、主治医と密接な連携の元に活動する医療系多職種チームとしての訪問看護ステーションを活用することは、極めて有効であると考えられます。更にはそのスタッフ構成の中に精神保健福祉士も加えられることにより、看護や作業療法士等との職種連携により在宅生活を重層的に支援していくことが可能になると考えられます。その効果は多職種が同一機関内に存在することによるチームアプローチが可能となること、その際のケアマネジメント機能を精神保健福祉士が担えることにあります。

2)退院後の地域生活においては、今般施行された障害者自立支援法による地域生活支援策を有効に活用するためにも、また地域における在宅生活を安定維持するためにも移行やリンケージ等の機能役割とともに、多機関に多様なサービスが効率よく適切に提供されるためのアセスメント、プランニング、モニタリング等の機能を持つケアマネジメントが重要になります。現在、精神障害者の地域生活支援の要となるケアマネージャーの多くは市町村および地域活動支援センターに配置されていますが、医療的支援重視型の支援チームが必要な対象者には訪問看護ステーションがケアマネジメント機能を持つ精神保健福祉士を充当して体制整備されることが望ましいと考えます。

 以上の観点から、精神保健福祉士(障害者ケアマネジメント研修=相談支援員研修履修者)を訪問看護ステーションに配置しケアマネジメントを実施したら報酬加算(契約時に確認された場合の対象者に対し1件850点/月、月1回モニタリング)できるようにすることの有効性・妥当性を検討しました。

[参考]
1.精神保健福祉士法(第2条関係)
 この法律において「精神保健福祉士」とは、4の(1)の登録を受け、精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと(以下「相談援助」という。)を業とする者をいう。

2.「医科点数表の解釈」より
I012 精神科訪問看護・指導料(T・U)
(精神科訪問看護・指導料について)
(1)精神科訪問看護・指導料(T)は、精神科を標榜している保険医療機関において精神科を担当している医師の指示を受けた当該保険医療機関の保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士(以下「保健師等」という。)が、精神障害者である入院中の以外の患者又はその家族等の了解を得て患家を訪問し、個別に患者又は家族等に対して看護及び社会復帰指導等を行った場合に算定する。(平成14.3.8 保医発0308001)
(2)精神科訪問看護・指導料(U)は、精神科を標榜している保険医療機関において、精神科を担当する医師の指示を受けた保健師等が、グループホーム又は医師若しくは看護師の配置を義務付けられていない精神障害者社会復帰施設の了解の下にこれらの施設を訪問して、当該施設に入所し、かつ、当該保険医療機関で診療を行っている複数の患者又はその介護を担当する者等に対して同時に看護及び社会復帰指導を行った場合に算定する。(平成14.3.8 保医発0308001)


U.精神科回復期リハビリテーション病棟施設基準

1.要望内容
1)病棟の施設基準の新設
 精神療養病棟と面積要件は同じとする。
 当該病棟に精神保健指定医である医師・作業療法士又は作業療法の経験を有する看護職員・精神保健福祉士が常勤していること。
 当該病棟の病床数は、1看護単位あたり60床以下である。

2)人員基準
 看護4:1、助手6:1、作業療法士を当該病棟に専従、精神保健福祉士を当該病棟に専従とする。

3)運用基準
 精神科回復期リハビリテーション病棟は、精神障害の患者に対して、対人関係やADL能力の向上による家庭復帰等を目的としたリハビリテーションプログラムを、医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士等が共同して作成し、これに基づくリハビリテーションを集中的に行うための病棟とし、リハビリテーションを要する状態の患者が常時7割以上入院している病棟とする。
 当該病院に入院している患者のうち入院時から1年以内の患者に対し算定する。
 精神科専門療法等以外の費用については包括の中に含まれるものとする。
 当該病棟入院料に係わる算定要件に該当しない患者については、当該病棟が精神一般病棟である場合は、20:1基本料を、当該病棟が精神療養病棟の基準を満たしている場合には、その点数を算定する。

4)診療報酬
 社会復帰、退院促進機能を評価し、1日1,190点

2.要望理由
 すでに急性期症状が緩和されたものの、生活環境、家族関係、通院治療への移行、退院時の地域生活支援体制の確立などにいま少し専門的支援が必要な患者への治療を行う病棟へ退院率を課し、包括診療報酬の設定をすることで在院の長期化を防ぎ社会的入院の予防に結びつくと考えます。地域関係諸機関および生活環境調整を行うことが出来る専門的な機能を持った精神保健福祉士を専従配置することによりいわゆる社会的入院といわれる事態を事前に予防できると考えられます。
 現在精神科に関する病棟で包括診療報酬が認められているのは、@精神科救急入院料、A精神科急性期治療病棟1、B精神科急性期治療病棟入院料2、C精神療養病棟入院料、D老人性認知症疾患病棟入院料1、E老人性認知症疾患病棟入院料2であり、この中で病棟に専従の精神保健福祉士が必置されているのは@ABDである。精神障害者の退院促進が必須の命題である今、リハビリテーション病棟や社会復帰促進病棟などと称した機能を持つ病棟を運営している精神科病院が少なくない中、そうした援助に対する精神保健福祉士の専従配置が効を奏し、在院に向けた長期化残存率の分岐点である1年前後での退院を促進可能とすると考えられるため、「精神科回復期リハビリテーション病棟」の新設を求めるものです。

3.効果
1)保護者・家族・関係施設・機関・地域社会などとの環境調整業務により、複雑化している関係の改善を図り、退院を促進し、実現させることが可能となります。

2)長期入院者に対し、ケースワーク・グループワーク技法などにより社会復帰意欲の改善を促すことが出来ます(医師・看護師・作業療法士等とのチーム医療による退院促進効果)。

3)長期入院となり、自立不安を抱く精神障害者に対し、社会資源の活用と調整等により、社会生活上の問題解決の強化を図り、自立を促進することが出来ます。

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標  題 2008年度診療報酬改定に関する要望について
日  付 2007年5月14日
発翰番号 JAPSW発第07−36号の1、2
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
提 出 先 1)厚生労働省 保険局 医療課長 原 徳壽 様
2)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 新村和哉 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、貴省におかれましては、2004年9月に精神保健福祉対策本部公表の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、10年後を目途に精神保健医療福祉における「入院治療から地域生活中心へ」の転換の推進や、「受け入れ条件が整えば退院可能な約7万人」の解消が謳われ、その具体化のための施策展開が図られていると認識しております。

 本協会としましては、精神障害者の社会復帰促進の強化のためには、精神科医療機関内外に渡るネットワークの構築によるチーム医療の推進、及びその環境調整が極めて重要であると認識しているところです。

 つきましては、以上の観点から、下記のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。


1.訪問看護ステーションに精神保健福祉士の配置を規定してください(別紙の「T」参照)。

[理由]入院中心のケアから転じて在宅医療の支援体制を整備推進する方針は、慢性疾患や障害のある方が住み慣れた街で安心して暮らせる保障として大変重要です。その中心的役割を担う訪問看護ステーションは、数の上では少数ですが、精神障害者も対象としているものです。
  現行の社会保険診療報酬では、精神科訪問看護・指導料、精神科退院前訪問指導料といった在宅医療及び地域移行支援を行う算定対象職種として、すでに医療機関に属する精神保健福祉士が認められています。
  訪問看護ステーションにおいても、これまで認められている職種に精神保健福祉士が加わり、複数職種による患家や患者の生活圏への訪問看護・指導を行うことにより、従前に増してより手厚いケアの提供が可能となり、再発および医療中断の防止、更には自立支援の促進、QOLの向上等による安定した地域滞在日数の増加に貢献すると考えます。


2.「精神科回復期リハビリテーション病棟」の施設基準を新設してください(別紙の「U」参照)。

[理由]わが国の精神科医療状況において、優先されるべき課題は急性期治療でも退院に結びつかない、いわゆるnew long stayの患者を如何に社会復帰に結びつけるかであります。入院1年後の残存率が15%もあり、その後殆どカーブを描かなくなることから、入院1年以内の間に如何にトータルなリハビリテーションと社会復帰援助を行い退院に結びつけ、残存率を低下させて行くかが重要となります。そのために、回復期リハビリテーション病棟の施設基準を新たに設け、精神科病院がより積極的に社会復帰・退院促進に取り組めるようにすべきと考え上記の案を提案します。
 すでに急性期症状が緩和されたものの、生活環境、家族関係、通院治療への移行、退院時の地域生活支援体制の確立などにいま少し専門的支援が必要な患者への治療を行う病棟の施設基準を新設し、包括診療報酬の設定をすることで在院の長期化を防ぎ社会的入院の予防に結びつくと考えます。
 地域関係諸機関および生活環境調整を行うことが出来る専門的な機能を持った精神保健福祉士を専従配置することにより、いわゆる社会的入院といわれる事態を事前に予防できると考えられます。


3.精神療養病棟の施設基準に精神保健福祉士の配置を加えてください。

[理由]精神科病院によっては、精神療養病棟から長期入院患者の退院促進を行っているところもあります。
 しかしながら、現在の精神療養病棟における配置基準による専門職だけでは、帰るべき地域や家族らとの繋がりが疎遠になってしまった長期入院患者の個別性に配慮した支援においては、いささか不充分なものになっていると思われます。配置された精神保健福祉士が、精神療養病棟における個別性に配慮した治療を支えると共に、それぞれに合った丁寧な調整を図り、地域生活へと繋ぐ一定の役割を担うことにより退院支援と地域移行の効果が上がると考えられます。


4.精神科医療機関における退院支援室の設置基準を作ってください。

[理由]退院促進を行うために、病棟基準ではなく、病院内に専従の医師、看護師、精神保健福祉士で構成される退院支援室を設置し、チームアプローチによる退院支援を行い、10年以上の長期患者が退院した際には加算がつくような仕組みを設けることにより、退院促進への積極的取り組みが推進されると考えます。


 なお、要望項目1(訪問看護ステーションへの精神保健福祉士の配置)につきましては、社団法人日本精神科病院協会、社団法人日本精神科看護技術協会、社団法人日本作業療法士協会、社団法人日本看護協会、財団法人日本訪問看護振興財団のご理解をいただくとともに、関連研究として厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)「重度精神障害者に対する包括型生活支援プログラム」(平成14〜16年度、伊藤順一郎氏他)があります。


(別紙)
重点要望項目2点に関する参考資料

T.訪問看護ステーションへの精神保健福祉士の配置に関する要望について

1.要望内容
 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年3月31日厚生省令第37号/最終改正 平成17年9月7日厚生労働省令第139号)の一部改正
<対象項目>
第4章 訪問介護  第2節 人員に関する基準
(看護師等の員数)第60条第1項
対象項目 現行基準 改正要望案
第1号ロ 理学療法士又は作業療法士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数 理学療法士又は作業療法士、精神保健福祉士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数

2.要望理由
1)現在訪問看護ステーションは、介護保険に基づく場合と、健康保険に基づく場合に行われている。そのうち健康保険に基づく場合その対象者は「疾病又は負傷により継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその程度につき厚生労働省令で定める基準に適合したと認める者)」となっており、その中に「精神障害者」も含めています。
 また、訪問看護の内容として、在宅において介護に重点をおいた看護サービスの具体例として、@病状観察、A清拭・洗髪、B褥瘡の処置、C体位交換、Dカテーテル等の管理、Eリハビリテーション、F食事排泄の介助、Gターミナルケア、H家族の介護指導等と合わせて、精神科看護を含めています。
 現行の訪問看護ステーションの人員基準に「理学療法士又は作業療法士」も認めているのは、上記の具体例のうち、リハビリテーション等に対応できるようにしたものと考えられます。精神障害者の在宅療養においても、自立した日常生活を営むことができるよう、その療養生活を支援し、心身の機能の維持回復を図るためには、看護師等と協働して精神保健福祉士の「相談援助」等(参考1参照)の必要な訓練が極めて有効であると考えます。

2)社会保険診療報酬では、すでに「精神科訪問看護・指導料」の対象職員として、精神保健福祉士が認められている。援助内容としては「看護及び社会復帰指導等」となっている(参考2参照)。診療報酬と同様の趣旨で訪問看護ステーションにおいても精神保健福祉士の参画が認められることが妥当と考えられます。

3.効果
1)厚生労働省が精神保健福祉対策本部で検討し、試行的実践をしている、いわゆるACTのシステムにおける効果に実証されているように、主治医と密接な連携の元に活動する医療系多職種チームとしての訪問看護ステーションを活用することは、極めて有効であると考えられます。更にはそのスタッフ構成の中に精神保健福祉士も加えられることにより、看護や作業療法士等との職種連携により在宅生活を重層的に支援していくことが可能になると考えられます。その効果は多職種が同一機関内に存在することによるチームアプローチが可能となること、その際のケアマネジメント機能を精神保健福祉士が担えることにあります。

2)退院後の地域生活においては、今般施行された障害者自立支援法による地域生活支援策を有効に活用するためにも、また地域における在宅生活を安定維持するためにも移行やリンケージ等の機能役割とともに、多機関に多様なサービスが効率よく適切に提供されるためのアセスメント、プランニング、モニタリング等の機能を持つケアマネジメントが重要になります。現在、精神障害者の地域生活支援の要となるケアマネージャーの多くは市町村および地域活動支援センターに配置されていますが、医療的支援重視型の支援チームが必要な対象者には訪問看護ステーションがケアマネジメント機能を持つ精神保健福祉士を充当して体制整備されることが望ましいと考えます。

 以上の観点から、精神保健福祉士(障害者ケアマネジメント研修=相談支援員研修履修者)を訪問看護ステーションに配置しケアマネジメントを実施したら報酬加算(契約時に確認された場合の対象者に対し1件850点/月、月1回モニタリング)できるようにすることの有効性・妥当性を検討しました。

[参考]
1.精神保健福祉士法(第2条関係)
 この法律において「精神保健福祉士」とは、4の(1)の登録を受け、精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと(以下「相談援助」という。)を業とする者をいう。

2.「医科点数表の解釈」より
I012 精神科訪問看護・指導料(T・U)
(精神科訪問看護・指導料について)
(1)精神科訪問看護・指導料(T)は、精神科を標榜している保険医療機関において精神科を担当している医師の指示を受けた当該保険医療機関の保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士(以下「保健師等」という。)が、精神障害者である入院中の以外の患者又はその家族等の了解を得て患家を訪問し、個別に患者又は家族等に対して看護及び社会復帰指導等を行った場合に算定する。(平成14.3.8 保医発0308001)
(2)精神科訪問看護・指導料(U)は、精神科を標榜している保険医療機関において、精神科を担当する医師の指示を受けた保健師等が、グループホーム又は医師若しくは看護師の配置を義務付けられていない精神障害者社会復帰施設の了解の下にこれらの施設を訪問して、当該施設に入所し、かつ、当該保険医療機関で診療を行っている複数の患者又はその介護を担当する者等に対して同時に看護及び社会復帰指導を行った場合に算定する。(平成14.3.8 保医発0308001)


U.精神科回復期リハビリテーション病棟施設基準

1.要望内容
1)病棟の施設基準の新設
 精神療養病棟と面積要件は同じとする。
 当該病棟に精神保健指定医である医師・作業療法士又は作業療法の経験を有する看護職員・精神保健福祉士が常勤していること。
 当該病棟の病床数は、1看護単位あたり60床以下である。

2)人員基準
 看護4:1、助手6:1、作業療法士を当該病棟に専従、精神保健福祉士を当該病棟に専従とする。

3)運用基準
 精神科回復期リハビリテーション病棟は、精神障害の患者に対して、対人関係やADL能力の向上による家庭復帰等を目的としたリハビリテーションプログラムを、医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士等が共同して作成し、これに基づくリハビリテーションを集中的に行うための病棟とし、リハビリテーションを要する状態の患者が常時7割以上入院している病棟とする。
 当該病院に入院している患者のうち入院時から1年以内の患者に対し算定する。
 精神科専門療法等以外の費用については包括の中に含まれるものとする。
 当該病棟入院料に係わる算定要件に該当しない患者については、当該病棟が精神一般病棟である場合は、20:1基本料を、当該病棟が精神療養病棟の基準を満たしている場合には、その点数を算定する。

4)診療報酬
 社会復帰、退院促進機能を評価し、1日1,190点

2.要望理由
 すでに急性期症状が緩和されたものの、生活環境、家族関係、通院治療への移行、退院時の地域生活支援体制の確立などにいま少し専門的支援が必要な患者への治療を行う病棟へ退院率を課し、包括診療報酬の設定をすることで在院の長期化を防ぎ社会的入院の予防に結びつくと考えます。地域関係諸機関および生活環境調整を行うことが出来る専門的な機能を持った精神保健福祉士を専従配置することによりいわゆる社会的入院といわれる事態を事前に予防できると考えられます。
 現在精神科に関する病棟で包括診療報酬が認められているのは、@精神科救急入院料、A精神科急性期治療病棟1、B精神科急性期治療病棟入院料2、C精神療養病棟入院料、D老人性認知症疾患病棟入院料1、E老人性認知症疾患病棟入院料2であり、この中で病棟に専従の精神保健福祉士が必置されているのは@ABDである。精神障害者の退院促進が必須の命題である今、リハビリテーション病棟や社会復帰促進病棟などと称した機能を持つ病棟を運営している精神科病院が少なくない中、そうした援助に対する精神保健福祉士の専従配置が効を奏し、在院に向けた長期化残存率の分岐点である1年前後での退院を促進可能とすると考えられるため、「精神科回復期リハビリテーション病棟」の新設を求めるものです。

3.効果
1)保護者・家族・関係施設・機関・地域社会などとの環境調整業務により、複雑化している関係の改善を図り、退院を促進し、実現させることが可能となります。

2)長期入院者に対し、ケースワーク・グループワーク技法などにより社会復帰意欲の改善を促すことが出来ます(医師・看護師・作業療法士等とのチーム医療による退院促進効果)。

3)長期入院となり、自立不安を抱く精神障害者に対し、社会資源の活用と調整等により、社会生活上の問題解決の強化を図り、自立を促進することが出来ます。

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標  題 精神保健福祉士制度の見直しについて(要望)
日  付 2007年4月6日
発翰番号 JAPSW発第07−04号
発 信 者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦
日本精神保健福祉士養成校協会 会長 谷中輝雄
提 出 先 厚生労働省 社会・援護局長 中村秀一 様
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 中村吉夫 様
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 新村和哉 様

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。

 平素より、わが国の精神保健医療福祉施策の発展充実にご尽力を賜り、厚くお礼を申しあげます。

 さて、介護保険法の改正や障害者自立支援法の施行をはじめ、近年、社会福祉等を取り巻く環境が大きく変化していることから、福祉人材の資質の確保及び向上、活用の場の充実等が求められており、国家資格を有する福祉人材である社会福祉士及び介護福祉士につきましては、各制度の見直しを図るため、今通常国会に「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案」が上程されていると伺っております。

 私どもは、精神保健福祉士を正会員とする社団法人並びに精神保健福祉士を養成する大学・養成施設等で構成される団体であります。1997(平成9)年12月の精神保健福祉士法(以下「法」という。)制定から10年目を迎える中、同じく国家資格を有する福祉人材である精神保健福祉士につきましても、社会福祉等を取り巻く環境の変化や国民のメンタルヘルスが社会問題となる中、その資質の確保及び向上、活用の場の充実等が求められていると認識しております。

 つきましては、今後、同じく国家資格を有する福祉人材である精神保健福祉士につきましても、下記の点に是非ともご配慮を賜りたく、何卒よろしくお願い申しあげます。


1.国民の精神保健に係る様々な環境変化や「入院から地域へ」という精神保健福祉施策の方向をふまえた精神保健福祉士の役割、責務等の見直しについて検討を開始してください。

2.社会福祉士の養成課程や国家試験の見直しを踏まえ、共通する科目や試験科目(共通科目)の免除がある精神保健福祉士の養成課程や国家試験についても必要な見直しを行ってください。

3.保健医療福祉制度等において、精神保健福祉士を任用資格とする場合や精神保健福祉士の配置を要件とする場合については、任用資格あるいは要件を規定する法令・通知上において、精神保健福祉士を明記するよう検討してください。


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