要望書・見解等

2023年度


標題 第8回精神保健フォーラム 宣言
日付 2024年3月23日
発信者 第8回精神保健フォーラム参加者一同
 
 私たちは本日、精神保健従事者団体懇談会主催の「第8回精神保健フォーラム」に集いました。
 精神保健従事者団体懇談会は1986年の発足以来、精神保健・医療・福祉の改善を図ることを目的とした活動を行ってきていますが、40年近く経った今、私たちはどのような地点にいるのでしょうか?
 1958年の厚生事務次官通知の“精神科特例”は2000年の医療法改正により医療法施行規則に組み込まれました。2011年に精神疾患が5疾病5事業に位置付けられましたが、地域医療構想に精神科は含まれることはなく、独自の道を歩み続けています。2014年の精神保健福祉法改正では医療保護入院の保護者制度が廃止となりましたが、家族等同意という形でその枠組みは維持されたままです。
 このような構造の下、精神科病院は6割以上が1年以上の長期入院者、6割近くが65歳以上の高齢者といういびつな形になってしまっています。精神保健従事者団体懇談会の発足は、宇都宮病院事件のあった時期に遡りますが、40年近く経った現在においても未だに、神出病院、滝山病院などにおいて患者さんの人権を侵害する事件が起きていることは極めて大きな問題であり、私たち従事者にとっても当然の倫理観、人権意識が強く求められるところです。
 我が国は、既に2014年に障害者権利条約を批准しており、同条約第4条“一般的義務”では、「締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する」としています。
 私たちは、障害者権利条約批准国に相応しい精神保健医療福祉体制を構築していかなければなりません。そのためには、精神保健医療福祉の構造問題を1つ1つ解決し、時代に相応しい法制度を構築していく必要もあります。
 私たちは、今まで以上に、精神保健医療福祉に関わる者として、現場や制度の中にある差別を見逃さず、障害をもった方のニーズに応え、健康を作り出す従事者として日々邁進し、今般の改正精神保健福祉法の実施状況を注視しつつ、法や制度のあるべき姿を追求することをここに宣言します。

 
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標題 精神障害のある刑務所出所者等の支援に関する意見書
日付 2024年3月14日
発翰番号  JAMHSW発第23-476号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  法務省 矯正局長 花村博文 様
 
 公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下「本協会」という。)では、「刑事司法精神保健福祉委員会」を設置し、精神障害のある刑務所出所者等の社会復帰支援の在り方について検討を重ねております。2009年度より特別調整がスタートし、矯正施設(刑務所、少年院)にて精神保健福祉士又は社会福祉士の非常勤配置が始まり、2014年度からは常勤の福祉専門官の配置が進められております。しかしながら、矯正施設という司法領域におけるソーシャルワークの展開においては、施設内での福祉職の立ち位置や関係機関との連携等、未だ多岐にわたる課題があるものと推察いたします。
 そこで、本協会では別紙のとおり、昨年3月に矯正施設に勤務する福祉専門官及び非常勤の福祉職の方々を対象としたオンライン座談会を開催し、現状と課題の実態把握を行いました。その結果をもとに、矯正施設における精神障害者の支援がより円滑に進められるように、下記のとおり提案いたしますので、ご高配のほどお願い申しあげます。
 

 
1.矯正施設内における精神障害者への支援において、障害特性に関する知識等をもつことでより適切な支援が行えると考えます。特に受刑生活を支える刑務官においては、障害特性に加えて、地域での障害福祉サービスなどを知っていただくことで、社会復帰支援につながる処遇を期待できると考えます。
 刑務官等を対象とした研修会などを実施する場合、協力できる人材等については、ぜひ本協会までご相談ください。


  2.福祉的支援が必要な受刑者は、出所後すぐに福祉等のサービスを利用することが重要です。そこで、年金、各種障害者手帳、介護保険、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等の申請に要する診断書等の作成を必要とする場合がありますが、矯正施設医務部などの協力と理解が不可欠です。
 一方で、矯正施設内の医師不足の課題や受刑者医療そのものの限界を地域側も理解し、できる協力を考える必要もあります。精神科治療を要する受刑者の医療環境改善に関係する協議等には、専門職団体として、本協会も協力できる余地があると考えます。


  3.長期受刑者や累犯者に対しては、出所後の生活を円滑に営めるよう、出所後の地域生活において多様なサービス等を活用するための中間処遇施設と連動したプログラムの導入が重要です。プログラム等の実施の際には、刑務所内の人的資源に加えて、地域の多様な人材を積極的に活用してください。
 特に精神障害者の支援においては、出所者が受刑中に得た生活習慣等が及ぼす社会生活上での弊害や、社会生活とのギャップから生まれる課題を地域の支援者が矯正施設側に伝えることで、さらにシームレスな体制強化を目指すことができると考えます。


  4.刑務所が独自に帰住調整をする際にも、地域の支援者が当事者を理解し、お互いの信頼関係を出所前に構築することが重要です。一方で、精神科医療機関を含む地域支援者との連携においては、司法領域の特性から機密性の高い内容を取り扱うため、事前の情報提供、情報共有に関して慎重な対応が求められます。
 本人の生活上の課題に着目した際、矯正施設側と地域支援者側の課題のとらえ方に乖離が生じることもあることから、帰住先の地域の精神科医療機関や地方公共団体職員等による事前面談等の環境改善が図られていますが、実態としては不十分であると理解しています。特に、福祉的支援が必要な受刑者が元の居住地域から遠隔にある矯正施設に収容された場合、希望する帰住先の地域との連携、調整に困難が生じ、出所する際に必要な支援を受けることができないことがあります。
 地域移行後の生活との切れ目のない支援を提供できようにするため、円滑な情報共有を可能とする根拠規定の整備や、刑務所の福祉専門官等が帰住予定地域での会議に出席するための旅費等の予算措置をお願いいたします。


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標題 【見解とメッセージ】滝山病院入院患者虐待事件に関する調査報告書及び虐待防止提言書の公開を受けて
日付 2024年2月9日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  すべての精神保健福祉士の皆さまへ
 
 2023年2月に報道された医療法人社団孝山会滝山病院(以下「滝山病院」という。)での入院患者への虐待行為についてはその後刑事処分が確定し、2023年12月18日に滝山病院第三者委員会による調査報告書(以下「報告書」という。)が、また同12月27日には滝山病院・虐待防止委員会による提言書(以下「提言書」という。)が、それぞれ公表されました。2020年の神戸、2022年の静岡における報道など、精神科病院での相次ぐ患者虐待事件の発覚も記憶に新しいところであり、今回の報告書及び提言書の内容を踏まえ、精神障害者の権利擁護と社会的復権を使命とする職能団体としての見解を示すとともに、2024年度の改正精神保健福祉法施行を前に、すべての精神保健福祉士の皆さまにメッセージを発信いたします。

 
  1 報告書及び提言書を受けて私たちが認識すべきこと

(1)虐待を生みやすい組織風土の問題が中心にあると考えます。
 本事件は、虐待を行った職員個人のモラルや倫理観のみに帰結できない問題を孕んでいます。病院管理者を中心とする経営陣による法令遵守意識の欠如、および職員の大半が問題を認識していながら改善につなげられなかった組織の脆弱さや風土が虐待を常態化させるに至ったものと認識しています。

(2)「退院促進措置」の機能不全が背景にあると考えます。
 入院患者への退院支援が不十分であったことは、精神保健福祉士が配置されずソーシャルワークが展開されてこなかったことからも明らかです。退院後生活環境相談員は本来の役割を果たせず、また、医療保護入院者退院支援委員会は形骸化しており、精神保健福祉法で定められた退院促進措置が十分機能しなかったことも、結果として虐待や不適切ケアを見過ごすことに繋がっていたものと考えます。

(3)精神科患者の透析等の身体合併症への対応困難を放置してきた行政の責任があると考えます。
 「精神疾患のみならず重度の身体合併症を併発して人工透析等の治療が日常的に必要な患者の方々の診療・治療の難しさを実感させられた」との報告は、東京都及び近郊に居住し重度慢性の身体疾患を抱える精神障害者が滝山病院を頼らざるを得なかった事態を示唆しています。精神障害者が適切な身体科医療を受けることの困難さを長年認識しながら適切な医療施策を講じてこなかった行政に責任があるものと考えます。

(4)他医療機関、生活保護行政等が、最後の受け入れ先として滝山病院を利用し続けていたという問題があると考えます。
 滝山病院が健全な医療体制を備えていないことを知りながら、透析が必要な患者の転院先として滝山病院を選択し続けてきた他医療機関等、それを容認してきたり直接的にも滝山病院を活用してきたりした生活保護行政等の実情は、本事件の背景にある問題と考えられます。他医療機関や生活保護行政等の関係者には、問題を傍観してきた自らの姿勢に関する反省が必要だと考えます。

(5)形式的な改善報告を容認し、指導結果を確認しなかった東京都の不作為も問題であったと考えます。
 東京都は、精神保健福祉法に基づいて実施指導を行い、数年に渡って「虐待を防止するための必要な措置を講じること」など改善指導を行いながら、書面による改善報告を受けただけで指摘事項の改善状況を把握していませんでした。このような不作為により更なる虐待を防止することができなかったものと考えます。

(6)「必要悪」を容認してきた社会の在り様自体を変革しなければならないと考えます。
 家族や行政、近隣の医療機関及び支援関係者が滝山病院に依存していた実態は、誰かの人権を犠牲にして便益性を求める社会の姿を現しており、「必要悪」として容認し傍観してきた事実は大きな問題です。歴史的にみても、特に精神科病院において繰り返されてきた権利侵害の構図は、滝山病院の問題を生み出した社会の問題と重なります。今回の事件の発覚と背景の検証を機に、今度こそ精神障害者が我慢や苦難を強いられることのないよう人びとの認識を改め、社会構造を変えていかなければならないと考えます。

   2 私たち精神保健福祉士が取り組むべきこと

(1)滝山病院の現入院患者の望む暮らしの実現に向けて、各自の最善の実践をしてください。
 滝山病院に入院中のすべての方の権利擁護を意識し、速やかに退院や転院を希望する入院患者への支援を行う必要があります。一人ひとりの精神保健福祉士が、この事件を静観せず主体的に最新情報を集め、滝山病院は元より東京都や一般社団法人東京精神保健福祉士協会等と連携して、ご自身の立場で最善の実践をしてください。
 具体的には、滝山病院で行なわれている退院・転院支援を側面的に支え、入院患者が望む場所に移るために、各市町村等自治体や関係機関と協力して受け入れ態勢を整える必要があります。本協会としても東京精神保健福祉士協会と連動し、引き続き情報集約と発信に努めてまいります。精神保健福祉士として、滝山病院および入院患者の動向に関心をもち続け、個人もしくは組織として最善の実践を展開してください。

(2)精神障害者が適切に医療を受けられるように身体科医療との連携と体制整備を進めてください。
 精神障害者が精神疾患や障害を理由として適切な身体科医療を受けられないことは、障害者差別にあたります。合理的配慮の観点に立ち、事態の改善に向けて身体科医療との連携を強めるとともに、自治体単位での医療提供体制の整備に取り組んでください。

(3)当事者の人権が守られる組織風土を各精神科病院において増幅、構築してください。
 人権意識の低下した組織風土は、社会の抑圧や排除、人々の価値観の違い、あるいは支援者の優位性など、さまざまな要因によって生じます。精神科病院内で虐待や権利侵害が起きるこうしたメカニズムを正しく理解し、その防止に向けてセルフチェックや職員間の相互点検を恒常的に行う必要があります。精神保健福祉士として、自組織をはじめ、地域・圏域単位で虐待の未然防止のために多職種や関係者との協議及び対策立案に関与し、当事者の人権が守られる組織風土を確立してください。

(4)行政監査の実効性を高めてください。
 精神障害者の人権が守られるには、行政監査が実効性のあるものでなくてはなりません。
 行政機関に勤める精神保健福祉士は行政監査を適切に行い、精神科病院に勤める精神保健福祉士は指摘事項の正しい把握と改善を行い、両者が状況確認をくり返すことで行政監査の実効性を高め、地域に信頼される精神科病院作りのために協働してください。

(5)精神科病院の虐待防止、入院者訪問支援事業に積極的に関与してください。
 2024年4月に施行される改正精神保健福祉法により、精神科病院での虐待やそれが疑われる事案を発見した者には通報義務が課せられます。また、虐待相談窓口の設置や職員への教育等、虐待対応への仕組み作りが必須となります。精神保健福祉士はこれらに積極的に関与し、市町村、都道府県内の精神保健福祉士間の情報交換を行い仕組みの整備に努めてください。
 あわせて本改正では「入院者訪問支援事業」(都道府県の任意事業)が創設され、外部の支援員が病院を訪問し、市町村長同意による非自発的入院者等と交流を図ることができるようになります。本事業は入院患者の権利擁護を推進する重要な取り組みですので、希望する入院患者が利用できるよう事業の周知を図るとともに、確実な事業の実施に向けて自治体との協働を強化してください。

(6)協議の場を活用して地域移行支援に取り組んでください。
 権利侵害に関わる事案は、精神科病院に勤務する精神保健福祉士に限らずすべての精神保健福祉士が自らの実践課題として捉える必要があります。滝山病院に限らず精神科病院からの退院を希望している方が望む場所への生活に移行することができるよう、「自立支援協議会」や「にも包括」等の協議の場を活用し、退院阻害要因の解決に向けた地域の基盤整備と合わせて、地域移行支援を推進してください。

  【都道府県支部へのお願い】
 各都道府県支部は都道府県精神保健福祉士協会と連携し、滝山病院事件を含む患者虐待事件の記憶を風化させることなく教訓化するとともに、精神保健福祉士一人ひとりが自らのミッションを自覚し、精神障害者の「権利擁護」や「社会的復権」の実践をすることができるよう取り組んでください。本協会としては、各地での取組み課題を提案するとともに、その成果を全国で共有する機会を設けていきたいと計画しています。
 本協会構成員の積極的な関与を何卒よろしくお願いいたします。

  <補足>滝山病院での虐待報道後の本協会の取組み
  • 理事会や関連する各委員会等での情報集約
  • 滝山病院の入院患者意向調査を行っていた一般社団法人東京精神保健福祉士協会との情報交換
  • 精神科病院における被虐待患者への支援のあり方等に関する講演会の開催(於「2023年度都道府県支部長・事務局長会議」)と、各都道府県支部等で同テーマについて考える機会の提供(講演動画を本協会WEBサイト(会員ページ)で公開中
  • 2023年第1回ブロック会議において、「全国の精神科医療機関における虐待に対する予防・防止にかかる件、精神科医療と身体合併症治療の問題、医療保護入院における市町村長同意の現状等」に関して協議
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標題 「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」に関する意見
日付 2024年1月5日
発翰番号  JAMHSW発第23-392号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 アルコール健康障害対策推進室 室長 江口 満 様
 
 本協会は、精神障害者やメンタルヘルスの生きづらさを抱えた方々の社会的復権とウェルビーイングを実現するために活動をしている公益団体です。アルコール依存症や飲酒による社会的な弊害(アルコール関連問題)は精神保健福祉の支援が必要であり喫緊かつ重要な課題であると認識しています。
 今般、第2期アルコール健康障害対策推進基本計画における基本的施策として提示された「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」(以下「ガイドライン」という。)が、真に国民の健康に寄与する実効性のあるものとなるよう、下記のとおり意見を述べます。
 

 
1.飲酒はしないことが最も良いと明記してください。

○ ガイドラインによって、「1日に男性40g、女性20gまでは飲んでいい」という間違った認識が独り歩きし国民に広がることのないようにしてください。

○ 各自治体において、第1次「健康日本21」で示された「節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する」を指標とし、「アルコール健康障害対策推進計画」を地域の関係団体と協働して啓発活動を推進してきた歴史があります。この指標が消えることは、今まさに取り組みが進められている「第2期アルコール健康障害対策推進計画」の策定に大きな混乱を生じさせるばかりでなく、国民の健康増進のためにする官民協働による長年の努力と成果を根底から崩し、大きな混乱を生じさせてしまいます。

○ 3の(3)①「アルコール依存症とは」に続く説明の「大量のお酒を長期にわたって飲み続けることが主な原因で発症」の表現について、「大量」の捉え方は個々人で異なり混乱を招きかねません。ここは「不適切な量のお酒」という文言に変えることを提案します。

○ 4の(1)から(2)にかけて、非常に解りにくい説明になっています。結果として「男性は40g飲んでいい」という誤解に繋がることを甚だ危惧します。上述の「健康日本21」で示す指標と共に、国立高度専門医療研究センター6機関の共同研究に基づく「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」の「飲む場合は、1日あたりの飲酒量は、男性でアルコール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合程度)、女性はその半分に抑える」もまた文中に併記することによる、節度ある飲酒量の徹底周知に努めてください。(※1)


  2.ガイドラインを用いて、アルコール依存症の理解を促進してください。

○ 個人の身体的健康への表記にとどまらず、不適切な飲み方による家族への影響や社会的な側面からみた関連問題についての説明も加えてください。

○ 例えば、酔って人格が変容したかのような言動に出ることは、夫婦間暴力に発展することが少なくなく、それはまた児童の成育過程に安心・安全を感じられない虐待環境となると言っても過言ではありません。
  この環境の影響を受け、人と安定した関係を作れない「生きづらさ」を抱えた子ども達を1970年代にアメリカのソーシャルワーカーらは「アダルトチルドレン」という言葉で表しました。おおよそ50年経った今日、精神保健福祉の現場では、世代間で負の連鎖が続く深刻な課題としてとらえています。
また、一般医療の現場に働く医療従事者や救急隊員は、酩酊者による暴言・暴力にさらされています。実際、各種の薬物を有害度でランクづけした研究では、アルコールが他の薬物を抜いて「他者への害」と「自身への害」の総得点でワースト1位という結果が示されています。(※2)

○ ②「行動面のリスク」の項目には、「アルコール依存症に罹患している人たちをはじめ、アルコールの不適切な使用により表出される怒りは、虐待あるいはネグレクト環境を招く等の家族の混乱を生じさせる場合が少なくありません。」を追記してください。(※3)

○ 内閣府による「アルコール依存症に対する意識に関する世論調査」によると、アルコール依存症についての国民のイメージは、極めてネガティブなものです。
アルコール依存症者を「酒に酔って暴言を吐き、暴力を振るう」人であり、「昼間から仕事にも行かず、酒を飲んでいる」人であるという見方をしている回答が多数を占めています。
アルコール依存症者の本来像である「断酒を続けることで回復する」と理解する人は極めてわずかです。ガイドラインでは、アルコール依存症者とその家族の回復を阻む、こうしたスティグマの解消に繋がる記述が追加されることを強く期待します。(※4)


  3.発がん性との関連をはじめとして、不適切な量のエチルアルコール摂取の常態化がもらたす深刻な身体的合併症について、わかりやすく説明をしてください。

○ 知識の欠如により安易にエチルアルコールを摂取してがんに罹患した方たちの語りを多々聞くなかで、依存症専門治療後においても回復に必要な自助グループへの参加を暮らしの軸として、断酒によって生活を再建しようとしている最中に、食道がんや乳がんなどの身体疾患で亡くなる方々を目の当たりにすることも少なくありません。飲酒と深刻な身体疾患の関係性について、わかりやすく正しい知識を普及することは重要であると実感しています。ついては、下記の表を知識の普及のためにガイドラインで示してください。

○ エチルアルコールには心血管毒性、発がん性があり、世界心臓学会、アメリカ臨床腫瘍学会でも「飲まないことがベストである」としています。(※5)

○ 研究論文で示された量は週当たり量でしょうが、「程度」という表現で概括して国民 にわかりやすく提示するのが、ガイドライン作成の目的であるはずです。


  <疾病別リスクと飲酒量(純アルコール量)>
少しの飲酒でもリスクが上がる  高血圧(男女)・胃がん(男性)・食道がん(男性)・脳出血(女性) 
日々10g程度でリスクが上がる 乳がん(女性)・脳梗塞(女性)
日々20g程度でリスクが上がる 大腸がん(男女)・脳出血(男性)・前立腺がん(男性)・肝がん(女性)・胃がん(女性)
日々40g程度でリスクが上がる 脳梗塞(男性)・喫煙者の肺がん(男性)
日々60g程度でリスクが上がる 肝がん(男性)

  (※1)疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)(令和3年2月)
[URL]https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cohort/040/010/index.html
(※2)David Nutt:Drug harms in the UK:a multicriteria decision analysis.Lancet,2010
(※3)猪野亜朗,金田一賢顕,松永哲夫,猪野美春,吉本尚:「怒りと飲酒の繋がり」医療関係者を中心に行った調査-第四報-,日本アルコール・薬物医学会雑誌,58(2),1-21,2023.
(※4)「アルコール依存症に対する意識に関する世論調査」の概要(令和5年11月/内閣府政府広報室)
(※5)World Heart Federation: THE IMPACT OF ALCOHOL CONSUMPTION ON CARDIOVASCULAR HEALTH. 2022.邦訳:心臓血管の健康への飲酒のインパクト
LoConte,NK,Brewster,AM,Kaur JS,Merrill,JK,Alberg,AI:Alcohol and Cancer:A Statement of the American Society of Clinical Oncology. 2017.
邦訳:アルコールと癌:アメリカ臨床腫瘍学会の声明
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標題 群馬県桐生市における不適切な生活保護行政に対する声明
日付 2023年12月27日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)/公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 会長 野口百香、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 保良昌徳
 
https://jfsw.org/2023/12/28/3277/
 
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標題 ムンター・アミラ氏の即時釈放要求について
日付 2023年12月26日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)/公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 会長 野口百香、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 保良昌徳
 
https://jfsw.org/2023/12/26/3267/
 
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標題 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見
日付 2023年11月21日
発翰番号  JAMHSW発第23-344号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  自由民主党 政務調査会 障害児者問題調査会長 衛藤晟一 様
 
 精神障害のある人々の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、下記の通り意見を申しあげます。
 

 
1.精神科病院からの地域移行と地域生活の定着の着実な推進に向けて
 令和2年患者調査では、精神病床における1年以上の長期入院者が未だに約17万人いる状況が分かっています。入院中の地域移行支援と地域移行後の自立生活援助の連続的・一体的な利用が促進され、長期入院等の解消がさらに進むよう、以下の通り提案いたします。

1)自立生活援助のサービス管理責任者配置要件の緩和について
<意見>
 相談支援事業所が自立生活援助の指定を受けやすくなるように、相談支援専門員の資格を以てサービス管理責任者としてみなすことを提案いたします。

2)入所・入院中からの地域移行支援と自立生活援助を一体的に行った場合の実績としての評価について
<意見>
 地域移行支援を提供し、利用者の地域移行後に引き続き自立生活援助の支援を行った実績が1人以上の相談支援事業所に対して、自立生活援助の基本報酬を引き上げることを提案いたします。

3)地域定着支援の家族条件にかかる提示について
<意見>
 地域定着支援の家族条件にかかる提示を自立生活援助と同様にすることを提案いたします。

4)自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」における情報提供先を訪問看護ステーションへ拡充し、複数機関への情報提供については加算の増額ができるようにすることを提案いたします。

5)自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用として、電話以外のメールやビデオ通話等を活用した支援を報酬上評価することを提案いたします。

  2.共同生活援助(以下、「グループホーム」とする)における一人暮らし等に向けた支援の充実に向けて
 障害があっても、本人が暮らしたい場所で、暮らしたい人と「ごく当たり前の生活」を営むことが保証されるよう、一人暮らし等を希望する利用者に対する地域との連携を基盤とした支援や、退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームの実現に向け、以下の通り提案いたします。

1)グループホームにおける地域協働加算の創設について
<意見>
 グループホームにおける地域協働加算の創設を提案いたします。

2)居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者の拡大について
<意見>
 居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者のグループホームへの拡大を提案いたします。

3)個別計画訓練支援加算のグループホームへの拡大について
<意見>
 自立訓練(生活訓練)において算定できる個別計画訓練支援加算について、自治体への届出、精神保健福祉士等専門職による個別訓練実施計画の作成、毎月の計画の評価・見直し、関係者との情報共有等を条件として、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームも加算対象サービスとすることを提案いたします。

4)地域生活支援拠点等加算について
<意見>
 市町村に地域生活支援拠点等として位置付けられた短期入所事業所については、緊急時の受入対応等の当該拠点等の役割の一端を担うことが、短期入所サービス費の算定における利用開始日の加算として評価されていますが、これを、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームのうち、特に地域生活支援拠点等として評価されるべき条件を満たす事業所(例えば前述「2-1)」のような加算等を算定した実績のあるグループホーム等)に拡大することを提案いたします。

  3.就労系障害福祉サービスにおける支援の推進に向けて
 就労を希望する障害者のニーズの多様化や社会経済状況が変化している中で、障害者が働きやすい社会を実現するため、障害者一人一人の希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援を提供することが課題として示されました。そのため、就労系障害福祉サービスにおいて、よりきめ細かい支援を実施し、本人が望む暮らしの実現に向けて、以下を提案いたします。

1)就労継続支援A型事業におけるスコア表の修正について
<意見>
 就労継続支援A型事業におけるスコア表の以下の部分について、質の向上につながるよう修正することを提案いたします。
①「多様な働き方」の「②利用者を職員として登用する制度について」の項の2点目について、「前年度の実績がある」を「これまでに実績があり、雇用が継続している」とすること
②「多様な働き方」の「⑧傷病休暇等の取得に関する事項」の項の2点目について、「就業規則等で定めており、前年度の実績がある」を「就業規則等で定めており、これまでに実績がある」とすること

2)就労継続支援B型事業における多様な評価軸に基づいたサービスの質の評価について
<意見>
 就労継続支援A型事業と同様にスコア制を導入し、以下のような多様な評価軸に基づいてサービスの質を評価することを提案いたします。
①利用のフレキシブルさ(日数や時間について、短時間利用も受け入れているか)
②生産活動以外のプログラムがあるか(「就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」として、強みや能力などに着目したものであるか等)
③利用者の参画(生産活動のことを利用者も一緒に考えたり意見を言ったりする機会を設けているか)
④作業の多様性や作業のための環境整備や配慮があるか

   以上
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標題 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見
日付 2023年11月6日
発翰番号  JAMHSW発第23-326号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  公明党 障がい者福祉委員会 委員長 三浦信祐 様、事務局長 宮崎 勝 様
 
 精神障害のある人々の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、下記の通り意見を申しあげます。
 

 
1.精神科病院からの地域移行と地域生活の定着の着実な推進に向けて
 令和2年患者調査では、精神病床における1年以上の長期入院者が未だに約17万人いる状況が分かっています。入院中の地域移行支援と地域移行後の自立生活援助の連続的・一体的な利用が促進され、長期入院等の解消がさらに進むよう、以下の通り提案いたします。

1)自立生活援助のサービス管理責任者配置要件の緩和について
<意見>
 相談支援事業所が自立生活援助の指定を受けやすくなるように、相談支援専門員の資格を以てサービス管理責任者としてみなすことを提案いたします。

2)入所・入院中からの地域移行支援と自立生活援助を一体的に行った場合の実績としての評価について
<意見>
 地域移行支援を提供し、利用者の地域移行後に引き続き自立生活援助の支援を行った実績が1人以上の相談支援事業所に対して、自立生活援助の基本報酬を引き上げることを提案いたします。

3)地域定着支援の家族条件にかかる提示について
<意見>
 地域定着支援の家族条件にかかる提示を自立生活援助と同様にすることを提案いたします。

4)自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」における情報提供先を訪問看護ステーションへ拡充し、複数機関への情報提供については加算の増額ができるようにすることを提案いたします。

5)自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用として、電話以外のメールやビデオ通話等を活用した支援を報酬上評価することを提案いたします。

  2.共同生活援助(以下、「グループホーム」とする)における一人暮らし等に向けた支援の充実に向けて
 障害があっても、本人が暮らしたい場所で、暮らしたい人と「ごく当たり前の生活」を営むことが保証されるよう、一人暮らし等を希望する利用者に対する地域との連携を基盤とした支援や、退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームの実現に向け、以下の通り提案いたします。

1)グループホームにおける地域協働加算の創設について
<意見>
 グループホームにおける地域協働加算の創設を提案いたします。

2)居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者の拡大について
<意見>
 居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者のグループホームへの拡大を提案いたします。

3)個別計画訓練支援加算のグループホームへの拡大について
<意見>
 自立訓練(生活訓練)において算定できる個別計画訓練支援加算について、自治体への届出、精神保健福祉士等専門職による個別訓練実施計画の作成、毎月の計画の評価・見直し、関係者との情報共有等を条件として、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームも加算対象サービスとすることを提案いたします。

4)地域生活支援拠点等加算について
<意見>
 市町村に地域生活支援拠点等として位置付けられた短期入所事業所については、緊急時の受入対応等の当該拠点等の役割の一端を担うことが、短期入所サービス費の算定における利用開始日の加算として評価されていますが、これを、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームのうち、特に地域生活支援拠点等として評価されるべき条件を満たす事業所(例えば前述「2-1)」のような加算等を算定した実績のあるグループホーム等)に拡大することを提案いたします。

  3.就労系障害福祉サービスにおける支援の推進に向けて
 就労を希望する障害者のニーズの多様化や社会経済状況が変化している中で、障害者が働きやすい社会を実現するため、障害者一人一人の希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援を提供することが課題として示されました。そのため、就労系障害福祉サービスにおいて、よりきめ細かい支援を実施し、本人が望む暮らしの実現に向けて、以下を提案いたします。

1)就労継続支援A型事業におけるスコア表の修正について
<意見>
 就労継続支援A型事業におけるスコア表の以下の部分について、質の向上につながるよう修正することを提案いたします。
①「多様な働き方」の「②利用者を職員として登用する制度について」の項の2点目について、「前年度の実績がある」を「これまでに実績があり、雇用が継続している」とすること
②「多様な働き方」の「⑧傷病休暇等の取得に関する事項」の項の2点目について、「就業規則等で定めており、前年度の実績がある」を「就業規則等で定めており、これまでに実績がある」とすること

2)就労継続支援B型事業における多様な評価軸に基づいたサービスの質の評価について
<意見>
 就労継続支援A型事業と同様にスコア制を導入し、以下のような多様な評価軸に基づいてサービスの質を評価することを提案いたします。
①利用のフレキシブルさ(日数や時間について、短時間利用も受け入れているか)
②生産活動以外のプログラムがあるか(「就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」として、強みや能力などに着目したものであるか等)
③利用者の参画(生産活動のことを利用者も一緒に考えたり意見を言ったりする機会を設けているか)
④作業の多様性や作業のための環境整備や配慮があるか

   以上
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標題 2024(令和6)年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2023年9月29日
発翰番号  JAMHSW発第23-278号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 保険局 医療課長 眞鍋 馨 様
 
 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、2022年12月に成立した改正精神保健福祉法の主要改正事項の施行は、次期診療報酬改定と同時期の2024年4月1日となります。そのため、精神医療に係る診療報酬の改定にあたっては、精神障害者の権利擁護の推進、措置入院者及び医療保護入院者の退院促進措置の取り組みの強化といった法改正の趣旨を踏まえて行われる必要があると考えております。

 つきましては、2024年度の診療報酬改定に向けて以下のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。
 

 
1.通院・在宅精神療法(I002)のうち、通院精神療法の療養生活継続支援加算については、在宅精神療法においても算定できるようにするとともに、看護師又は精神保健福祉士が同時に担当する療養生活継続支援の対象患者の数は1人につき40人以下として、加算点数を引き上げてください。

<理由>
 在宅精神療法は、在宅で療養を行っている通院が困難な患者に対して訪問診療等に際して実施することとなりますが、対象患者の中には集中的な支援を必要とするものの精神科在宅患者支援管理料の算定対象とはならないものも含まれております。そのような患者に対して看護師又は精神保健福祉士が療養生活継続支援を担当し、訪問による包括的支援マネジメントを実施することで、社会的に孤立している状況からの脱却を図ることが可能となります。
  現行の療養生活継続支援加算にかかる施設基準では、看護師又は精神保健福祉士が同時に担当する療養生活継続支援の対象患者の数は1人につき80人以下とされています。1月に上限の80人を担当する場合は、1日当たり4人程度の療養生活継続支援を実施することとなります。しかしながら、当該支援には対面による20分以上の面接のほか、アセスメントに基づく支援計画書の作成、保健所、市町村、指定特定相談支援事業者、障害福祉サービス事業者その他の関係機関と連絡調整が含まれており、専従ではない従事者が担える業務量を超えることとなります。障害者総合支援法に規定する計画相談支援においては、1人の相談支援専門員が1月に実施する標準担当件数(取扱件数)が設定され、40件以上となる場合の基本報酬の逓減制が導入されていることからも、担当する療養生活継続支援の対象患者の数は1人につき40人以下とするこことが妥当と考えます。

  2.精神病棟入院基本料及び精神病棟に係る特定入院料に精神科入退院支援加算(仮称)を新設してください。

<具体的要望内容>
 精神保健福祉法に規定する退院後生活環境相談員等が、入院後1週間以内に退院が困難な要因を有する患者を「包括的支援マネジメント導入基準」に照らして抽出し、病院内の他職種及び地域の関係機関とのカンファレンス等により退院支援計画を作成し、入院中から当該患者に包括的支援マネジメントを実施した場合において、退院時に精神科入退院支援加算を算定できるようにしてください。

<理由>
 現在精神病棟以外の病棟入院料等において算定が認められている入退院支援加算は、患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるように、施設間の連携を推進した上で、入院早期より退院困難な要因を有する患者を抽出し、入退院支援を実施することを評価するものとして2018年度改定において新設されました。
 「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」報告書(2022年6月9日)には、入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実として、「包括的支援マネジメントを推進し、医療、障害福祉・介護その他のサービスを切れ目なく受けられる体制を整備する」ことが謳われております。
 また、「地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究」(令和3年障害者総合政策推進事業)では、入院中からの包括的支援マネジメントの実装研究において、入院中から精神症状と生活障害が改善され、1年後においても精神症状と生活障害が改善されたまま維持されていることが明らかにされ、入院中からの包括的支援マネジメントの実施の有効性が示唆されており、こうした取り組みを診療報酬上評価することが必要と考えます。
 障害福祉サービス等報酬及び介護報酬においては医療機関と連携を図った場合の報酬が設定されていることから、精神科病院においても入院早期からの退院後の生活や療養環境を見据えた地域援助事業者や行政機関との連携を評価する報酬が新設されることで、入院患者の円滑な地域生活への移行が更に進むと考えます。

  3.精神科退院時共同指導料(B015)の算定要件を一部緩和してください。

<具体的要望内容>
 外来又は在宅を担う保険医療機関の多職種チームのうち、共同指導への参加を必須とする職種については、精神科退院時共同指導料1のイ及びロともに、精神科の担当医を除外して、看護師等又は精神保健福祉士のいずれか1人以上としてください。
 また、当該患者の入院する保健医療機関が引き続き退院後の外来及び在宅を担う場合においても、当該指導料を算定できるようにしてください。

<理由>
 精神科退院時共同指導料については施設基準の届出が低位に留まっており、また届出を行っている医療機関においても当該指導料の算定回数及び患者数は非常に少ない状況です。その要因としては、外来又は在宅を担う保険医療機関の精神科の担当医において共同指導に参加する時間の確保が困難であることが考えられます。外来又は在宅を担う保険医療機関の共同指導に係る負担を軽減することにより、当該指導料の対象となる患者の継続的な支援が可能となります。

  4.診療報酬において医療保護入院者退院支援委員会を評価してください。

<理由>
 精神保健福祉法の改正により、医療保護入院の入院期間は、最大6か月以内で省令に定める期間とされ、入院期間の更新には、対象患者の医療保護入院者退院支援委員会の開催により、入院継続に当たって必要な退院促進措置を検討することが要件とされます。
 医療保護入院者退院支援委員会は、従前より個別ケア会議の要素が高く、当該委員会の開催に係る地域援助事業者及び関係者との日程調整に相当の時間を要するとともに、委員会開催に対する報酬等は全く保障されておりません。当該委員会の開催が診療報酬上評価されることで、医療保護入院者の早期の退院が促進されると考えます。

  5.精神科退院前訪問指導料(I011-2)の回数制限を緩和してください。

<具体的要望内容>
 精神科退院前訪問指導料は現行において、入院期間が6月を超えると見込まれる患者にあっては、6回に限り算定可能とされているところ、10回に限り算定可能としてください。

<理由>
 入院している精神疾患患者に対して、退院後の療養上必要な指導や在宅療養に向けた調整を行う精神科退院前訪問指導は、円滑な退院のために有効な支援となっております。しかしながら入院期間が長期となる患者については、患家や障害福祉サービス等の利用調整等の退院後の療養環境の整備のために、当該指導の実施が6回では足りない場合が少なくありません。

  6.「精神科訪問療養生活環境整備支援料」(仮称)を新設してください。

<具体的要望内容>
 精神保健福祉士等が患家等に訪問し患者又はその家族等に対して、療養生活環境を整備するための支援を行った場合の「精神科訪問療養生活環境整備支援料」(仮称)を新設してください。算定可能機関は、精神科を標榜する医療機関及び精神科訪問看護療養費の基準を満たす訪問看護ステーションとし、週3回を限度に算定可能とします。
 対象は、入退院を頻回に繰り返す、家族によるサポートが難しい、障害福祉サービス等の社会サービスにつながっていない等、治療中断となるハイリスク患者に限定することが適当と考えます。また、療養生活環境の整備を目的とするため、患家への訪問に限らず、就労支援事業所等の日中活動の場への同行、他科を含む医療機関への連携目的による受診同行等を行った場合も算定することが可能とする必要があります。

<理由>
 精神科の通院・在宅等患者は、安定した地域生活を維持するために、生活上の課題等が病状に大きく影響することを防ぐ必要性が高い者が多く存在します。そのための相談及び制度活用、日中活動の場の確保や利用及び利用機関等と医療機関との連携など、生活課題と医療的ケアの関連についてのニーズを生活の場において把握し支援に結び付けるといった療養生活環境整備は、精神保健福祉士の専門性を生かした訪問支援が有効と考えます。

  7.入院中の患者以外の患者の家族に対する心理教育等を評価してください。

<理由>
 精神疾患患者の家族に対する心理教育(以下、「家族心理教育」)は、家族に精神障害についての正しい知識や心理的なサポートを提供するものです。家族心理教育は、患者に対する否定的な感情を含む家族感情表出(EE)軽減し、利用者の再入院の防止等の効果が科学的に実証された根拠に基づく実践の1つとされていますが、医療機関での実践は普及していない現状にあります。
 家族心理教育が診療報酬で評価されることにより、これに取り組む医療機関が増えることで患者の地域生活継続期間の延長や再入院の防止の促進が期待できます。

   以上
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標題 「医療保護入院者の退院促進に関する措置について」の改正に関する意見
日付 2023年9月13日
発翰番号  JAMHSW発第23-252号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課 課長 小林秀幸 様
 
 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、精神保健福祉法の改正により、措置入院者に対する退院後生活環境相談員の選任の義務付け等の退院促進措置が規定されるとともに、医療保護入院の入院期間が法律上定められたこと等により医療保護入院者退院支援委員会の位置づけが変わることとなります。

 つきましては、2024年4月の施行に向けた「医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(2014年1月24日発出、障害保健福祉部長通知)の改正に関して、退院後生活環境相談員の多数を占める精神保健福祉士の職能団体としての意見を下記の通り提出いたします。本協会としましては、より一層の退院促進に向けて支援の質向上に尽力する所存ですので、ご高配のほどよろしくお願い申しあげます。
 

 
1.「退院後生活環境相談員の選任」について
  • 退院後生活環境相談員の資質向上には研修が欠かせないことから、都道府県等において研修を実施できるよう体制整備を行っていただきたいこと
  • なお、多職種を対象とした退院後生活環境相談員の役割及び業務に関する研修の開催にあたっては、本協会及び都道府県精神保健福祉士協会において当該研修の企画・運営等に積極的に協力・参画する意向があること
  • 配置の目安として示されている「退院後生活環境相談員1人につき、概ね50人以下の医療保護入院者を担当すること」については、担当数を「概ね30人以下」としていただきたいこと

2.「資格」について
  • 退院後生活環境相談員として有するべき資格については、退院後生活環境相談員としての質の均てん化を図るためにも、精神保健福祉士及び精神障害者に関する業務に従事した経験を有する保健師、看護師、准看護師、作業療法士又は社会福祉士としていただきたいこと

3.「業務内容」について
  • 退院後生活環境相談員は、常に多職種による支援チームの一員であることを念頭に置いてその業務にあたることを明記していただきたいこと
  • 「入院時の業務」である「退院後生活環境相談員が選任された場合の、当該医療保護入院者及びその家族等に対する説明」については、口頭及び書面等により行うことを明記していただきたいこと
  • 「退院に向けた相談支援業務」のうち「退院に向けた意欲の喚起」については、本人の意向を尊重しつつ行うことが重要であることから、その旨を明記していただきたいこと
  • 「退院に向けた相談支援業務」として、措置入院者においては、保健所による「退院後支援に関する計画」の策定に協力し、円滑な退院に向けて連携を図ることを追記していただきたいこと
  • 「地域援助事業者等の紹介に関する業務」の遂行にあたっては、日常的な地域援助事業者との連携が効果的な取り組みにつながることから、そのことを明記していただきたいこと
  • また、市町村長同意による医療保護入院の場合は、当該患者の家族による支援が希薄であることを鑑み、退院に向けて、入院者訪問支援事業の利用や地域援助事業者、市長村長同意自治体等との連携を図り、退院支援の環境整備に努めることを追記していただきたいこと

4.「地域援助事業者の紹介及び地域援助事業者による相談援助」について
  • 「地域援助事業者による相談援助」として、措置入院者においては、都道府県が主催する精神障害者支援地域協議会(個別ケース検討会議)への出席の要請があった場合には、できる限り出席し、退院に向けた情報共有に努めることを追記していただきたいこと

5.「医療保護入院者退院支援委員会の開催」について
  • 退院支援委員会の出席者については、当該医療保護入院者本人の出席を原則としていただきたいこと
  • 当該医療保護入院者の家族等及び地域援助事業者その他の当該精神障害者の退院後の生活環境に関わる者については、当該医療保護入院者の同意を得られた場合において、ビデオ通話等、情報通信機器の使用による退院支援委員会の出席も可能としていただきたいこと
  • 事務の簡素化の観点から、別添様式3「医療保護入院者退院支援委員会の結果のお知らせ」を廃止し、別添様式2「医療保護入院者退院支援委員会審議記録」の写しを本人等に通知することとしていただきたいこと
   以上
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標題 犯罪被害者支援窓口における支援の充実に向けた要望について
日付 2023年9月5日
発翰番号  JAMHSW発第23-241号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  警察庁 犯罪被害者等施策担当参事官室 御中
 
 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 本協会は、精神障害やメンタルヘルス不調を来たした方の権利擁護と地域生活支援を担うソーシャルワーク専門職の全国組織です。近年は、広く国民の精神保健保持に資するべく、医療、保健、そして福祉の領域における精神保健福祉士の果たす役割はますます重要となっており、医療・生活支援サービス機関はもとより、地方公共団体や学校のほか、保護観察所や矯正施設等刑事司法分野においても、その活動の幅を広げております。

 さて、犯罪被害を受けた方に対しては、様々な支援が求められていることは言うまでもありません。もちろん、刑事司法手続における支援やカウンセリングも大変重要ですが、犯罪被害によって受ける経済的困窮、就労、家事や育児・介護の問題、学校教育の問題など、生活の支援も欠かせません。

 地方公共団体の「犯罪被害者等のための総合的対応窓口」(以下、「総合的対応窓口」という。)、民間被害者支援センター(性被害・性暴力ワンストップ支援センターを含む)や配偶者暴力相談支援センターなどの被害者支援を専門に行う機関のうち、一部ではソーシャルワーク専門職が従事していますが、専門的見地から組織内で意見を上げることに困難さを抱えていたり、ソーシャルワーカーとしての活動に制約があったり、不安定な雇用により定着しなかったりなどの傾向がみられます。

 犯罪被害者等への支援については、生活支援のための制度・サービスの不備に加え、支援に携わるソーシャルワーク専門職の位置づけが不明瞭で活用される場が極めて限定的であるために、本来必要とされる専門的な支援を十分行うことができていない現状にあります。具体的には、犯罪被害者等の相談支援として、犯罪被害者等が本来活用できる制度やサービスのコーディネート(ケアマネジメント)やアドボケイト等の支援が十分提供できておりません。

 実際、2016年に実施された地方公共団体の窓口に関する調査や、その6年後の2022年に実施された同様の調査においても、窓口の稼働率は2割前後にとどまっているなど、いまだに支援自体が十分でない地域が存在しています(資料1)。

 以上のとおり、犯罪被害者等の置かれた困難等に対し、精神保健福祉士等のソーシャルワーク専門職が有効に活用されないことで、多くの犯罪被害者等の生活再建が進まない状況を遺憾に思っております。本協会としましては、犯罪被害者等の権利回復、精神的回復と生活再建に向けての支援体制の強化や促進のために、精神科医療機関、地方公共団体、その他関連機関が行う支援に精神保健福祉士が果たす役割は大きいと強く認識しているところです。

 この問題意識の下、本協会は2022年度に全国の犯罪被害者支援にかかわる地方公共団体や民間被害者支援センターの専門職に対するアンケート及びヒアリングによる支援実態の調査を実施しました(資料2、資料3)。

 その結果を踏まえ、犯罪被害者等の生活の回復に資する犯罪被害者支援窓口の充実に向けて、下記の通り要望いたしますので、ご高配のほどよろしくお願い申しあげます。
 

 
1.犯罪被害者等の生活の問題は、保健、医療、福祉と密接に絡んでおり、様々な社会資源を熟知しコーディネートしていく必要があるため、犯罪被害者支援においてケアマネジメントが可能となる体制を整備していただきたい。

2.1.を実現するために、地方公共団体の総合的対応窓口について、保健や福祉を担う部署に設置し、正規職員である専門職が対応できる体制とするとともに、対人援助の専門職である精神保健福祉士、社会福祉士及び保健師等の専門職を配置することを推進いただきたい。なお、都道府県においては、市町村の総合的対応窓口のサポートを行うことを前提とし、2名以上の専門職の配置を必須としていただきたい。

3.地方公共団体の総合的対応窓口の担当者が非専門職である場合には、保健、医療、福祉に関する学識経験者や職能団体等の活用により、社会福祉士、精神保健福祉士及び保健師等の専門職のスーパービジョン及びコンサルテーションを受けながら、実際の支援を拡充していくことができるような体制を構築していただきたい。

4.2018年に地方公共団体の総合的対応窓口が全市町村に設置されたにも関わらず、窓口の利用実態が明らかになっていないことから、国の責任において相談内容、相談件数の集計及び統計情報の開示をしていただきたい。

5.相談窓口の利用がまだ十分に進んでいない実態から、引き続き、犯罪被害者等が相談窓口を適時適切に利用できるように、積極的な広報をしていただきたい。


(資料1)地方公共団体総合的対応窓口に関する調査結果(概要)[PDF:78KB]
(資料2)被害者支援に絡む課題アンケート調査結果[PDF:97KB]
(資料3)被害者支援ヒアリング調査結果[PDF:81KB]
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標題 北海道江差町の社会福祉法人あすなろ福祉会における「不妊処置」に関する声明
日付 2023年8月8日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)/公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 会長 野口百香、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 保良昌徳
 
https://jfsw.org/2023/08/08/3187/
 
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標題 出入国管理及び難民認定法の改正に対する声明
日付 2023年8月7日
発信者 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)/公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 会長 野口百香、特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 保良昌徳
 
https://jfsw.org/2023/08/07/3181/
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標題 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に対する意見
日付 2023年7月31日
発翰番号  JAMHSW発第23-191号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
提出先  厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 辺見 聡 様
 
 障害福祉の向上に向けてご尽力いただいておりますことに感謝申しあげます。
 私たち公益社団法人日本精神保健福祉士協会は、すべての人が「自分らしい生活」を実現し、その生活を安心して継続することができるよう、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に向け、下記の通り意見を提出いたします。
 

 

1.精神科病院からの地域移行と地域生活の定着の着実な推進に向けて
 令和2年患者調査では、精神病床における1年以上の長期入院者が未だに約17万人いる状況が分かっています。入院中の地域移行支援と地域移行後の自立生活援助の連続的・一体的な利用が促進され、長期入院等の解消がさらに進むよう、以下の通り提案いたします。

1)自立生活援助のサービス管理責任者配置要件の緩和について
<意見>
 相談支援事業所が自立生活援助の指定を受けやすくなるように、相談支援専門員の資格を以てサービス管理責任者としてみなすことを提案いたします。
<理由>
 地域移行を促進し、障害者がより安心して地域生活を送ることができるようにするために、自立生活援助のさらなる充実が必要と考えますが、現状では相談支援事業所が自立生活援助の指定を受けるためには、サービス管理責任者をさらに配置する必要があり、指定事業所が増加しにくいひとつの理由となっています。サービス管理責任者と同等の研修を受講している相談支援専門員がサービス管理責任者とみなされることによって、相談支援事業所が自立生活援助の指定を受けやすくなり、体制整備のさらなる充実につながると考えます。

2)入所・入院中からの地域移行支援と自立生活援助を一体的に行った場合の実績としての評価について
<意見>
 地域移行支援を提供し、利用者の地域移行後に引き続き自立生活援助の支援を行った実績が1人以上の相談支援事業所に対して、自立生活援助の基本報酬を引き上げることを提案いたします。
<理由>
 入所・入院中から地域移行後まで切れ目のない支援を展開する観点からは、地域移行後の自立生活援助による支援の提供が有用です。利用者に、入所・入院中から退所・退院後まで一貫した支援が提供されることで、本人と相談支援専門員との関係性やアセスメント、支援方針等を地域生活へと連続させることができ、より本人の希望する暮らしの実現を促すことに結びつきます。加えて、1)と重複しますが、自立生活援助の指定を受ける事業所が増え、体制整備のさらなる充実につながると考えます。

3)地域定着支援の家族条件にかかる提示について
<意見>
 地域定着支援の家族条件にかかる提示を自立生活援助と同様にすることを提案いたします。
<理由>
 自立生活援助については家族による支援が見込めない例として、「その他、同居している家族の状況等を踏まえ、利用者への支援を行うことが困難であると認められる場合」が示されていますが、地域定着支援では「家族等が高齢であったり就労している場合」等に限定されています。地域定着支援の必要性のある方でも、提示されている条件以外に、支援の担い手である家族が精神保健の課題や身体疾患等を抱える場合や、本人が家族に意志表出等しにくい関係性が伏在している場合等ありますが、家族条件に該当しないため利用できない例が見られます。

4)自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」における情報提供先を訪問看護ステーションへ拡充し、複数機関への情報提供については加算の増額ができるようにすることを提案いたします。
<理由>
 自立生活援助及び地域定着支援における「日常生活支援情報提供加算」は精神科病院等が対象とされています。訪問看護ステーションは当該加算の対象ではありませんが、精神科訪問看護の対象者で、例えば受診頻度が低い(例、1か月に1回等)が生活上の課題が大きい等の場合は福祉との連携が欠かせません。実際、そうした利用者に対しては訪問看護ステーションと自立生活援助及び地域定着支援の提供者間での情報共有を頻回に行なうことで、利用者の地域生活継続を支えています。このような医療と福祉の連携強化の観点から、訪問看護ステーションについても病院等への情報提供を前提に当該加算の対象として拡充し、2か所目以降の情報提供については加算を上乗せできるようにすることを提案いたします。

5)自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用について
<意見>
 自立生活援助及び地域定着支援におけるICT活用として、電話以外のメールやビデオ通話等を活用した支援を報酬上評価することを提案いたします。
<理由>
 自立生活援助及び地域定着支援では、夜間の緊急時における電話による支援が報酬上評価されていますが、場面緘黙や強い対人緊張、聴こえが悪い等本人の状態により電話ではなくメールやビデオ通話等で緊急時の対応をすることもあります。そのため、電話以外にもメールやビデオ通話等ICTを活用した支援も報酬上評価することを提案いたします。

2.共同生活援助(以下、「グループホーム」とする)における一人暮らし等に向けた支援の充実に向けて
 障害があっても、本人が暮らしたい場所で、暮らしたい人と「ごく当たり前の生活」を営むことが保証されるよう、一人暮らし等を希望する利用者に対する地域との連携を基盤とした支援や、退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームの実現に向け、以下の通り提案いたします。

1)グループホームにおける地域協働加算の創設について
<意見>
 グループホームにおける地域協働加算の創設を提案いたします。
<理由>
 グループホームの利用者が単身生活等へ移行し、希望する生活を実現しようとするとき、サービス管理責任者等は地域の様々な社会資源を活用できるようにマネジメントすることが重要です。そのためにはグループホームの職員、利用者が日頃から地域の一員として自治会活動に参加する等し、地域住民等との交流を通じて障害理解を促し、誰もが当たり前に利用する生活資源を障害のある方も誤解や偏見なく利用できるよう関係性を構築しておくことが必要です。一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームの職員が、利用者と共に地域との協働に取り組んだ場合、報酬上評価されることを提案いたします。

2)居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者の拡大について
<意見>
 居住支援連携体制加算及び地域居住支援体制強化推進加算対象事業者のグループホームへの拡大を提案いたします。
<理由>
 障害者の居住先の確保及び居住支援を充実する観点から居住支援連携体制加算が、また住宅の確保及び居住支援にかかる課題への取り組みを促す観点から地域居住支援体制強化推進加算が、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援事業に位置付けられています。一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームにおいては、居住先の確保及び居住支援の充実と、それらにかかる課題の把握や解消へ向けた協議等が必要となることから、これらの加算をグループホームに拡大することを提案いたします。

3)個別計画訓練支援加算のグループホームへの拡大について
<意見>
 自立訓練(生活訓練)において算定できる個別計画訓練支援加算について、自治体への届出、精神保健福祉士等専門職による個別訓練実施計画の作成、毎月の計画の評価・見直し、関係者との情報共有等を条件として、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームも加算対象サービスとすることを提案いたします。
<理由>
 一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームにおいては、特に地域生活を営む上で必要となる生活能力の獲得(または向上)に焦点を定め、一定期間、重点的に個別の訓練や評価を行う必要があり、その体制が充実することで、本人が希望する暮らしの実現をより促すことができると考えます。

4)地域生活支援拠点等加算について
<意見>
 地域生活支援拠点等加算について、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームへ拡大することを提案いたします。市町村に地域生活支援拠点等として位置付けられた短期入所事業所については、緊急時の受入対応等の当該拠点等の役割の一端を担うことが、短期入所サービス費の算定における利用開始日の加算として評価されていますが、これを、一人暮らし等を希望する利用者に対する支援や退居後の一人暮らし等の定着のための相談等の支援を実施するグループホームのうち、特に地域生活支援拠点等として評価されるべき条件を満たす事業所(例えば前述「2-1)」のような加算等を算定した実績のあるグループホーム等)に拡大することを提案いたします。
<理由>
 グループホームの空室を緊急時の受入対応等に有効活用し、本人の希望する地域生活の実現や、地域支援体制の機能をさらに充実させることができると考えます。

3.就労系障害福祉サービスにおける支援の推進に向けて
 就労を希望する障害者のニーズの多様化や社会経済状況が変化している中で、障害者が働きやすい社会を実現するため、障害者一人一人の 希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援を提供することが課題として示されました。そのため、就労系障害福祉サービスにおいて、よりきめ細かい支援を実施し、本人が望む暮らしの実現に向けて、以下を提案いたします。

1)就労継続支援A型事業におけるスコア表の修正について
<意見>
 就労継続支援A型事業におけるスコア表の以下の部分について、質の向上につながるよう修正することを提案いたします。
 ①「多様な働き方」の「②利用者を職員として登用する制度について」の項の2点目について、「前年度の実績がある」を「これまでに実績があり、雇用が継続している」とすること
 ②「多様な働き方」の「⑧傷病休暇等の取得に関する事項」の項の2点目について、「就業規則等で定めており、前年度の実績がある」を「就業規則等で定めており、これまでに実績がある」とすること
<理由>
 現在、複数の評価軸をもとに、多面的に評価できる仕組みになったことは、サービスの質を高めることに有効であると考えています。その上で、評価の項目、方法については、さらなる精査を行い、修正の必要があると考えます。例えば、①に関しては、雇用は一度だけですので、他の項目と同じく継続して実績を挙げられることが評価されなければインセンティブにはつながりにくいということ、②に関しては傷病等の際に休暇が取得できる保障は重要ですが、傷病等が発生したことを評価する形になっており、支援の質の担保にはつながっていないと考えられます。

2)就労継続支援B型事業における多様な評価軸に基づいたサービスの質の評価について
<意見>
 就労継続支援A型事業と同様にスコア制を導入し、以下のような多様な評価軸に基づいてサービスの質を評価することを提案いたします。
 ①利用のフレキシブルさ(日数や時間について、短時間利用も受け入れているか)
 ②生産活動以外のプログラムがあるか(「就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」として、強みや能力などに着目したものであるか等)
 ③利用者の参画(生産活動のことを利用者も一緒に考えたり意見を言ったりする機会を設けているか)
 ④作業の多様性や作業のための環境整備や配慮があるか
<理由>
 工賃の額によって報酬単価が決まらない区分ができたことは、多様な利用者への支援の枠組みが増えたと言えます。一方で単価が低く、実際の運営がかなり困難となっている事業所もあり、障害者一人一人の希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援の提供に困難を来している現状もあります。
 ただ、一律に単価を上げるだけでは高工賃を目指す取り組みへの評価との整合性がとれませんので、上記例示のように多様な評価軸に基づいてサービスの質を評価することで、就労に向けたきめ細かな支援が促進され、本人が望む暮らしの実現に繋げられると考えます。

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