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<2006/01/30>

鑑定入院処遇ガイドラインの策定等を求める要望書を提出

 昨年7月に施行された心神喪失者等医療観察法においては、すでに同法の対象者の審判及び処遇が実施されており、法施行にあたって入院処遇ガイドラインをはじめとする各種ガイドラインが示され、それらに則った処遇が実施されているところです。

 本協会では、当該法が規定する鑑定入院における対象者の処遇のあり方に関して若干の危惧を抱いていることや、通院処遇の決定により対象者に対する医療観察法に基づく地域内処遇も始まる中、自治体によってはいまだ十分な連携体制を取れずにいるところが見受けられることから、関係省庁の担当課長宛に1月24日付にて下記の要望書を提出しました。

 なお、当該法に関する精神障害者の地域生活支援に向けた都道府県の取り組みについて、都道府県協会の協力を得て状況把握に努めており、その結果を踏まえ、当該課題への継続した要望活動に取り組んでいく予定です。


JAPSW発第05−137号
2006年1月24日

1)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神保健福祉課長 新村和哉 様
2)法務省 保護局 総務課長 山田憲児 様
3)法務省 刑事局 刑事課長 甲斐行夫 様
4)最高裁判所 事務総局 刑事局 第1課長 稗田雅洋 様

社団法人日本精神保健福祉士協会
会 長   橋   一

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する要望について

 平素より障害保健福祉施策の推進にご尽力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 さて、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「医療観察法」という。)が昨年7月に施行され、すでに同法の対象者の審判及び処遇が実施されているところです。また、法施行に当たり、入院処遇ガイドラインをはじめとする各種ガイドラインが示され、それらに則った処遇が実施されていることと存じます。
 しかしながら、当該法が規定する鑑定入院における対象者の処遇のあり方に関して、当協会として若干の危惧を抱いているところです。
 また、すでに通院処遇の決定が下され、当該対象者に対する医療観察法に基づく地域内処遇も始まっておりますが、自治体によってはいまだ十分な連携体制を取れずにいるところも散見されます。
 つきましては、医療観察法の適正な運用のために下記の通り要望いたします。


1.最高裁判所・厚生労働省・法務省の共管による鑑定入院処遇ガイドラインを早急に定めてください。
[理由]
 医療観察法の対象者は原則として地方裁判所の裁判官による鑑定入院命令により、鑑定その他医療的観察を受けることとなります。しかしながら、法施行から現在まで鑑定入院中の具体的な処遇ガイドラインは示されておりません。
 鑑定入院については、入院中の責任の所在が明確になっていないとともに、対象者の処遇に関しても法律上何ら規定がありません。つまり、入院鑑定中の対象者の権利保障および行動制限のあり方等が入院を受ける医療機関の判断に任されている状況にあり、その処遇に恣意性が働きかねないことを強く危惧します。
 このため、鑑定入院中の対象者の処遇については、少なくとも1)精神保健福祉法が規定する入院中の処遇に準拠すること、2)鑑定の客観性と適切な治療を確保するため、鑑定医師と主たる治療担当医師は原則として分けること、3)入院中の行動制限はあくまでも治療上の必要性に照らして行うこと、等を明記したガイドラインを早急に定める必要があると考えます。

2.対象者の地域社会における処遇の円滑な実施のために、以下の事項につき特段の配慮をしてください。
1)法務省と厚生労働省の連携をより一層深め、継続的かつ定期的な協議の場を持ってください。
2)各都道府県における地域ネットワークの強化を図ってください。 
[理由]
 通院決定を受けた対象者は、指定通院医療機関における医療を受け、保護観察所による精神保健観察の下で生活をすることとなります。当該対象者の生活については、精神保健福祉法に規定する精神保健福祉サービスの提供により支援していくことが想定されており、当然ながら地域内の関係機関・施設が地域ネットワークを構築していくことが求められています。
 医療観察法の施行に先立ち、「地域社会における処遇のガイドライン」(法務省保総第595号/障精発第0714003号)が通知されておりますが、自治体によっては当該ガイドラインが十分に活用されず、保護観察所と自治体・精神保健福祉主管課等との協議の場さえ持てずにいる所もあると聞いております。
 当該ガイドラインに謳われているように、まずは法務省と厚生労働省の連携の強化及び地域社会における処遇の実施体制についての情報の共有の促進を通して、地方厚生局、指定医療機関、保護観察所、都道府県・市町村等の関係機関相互の連携協力が円滑に行われるよう、具体的方策を構ずることが肝要と考えます。

以上


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