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みんなで考える 精神障害と権利
(独立行政法人福祉医療機構社会福祉振興助成事業平成22年度助成金)

発行 社団法人日本精神保健福祉士協会/編著 精神保健福祉部 権利擁護委員会


発刊にあたって

 2009年12月8日の閣議決定により「障がい者制度改革推進本部」が設置されました。そのもとで「障がい者制度改革推進会議」が、2010年1月12日の第1回を皮切りにおおむね月2回というハイペースで開催され、精力的に議論や検討が重ねられています。障害のある人が中心となって進められているこの会議の運営は、情報バリアフリーのモデルとしても、内容とともに注目されています。

 会議では、障害者基本法の改正や障害者差別禁止法、障害者虐待防止法の制定など、障害のある人の権利保障に照らしたさまざまな課題が検討事項となっています。改革の実現には、法的根拠や財源確保を必要とすることも多くあります。確かなロードマップの作成やプロセスの進捗管理等、相当なエネルギーが必要でしょう。何よりも求められるのは、パラダイム(考え方)の転換です。

 精神保健福祉士は、精神障害のある人の権利を擁護する専門職を自任しています。私たちは、大局的な政策動向に注目しながら、わが国において精神障害のある人々が、真に豊かな暮らしを獲得し、自己実現が可能となるように、現実の課題や状況を改善することに努めなければなりません。生活支援と権利擁護という視点から、一人でも多くの方が地域で生活できるように、地域移行支援を進めることがなによりも急務です。

 精神障害のある人が地域で安心して生活し続けることを実現するためには、地域社会全体の課題として、ボランティアや一般市民の理解や協力を得ることもまた重要となります。だれもが精神疾患にかかる可能性があるにもかかわらず、精神障害のある人との交流機会が少なく、さらに障害自体が「見えにくい」ことから、精神障害のある人に対する理解が十分に進んでいるとは言いがたい状況にあります。また、長期入院者には症状や障害だけでなく、入院による二次的な障害から社会で生活していく上でさまざまな困難を抱えている人も少なくありません。私たちが目指すのは、特別な支援や枠組みではなく、「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」という言葉に象徴されるように、市民のだれもが暮らしやすく利用しやすい街や資源づくりです。だれも排除されることのない、豊かな関係が満ちあふれる社会を目指すムーブメントを作っていきたいものです。

 本ハンドブックが、「障害者の権利条約」の目的にうたわれた「すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」の実現の一助になることを願っています。

 最後になりましたが、本事業が独立行政法人福祉医療機構の社会福祉振興助成事業により遂行できましたことを、心より感謝申しあげます。

社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 竹中秀彦


一括ダウンロード用データ(112頁/PDF/4.4MB)

みんなで考える 精神障害と権利
目次

表紙 表紙(360KB)
発刊にあたって P.2-3(480KB)
もくじ P.4-5(540KB)
「精神保健福祉士」の仕事と−精神障害のある人をさまざまな分野で支援する P.6-8(660KB)

第1部 精神障害を理解しよう

私たちの国の精神保健福祉はどのような状況なの? P.9-14(780KB)
精神疾患ってなんだろう?「心」と「脳」の病気 P.15-16(705KB)
障害ってなんだろう? P.17-18(600KB)
コラム 「障害」の表記をめぐって P.19(190KB)
精神障害ってなんだろう? P.20-23(875KB)
当事者の立場から 精神障害者は真面目な人たちです P.24-25(705KB)
どうすれば、差別や偏見をなくせるの?人権侵害の歴史を考える P.26-30(950KB)-
コラム 偏見を拡大する事件報道 P.31(175KB)
障害者の人権について−基本的人権と「障害者の権利条約」 P.32-33(705KB)
病気になったらどうすればいいの?−外来、入院治療について P.34-37(705KB)
入院中、よりよい治療を実現するために−お互いに大切にしたいこと P.38-41(785KB)
外出・退院、できないときはどうすればいいの?−精神医療審査会のしくみ P.42-45(900KB)
市民の立場から 精神科病院に外からの風を…
−入院している人の視線、市民の視線から
P.46-49(705KB)
「医療観察法」とは? P.50-51(495KB)
精神科における多職種チーム医療 P.52-53(545KB)
コラム 忘れてはならない差別と偏見の歴史−ハンセン病の人々 P.54(165KB)

第2部 精神障害のある人の暮らしと権利

私たちはどこで暮らすことが幸せなのかなぁ…−退院支援・地域移行の現状と課題 P.55-59(830KB)
助け合いながら生きていこう−ふたたび地域で生活するということ P.60-61(790KB)
専門家の立場から 専門家の立場から退院したくても、住む場所がない。そんなときは?
−地域移行を支えるインフォーマルサービスの試み
P.62-65(760KB)
一般の会社で働くこと−一人ひとりが自分の希望をかなえるために P.66-71(860KB)
「ソーシャルファーム(社会的企業)」とは?
−労働市場で不利な立場の人たちを雇用するための新しいビジネス
P.72-73(680KB)
専門家の立場から 人間としての尊厳をもって地域で暮らすために P.74-75(700KB)
福祉サービスをきっかけにして自分の生き方をみつける P.76-79(735KB)
当事者の立場から 精神障害者と家族の関係 P.80-83(700KB)
「成年後見制度」を知っていますか?−生活のことがうまく判断できない人のために P.84-87(930KB)
学びたいと願う人が学校生活を続けるために−今、学ぶことと、将来を考えながら P.88-93(960KB)
孤立しない勇気をもとう友達って大切 P.94-95(660KB)
障害があると結婚できないの?−恋愛と結婚・育児 P.96-97(620KB)
虐待ってどういう行為?気づいたらどうすればいいの?−虐待防止の取り組みについて P.98-101(715KB)
主役は私たち!ピアの力によるセルフヘルプ活動
−共通の経験と関心をもつ仲間同士の支え合い
P.102-105(825KB)
一人ひとりの違いを尊重できる社会をつくるために−市民によるボランティア活動の輪を広げて P.106-107(645KB)
私たち一人ひとりに何ができるの?−だれもが暮らしやすい町づくりに向けて P.108-109(620KB)
『みんなで考える 精神障害と権利』編集を終えて P.110-111(575KB)
奥付 奥付(115KB)

社団法人日本精神保健福祉士協会精神保健福祉部権利擁護委員会

担当常任理事 宮部真弥子 (医療法人社団和敬会脳と心の総合健康センター/富山県)
委員長 岩崎香 (早稲田大学人間科学学術院/埼玉県)
委員 伊藤亜希子 (東京武蔵野病院/東京都)
上野容子 (東京家政大学/東京都)
金成透 (所沢慈光病院/埼玉県)
木津英昭 (こころの風元気村/千葉県)
澤恭弘 (国立精神・神経医療研究センター病院/東京都)
高村智子 (サンライフたきの里/石川県)
田波裕美 (横浜丘の上病院/神奈川県)
中川さゆり (地域生活支援センタープラザ/東京都)
三木良子 (東洋大学/埼玉県)
三澤孝夫 (国立精神・神経医療研究センター病院/東京都)
壬生明日香 (広島国際大学/広島県)
宮崎まさ江 (長野大学/長野県)

(2011年2月現在)


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