日本精神保健福祉士協会

精神科医療機関に入院している認知症の人への精神保健福祉士の実践に関するアンケート調査及び座談会 報告書(2024年6月)

公益社団法人日本精神保健福祉士協会 発行
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 分野別プロジェクト「認知症」 編集

■報告書

報告書データダウンロード(A4版・41頁/PDF/2.29MB)

はじめに

 令和2(2020)年の厚生労働省の「患者調査」によれば精神病床に入院している認知症の人の数は5.8万人であり、その数は平成14(2002)年の同調査と比較すると1.4万人増加している。また、「厚生労働省 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」で提示された参考資料「医療保護入院患者数の推移(疾患別内訳)」では、症状性を含む器質性精神障害(認知症を含む)で医療保護入院をした人の数は平成13(2001)年の20,536人に対して、令和2(2020)年は44,932人と20年間で約2.2倍となっている。これらの数値から約20年の間に精神病床に入院している他の精神疾患の人は減少している一方で、認知症の人は増加していること、認知症で入院する人の多くの入院形態が医療保護入院であることがわかる。

 介護保険法では平成18(2006)年度の法改正以来、“地域包括ケアシステムの構築の促進”や“地域共生社会の実現”が謳われ、各都道府県や市町村が地域住民の認知症の理解の促進、フォーマルサービスだけではなく、インフォーマルサービスの活用や開発等に取り組んでいる。しかし、先に述べたように認知症の人の精神科医療機関への入院は増加しており、認知症の人やその家族が“地域で安心して自分らしく暮らすことの実現”が進んでいるとは言い難い現状もあると考える。

 分野別プロジェクト「認知症」(以下、本プロジェクト)では、認知症の人が入院する要因や入院が長期化する要因等を精神科医療機関に勤務する精神保健福祉士がどう捉えているか、また、認知症の人にかかわる精神保健福祉士が感じている支援課題や実践におけるジレンマ等を明らかにするために、「精神科医療機関に入院している認知症の人への精神保健福祉士の実践に関する調査」(以下、調査)を実施した。また、認知症の人にかかわる精神保健福祉士が実践の中で感じていること、ジレンマ等を話し合う機会として座談会「認知症の方への支援について語り合おう!」をオンラインで開催した。

 認知症の人は自らの希望や思い等を言葉で発信することが難しいことが多く、本人が望む暮らしの実現に向けて取り組むには、家族の理解や地域資源の活用、院内だけではなく地域の支援者も含めたチームケア等が重要である。また、在宅以外での住まいを考えても、介護施設等居住系サービスの利用料よりも入院費のほうが安価である等の経済的理由が退院支援を阻害する要因になる等、本人の病状だけではない要因で退院支援が進まない現状があること、認知症の人にかかわる精神保健福祉士が抱えるジレンマは、認知症本人の意思を汲み取ることが難しいことや自己決定や権利が軽視されやすいこと等からくるものが多いこと等が今回の調査や座談会を実施してみてわかった。さらに、認知症の人にかかわる精神保健福祉士同士がそのジレンマ等を語り合い、共有する場があることで、改めて精神保健福祉士として認知症の人にかかわっていきたいという思いの原動力につながることも感じることができた。

 今回、調査に協力あるいは座談会に参加してくれた構成員の声の多くから、日々の認知症の人とのかかわりの実践において、様々な悩み等を抱え、同じ思いを持つ精神保健福祉士の仲間がいることを知ることできた。また、精神保健福祉士が精神障がい者へのかかわりにおいて実践の軸に据えてきた自己決定の保障や権利擁護の視点は、認知症の人へのかかわりにおいても何ら変わるものではないことも再認識することができた。私たち精神保健福祉士が出会う認知症の人、一人ひとりの望む暮らしの実現に向けた取り組みの促進につながることを期待し、本プロジェクトの活動を報告する。

 最後になりましたが、アンケート調査にご協力いただきました皆様、座談会に参加していただいた皆様に心からの御礼を申しあげます。

目次

1.はじめに

2.「精神科医療機関に入院している認知症の人への精神保健福祉士の実践に関する調査」の概要

 (1)調査の目的と方法

 (2)アンケート調査結果

 (3)アンケート調査についての考察

3.座談会「認知症の方への支援について語り合おう!」の概要

 (1)座談会の目的と方法

 (2)座談会まとめ

 (3)座談会の考察

4.全体考察

参考資料


■調査概要

 近年増加傾向にある精神科医療機関における認知症の人の入院に関して、入院に至る要因などを把握するとともに、認知症の人にかかわる精神保健福祉士の実践内容や支援において感じている困難さなどを明らかにすることを目的とし、ウェブフォームによるアンケート調査を行った。

回答対象者 精神病床を有する病院に従事する精神保健福祉士(構成員)
回答期間 2023年12月28日〜2024年1月19日
回答方法 ウェブフォームにより回答
回答数 399件


■分野別プロジェクト「認知症」(2022・2023年度)

役割 氏名 所属機関(2024年6月現在) 支部
リーダー 蔭西 操 (医社)長久会 南加賀認知症疾患医療センター 石川県
チーム員 石倉 直美 (医社)和敬会 谷野呉山病院 富山県
チーム員 笠羽 香美 (医)たけとう病院 福井県
チーム員 寺岡 英世 (医)武田会 高知鏡川病院 高知県
チーム員 和田 洋臣 (医)小倉蒲生病院 福岡県
担当理事 的場 律子 (医社)福寿会 福永病院 山口県


△前のページに戻る