報告

「課題別研修/ソーシャルワーク研修2013〜知識や技術を高めよう〜」を受講して

2013年11月16日(土)、17日(日)、「ソーシャルワーク研修2013」を開催しました。会場は、テーマ1と2が日本青年館、テーマ2はTKP信濃町ビジネスセンターとなりました。
本研修テーマのうち、テーマ2は定員を大きく超えるお申し込みがありましたことから、急きょ広い会場に変更して実施いたしました。ここでは、ご寄稿いただいた修了者からの報告記事を掲載します。


・ テーマ1 精神保健福祉士による災害支援活動(1日目:初級編 2日目:アドバンス編)

実践報告をする松田講師 会場の様子 演習の様子 代表者による修了証書授与

■初級編/災害時の支援者になる最初の一歩

深谷市役所(埼玉県)/PSW経験年数5年 長谷川 めぐみ

 受講前、私の災害時のPSWの活動のイメージは、避難所をチームで巡回して、支援が必要な方を他の人・機関につなげる、と漠然としていました。しかし、今回の受講内容では、東日本大震災をとおして、現場のPSWや、他県のPSWの動きや、自分になにができるか、など幅広く知ることができ、考えが深まりました。

 内容の濃い初級編でしたが、特に印象に残ったことをあげさせていただきます。
 まず、現地のPSWは、被災者でもあり、現地支援者でもあるということです。東日本大震災の発災時から、支援者で活動していく過程で、生活者の視点からもお話が伺えました。
 自身の身内の心配や不安を抱えながらも、職場で日々はいってくる情報を内外につなげたり、精神疾患の悪化や未治療者の顕在化で、社会資源が乏しくなっている中で対応策を考えたりと、目まぐるしい光景が思い浮かびました。そして、支援がなされていれば救えた命もあったかもしれないというお話では、PSWの使命の重みのようなものを感じました。
 そのような状況なため、支援者を支援することも重要な支援であると初めて考えさせられました。
 また、もし自分が被災したら「I am safe.」と自らSNSなどで発信できるようになりたいです。自分が無事でなければ、支援できない、そして、自分で安否を発信することで、その情報を得た人がhelpを求めることができる、それが発災時にできる関係づくりを日頃から意識したいと思いました。

 さらに、演習で、自分の地域に大きな地震が発生したらというテーマで話し合ったことがいい経験になりました。発災時、なにを優先して行動するのか、自身は無事か、家族の安否確認、職場への行き方、職場での活動、と具体的に言語化してみて、私は、発災直後のイメージができておらず、他人事になっていると痛感しました。これをきっかけに改めて実生活からできることがあるのではと、防災セット、寝室に置いてある物の高さなどの見直しをしました。自分が無事であることで、支援者になれる、と意識して生活するようになりました。

 全体を通して、発災後は想定外の出来事が多く、現場は混乱することが予想されますが、その想定内の幅をひろげることで、大変な状況になっても対応できることが増えてくるのではと思いました。そのためにも、日頃から「I am safe.」と発信しあえるネットワークづくりが大切だと思いました。この学んだことを糧に、災害時では離れている地で活動するPSWと協働で支援できるPSWになりたいと思いました。会場でお会いできたPSWの先輩の皆様、ご指導ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

会場の様子(氏家講師) 演習の様子1 演習の様子2 代表者による修了証書授与

■アドバンス編/災害をイメージすること(備災)の大切さ

公益財団法人復光会 総武病院(千葉県)/PSW経験年数16年 村山 斉加喜

 アドバンス編は、前日の初級編の講義に参加した者か実際に被災地に支援に行った者を対象に行われる講義であり、私は、被災地支援にも行っていましたが前日の講義にも参加させていただきました。2日間を通じて、被災地の現状や被災地支援、何よりも自分が震災にあったことをイメージすることのできる頭と心を使う研修だったように感じます。2日目の朝には地震の夢で目が覚めてしまったほど、日常的に意識はしていたとしても深く考えていなかったのだと思い知らされたような気がしました。

 強く印象に残ったことは、参加者全員で避難所を立ち上げることを体験させていただいたことです。参加者を被災者グループ、避難所受入れグループ、オブザーバーに分かれそれぞれの立場で何ができ、どのように感じるかを行ってみて意見交換をしました。必要な物、レイアウト、役割を確認し、被災者がどのような状態で到着するかをイメージして、どこに何があった方が良いか、どのようなスペースが必要か、どのような声掛け、誘導が必要かを数分の間に考え意見を出し合いました。被災者グループが到着して怪我をしている人、子供を連れている人、家族を亡くした人、ショックで話ができなくなっている人、年配の人、妄想的な事を話す人、外国人などいろいろな状態の方が入ってきて、10分間の練習のあとに、全体での振り返りをしました。実際に避難所で受け入れることを経験したことはありませんがイメージとして多くの人と意見を出し合い、いろいろなことを想定して行動するという事がよく分かったように思います。その後のセッションでも5人が一組となり、被災地支援に行くことが決まってからの準備、現地での行動、支援者支援、セルフケア等について話し合い、イメージしながら共有することができました。

 自分自身が被災者にならないように、災害が起こっても自分の身を守ること、自分の安否を伝えること、想定をしておくこと、災害時に対応できるように普段から職場、地域、所属団体等で関係性を作っておくことが大切であると学ばせて頂きました。精神保健福祉士による災害支援活動というテーマであったが、「災害に備える」という事を自分自身にも職場にも、家族においても役に立つ内容の研修であったと思います。今回の研修で各地の精神保健福祉士の方と出会い、顔の見える関係ができたことが大きな収穫であったように思います。この研修で得たことを生かしていきたいと思います。


・ テーマ2 精神保健福祉法改正とPSW

開講式の様子 本人中心の支援計画を講義する吉澤講師 演習の様子 代表者による修了証書授与

■研修報告

医療法人如月会 若草病院(宮崎県)/経験年数7年 野間 強

  この度、「ソーシャルワーク研修2013 テーマ2 精神保健福祉法とPSW」に参加させていただきましたので、研修を受けての感想等を報告させていただきます。
 平成26年4月1日より施行される改正精神保健福祉法では、保護者制度の廃止、医療保護入院の見直し、医療審査会の見直し等様々な改正点があり、日本の精神医療保健福祉は今まで以上に精神障害者の生活者としての人権を重んじ、社会的復権をさらに促進させようとしています。これにより問われる精神保健福祉士としての役割や必要な視点を、まさにこの時期に検討しようとの目的で本研修は開催されました。

 私としても病棟PSWとしての勤務経験から、法改正後の医療機関での流れに非常に興味がありましたし、現在所属しているデイケアで必要とされるPSWとしての役割等を確認したく、この研修に参加を志しました。

 研修1日目は「精神保健福祉法改正のポイント」、「法改正を踏まえてのPSWの視点の再確認」、午後からは相談支援専門員を講師に迎えての「本人中心の支援計画」と題した講演が「精神保健福祉士のための相談支援ハンドブック」をもとに行なわれました。法改正にともない、精神保健福祉士の役割は医療機関、地域相談支援事業所とも非常に重要な役割が与えられますし、今後ますます「本人を中心とした」支援について顔の見える連携が必要となることが待ったなしの状態となり、これは来年の4月1日からでは出だしが遅く、今のうちから関係機関同士が連絡を取り合わなければ間に合わない状況であると痛感しました。国は10年も前から精神障害者の社会的入院と呼ばれる状況の解消をかかげ、数々の有識者を交えた検討会での協議の結果、精神保健福祉施策の改革ビジョンを策定し、さらなる改革に向けた検討を重ねてきました。しかしこれらの議論が重ねてこられたにもかかわらず、「約7万人の長期入院者の退院」「7万床のベッド削減」などの具体的な数字はいつのまにか目標から削除され、10年後の現在では国の掲げた精神保健福祉行政が結果的に成功とは言えにない結果に終わり、それを受けての今回の改正となりました。長期入院を解消し、退院後の再入院を防ぎ、地域での生活を維持していくための支援の仕方を、国は障害者総合支援法、精神保健福祉法の改正でより確かなものにしていこうとしていることが、講義を受けて大変よく理解できました。PSWが精神保健福祉士として国家資格化された経緯には、国策を補うためにできたことも踏まえると、おのずと私たち専門職が必要とされる役割が見えてくるのですが、これをどうのように現場にいかせるかが課題であると感じました。岩上先生や、門屋先生という、まさに国の障害者福祉の指針を決めるための重要な検討会の委員として参加されている講師の方々からの貴重なお話は、私にとって非常に説得力のあるものでしたし、モチベーションを高めるものでありました。

 1日目、2日目とも演習が最後に行われました。両日とも「われわれPSWが今後持たなければならない課題」について、グループで検討し導き出すようにとのことでした。私たちは今だからこそ「課題」を自分たちに突きつけ、専門性と国策、また本人中心の支援とは何かを医療機関、地域相談支援事業所の双方が確かめ合いながら歩んでいかなければならないと感じました。今後さらに在宅医療のみでなく在宅福祉との連動や精神障害者の社会的復権のさらなる確立のため、当事者が自分らしい暮らしを実現して生きがいを持った生活を取り戻すことができるように支援していく必要がありますし、そうするためにはその人にあったケアプランというものが当然必要となるでしょう。以前は「絵に描いた餅」であったこれらの構想が、もはや理想ではなく国がその方向性を法的に位置づけたものが障害者総合支援法であり、今回の精神保健福祉法の改正であると思われます。私の課題は、これらの流れを現場レベルで把握するだけでなく同職種、異職種に認知していただき、さらには地域の医療機関や行政、と共有し切磋琢磨できることかなと思いました。本研修に参加させていただきありがとうございました。

■二日間の研修を終えて

北区障害者地域活動支援室 支援センターきらきら(東京都)/経験年数15年 横手 美幸

 研修に申し込む前は、二日間というものを長く感じていましたが、実際に参加してみると両日ともに講義とグループワークがあり、盛りだくさんな内容で時間が過ぎるのがあっという間で短く感じました。

 私が参加させていただいたグループ(病院・地域混在)では、「障害者だと“それは福祉だね”、患者だと“それは病院だね”、とわかれがち」「地域住民・市民という視点を持てば、みんなそれぞれが本人を中心として考えやすい」等いろいろな意見が出ましたが、最終的には「精神保健福祉士の質の向上」といった話につながりました。
 同メンバーの二回目のグループワークでは、「相談支援専門員、退院後生活環境相談員は精神保健福祉士がやるべきだと言えるような精神保健福祉士になりたい」「知らないじゃ済まされなくなっている」「お互いの理解がないと連携にならない」等といった話をしました。

 この研修を通して、職場や地域により事情や状況に違いがあったり、業務内容等異なることがあっても精神保健福祉士としては何も変わらないのだということを改めて感じました。
 「連携」の難しさはどうして生じるのか?私たち自身のコミュニケーション力(技術)は?自分の個人的な感情(聞きづらい、なんて聞いたらいいのか・連絡をしたらいいのかわからない等々)や自分の置かれた場所のせいにしていないか?そういったことが支援を必要としている人々に不利益をもたらすことになりかねませんし、お互いを知ることのできる機会を自ら潰してしまうかもしれません。

 自分が精神保健福祉士となり職業としている理由や自分に足りないものについて見つめなおし、自分の置かれた場所で力を発揮することができるよう努めなくてはならないと思いました。
 総括の中で、「知識や情報を得ることだけではなく、それをいかに活用するかを考えていくことが必要」「制度は使うものであって使われるものではない」「人と人の環境について考えることの力があるのがソーシャルワーカー」「不満に目を向けずにやれることをやっていく」といったお話が講師の方々からありました。他にも制度のことや実践報告等貴重なお話を聴くことができました。研修で学んだことを今後の業務のなかで実践に結びつけ仲間を増やしていけたらと思います。
 このような学びの機会を得られたことに感謝いたします。ありがとうございました。


・ テーマ3 支援の姿勢と面接技法を学ぼう〜明日から生かせるかかわりを考える〜

鈴木講師 会場の様子1 会場の様子2 代表者への修了証書授与

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